31 パーティ会場でのひと時
しばらくすると、アリシア達も会場に姿を現した。
「あ、兄さん! ここにいたのね」
「アイネ! それに皆さん」
「なかなか似合っているじゃないアモン」
アイネの傍にいたアリシアは俺の姿を見て呟く。
「ありがとうございます。アリシアのドレスもとてもお似合いですよ」
「あら、ありがとう」
「ふぉっふぉっふぉ、お主のその姿も新鮮で良いの」
ドルフはアリシアのドレス姿を見ながら言う。
「た、たまにはいいじゃないのドルフ!」
アリシアは照れながらドルフに言い寄る。
「はは、こういった場ではしかたないですよ。……でも、ドルフはスーツではないようですが?」
「うぅむ。年寄りにスーツは無理じゃわい。ライフォードにも普段通りの服で許可は貰っておる」
「そうでしたか」
視線をボルティガ達に向けると、ボルティガは俺と同様にスーツ姿でキャスティやエレナと話しており、クロエもドレス姿ではエアリアと話し込んでいた。
すると、会場にライフォードが入ってくる。
「皆さま、今日は我が娘の為によく集まってくださった! 存分に楽しんでいってほしい!」
ライフォードの声で会場に集まった気品のある人たちの視線がライフォードに集まる。
「それでは今日の主役に登場して頂こう! マリッサ、出てきてくれるかな?」
ライフォードが会場の入り口に手をかざすと、入り口からマイトに背中を押されながらもマリッサが入場する。
観念したのかマリッサは笑顔になって会場の中央にいるライフォードの傍に駆け寄っていく。
「皆! 今日は私の誕生日パーティの為に集まって感謝するわ! 料理もあるから今日は存分に楽しんでいくといいわ!」
すると所々からマリッサ様! と声が上がり、会場は祝福の声援で満たされる。
俺はマリッサの評判は好評の様で安心しながらも式の進行を見守った。
「今日でマリッサは16歳の誕生日を迎える! 交流を深める為にも、お集まり頂いた来賓の方々のご子息様とマリッサとのダンス交流を行わせて頂こう!」
ライフォードが号令をかけると、マリッサが嫌がっていたダンスをする流れとなった。
会場に集まった来賓のご子息達が代わる代わるマリッサとダンスを行っていく。
「……しっかり踊れてるね」
「当たり前じゃない、私が稽古してるんだからね。マリッサ姫はダンスに苦手意識はあるようだったけど、しっかり稽古は受けていたから当然の結果よ」
「そうみたいだね」
胸を張って答えるアリシアを横目に、俺はマリッサに視線を戻す。
マリッサは真剣な表情を終始してはいたが……ダンスに関しては見てわかるようなミスをせずに終える事が出来ていた。
「……ダンスの方は問題なさそうですね」
マイトが俺の方に歩み寄って話しかけてくる。
「だね。……それで、この後ってまだ式は続くの?」
「えぇ、ダンスが終わった後は会食が始まりますので、マリッサ様は挨拶周りを来る方たちの相手に忙しくなるでしょう」
「そうなんだ。……ごめんマイト、ちょっと外の空気を吸いに行ってもいいかな?」
「……? はい。問題ありません。その間はマリッサ様は私がお守りしておりますね」
「ありがとう……それじゃちょっと失礼するよ」
俺はマイトに断りを入れて会場からベランダに出る。
「……ふぅ」
広い会場と言っても一室に人が大勢いる為、マナの供給不足で俺は苦しさを感じていた。
だが、ベランダに出る事で新鮮なマナを取り入れる事が出来て安心する。
「あ、兄さん!」
アイネの声が聞こえてベランダの端に視線を向けると先にアイネがベランダで休んでいた。
「アイネもここにいたんだね」
「うん……ちょっとね」
どうやらアイネも息苦しさを感じていたようだ。
すると、ベランダの入り口の方からエアリアが心配そうにのぞき込んでくる。
「アモンさん? 大丈夫ですか?」
「あ、ごめんエアリア。ちょっと気分が悪くなってね。ここで休んでいたんだ」
「……そうでしたか。急に出て行ったので心配しました」
「エアリアさんごめんね、兄さんをちょっと借りていたわ」
「……あ、いえ! アイネさんもいらっしゃったんですね! ……それじゃ私もちょっとここで休憩をしたいと思います!」
それから俺達は一か所に集まり、ベランダの手すりに手を置いて城下町を眺める。
「良い眺めですねアモンさん」
「……うん。心休まるよ」
「そうね……最初にこの街に来た時は、こうして生活できるなんて思いもしなかったもの」
アイネは城下町を眺めながら感慨深く呟いた。
「……私もなんだか不思議な気分です。ポイネ村でアモンさんと出会っていろいろありましたが……まさかお城で生活できるようになるなんて」
「まぁ、魔族が攻めてくるまで一時的に住ませてもらってるだけなんだけどね」
「あはは、そうでした……でもお2人とも再会できて本当によかったですよね!」
「それは……うん、本当によかったよ。それに、アイネもアリシアとすごく仲良なっていて微笑ましいくらいだ」
俺はアイネの方を見ながら呟く。
「……アリシアには本当に感謝してるわ。アリシアがいなかったら今頃……私は殺されていたと思うし、とても親身になってくれているわ」
「私もここ最近はアイネさんやアリシアさんといろいろご一緒する機会がありますが、アリシアさんはとてもいい方だと感じましたね」
「アイネ、いずれはアリシアには恩返しをしないとね」
「本当よね、兄さん」
エアリアはベランダの手すりから手を放して俺達を見る。
「……あともちろん、アイネさんもアモンさんと同じく優しい方だと感じました! ……やっぱり兄妹なんだな、って思いましたね!」
「……兄さんの一緒に旅をしてきた仲間だもの。当然よ!」
アイネは屈託のない笑顔で答える。
「……前にも話したけど、俺達の両親は人間が大好きでさ。優しい子でいれば人間に会えるって教えて貰って育ってきたんだ」
「懐かしいわね、兄さん」
「……お2人はその教えを大切に守っていらっしゃるんですね」
「うん。今でも両親の言葉は覚えているよ。……その教えを守り続けていたからアイネはアリシア達に出会えて、俺はこうしてエアリア達と出会えたんだ」
俺はそう言うとエアリアに向かって笑顔を向ける。
「あはは、本当ですね!」
ベランダが優しい空気に包まれていると――
――バタンッ!
突如ベランダの入り口が勢いよく開かれる。
「大変よアモン! マリッサが――」
エレナが慌てた表情をしながら俺達に声をかけてきた。
「……っ! マリッサ!」
俺は詳細を聞く前にすぐさま会場内に駆け出した。
会場内に戻ると、マリッサはメイド達に羽交い絞めにされながらも、尻もちをつく男に激高していた。
「――今すぐマイトに謝りなさい!!」
「面白かった!」
「続きが気になる、読みたい!」
「アモン達は今後どうなるのっ……!」
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