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23 アイネとの時間

エクリエル王国に戻ってきた後、アリシアは俺達の方を振り向く。


「特訓お疲れ様! どう? 少しは力が付いたかしら?」

「それはもう……アリシアのお陰でドルフからいろいろ教えて貰う事ができたよ。ありがとう!」

「どういたしまして。まぁ、詳細はまた後で聞くとして……」


アリシアはアイネの方に視線を向けて続ける。


「アイネ。バタバタしちゃったけど……貴方もお兄さんとじっくり話したいんじゃない?」

「それは……もう、とても!」


アリシアの言う通りお互いの状況を共有した後、休む間もなくドルフ達との特訓が始まったのだ。

なので、まだアイネとまともに話す事はできていなかった。


「俺もアイネと話す時間が欲しいです!」

「あはは……それじゃ私たちは少しの間席を外した方がいいでしょうか……?」


エアリアは苦笑しながらアイネに尋ねる。


「あ、いえ! 兄さんが今までどのような方たちと旅をしてきたのかも聞きたいです! ご一緒していただけますか?」

「……そうだね。皆がいなかったらここまで来ることはできなかったからね」


俺も少し考えてからエアリア達に伝える。


「いいんですか! それではご一緒させて頂きます!」

「……話はまとまったようね。アモン、今後の流れについて国王のライフォードを交えて話しておきたいから、済んだらまたお城まで来てくれるかしら?」

「わかりましたアリシア。……でも、良いんですか? 確か、アリシアはアイネの監視役だと聞いていましたが……?」

「いいわよ。あなた達の話を聞いて信頼できる相手だと確信できたからね。……安心しなさい、何かあっても私が全て責任を取るから」


アリシアはニッと歯を出して笑う。


「は、はい! それでは少しアイネ達と話をした後に向かいたいと思います」

「よろしくお願いねアモン。それじゃまた後で会いましょう」


アリシアはそう言うとお城の方へ向かって歩きだす。


「ふむ……エアリアの成長具合も見ておきたかったが、それはまた今度の楽しみに残しておくかの」

「う……わ、分かってます! その時はお願いね、おじいちゃん!」

「うむ」


エアリアが引きつったような笑顔を浮かべながら言うと、ドルフは頷きながらアリシアの方へ歩いていく。


「キャスティ、お前は成長速度が速い。ゆえにまだまだ強くなれるであろう……そのためにも日々精進せよ! ……だが、今はゆっくり休むと良い……またあとで会おう」

「わかったにゃ! 今度は倒してみせるにゃ!」


ボルティガはキャスティにそう言うとアリシアの方へと向かっていく。


「ふふ、それでは皆さんまた後でお会い致しましょう」


最後にニッコリと微笑むクロエさんもアリシアの方へ歩いていった。


「皆さん、ありがとうございました! また後でお会いしましょう」


俺も去っていく皆に届く声でお礼を伝えると、アリシアは片手をあげて答えてくれた。




去っていく勇者一行を見守った後、エアリアが話かけてくる。


「それではアモンさん。立ち話もあれですし、どこか座れる場所を探しましょう」

「そうだね。ひとまず落ち着ける場所に移動しようか」

「はい、兄さん!」

「そうしましょ、特訓で疲れちゃったわ」

「はにゃ~……気が抜けてきたにゃ~……」


キャスティはボルティガとの特訓でずっと気を張りっぱなしだったのか、気が抜けたようにだらしない表情をしていた。


「我もアリシア達と遊んで少し疲れたのじゃ」


確かディアマトも途中でドラゴン化してアリシアとアイネと戦っていた事を思い出す。

俺達はそれから少し歩いた先にある緑が多い広場に置かれていた机に着いた。


「それじゃ、改めて……アイネ。元気そうで安心したよ」


隣に座っていたアイネに俺は告げると、アイネは勢いよく抱き着いてくる。


「兄さん!!」 

「うわっと」

「私も……また会えるなんて思わなかったわ!」


俺はアイネの肩に手を置き、落ち着かせた後に続ける。


「俺もまさか人間界に飛ばされるなんて思いもしなかったから、今こうしてアイネの元に来ることができたのも奇跡に近いよ。……ここまで来れたのも全部エアリア達のお陰なんだ」

「皆さん! 兄さんに協力してくださってありがとうございます」


アイネは俺の言葉を聞くと、エアリア達に深々頭を下げる。


「あ、いえ! 助けて貰ったのは私達なんです! 私たちは、ただ……その恩返しをしているだけです」

「……そうなの?」

「えぇ……あたしも故郷をアモン達に救って貰ったわ。アモンとエアリアがいなかったら今頃……故郷は魔物に滅ぼされていたでしょうね」

「私もにゃ! 奴隷だった私をアモンさんが助けてくれて、新しい居場所をくれたにゃ!」

「我も主様に呪術から解き放ってくれたのじゃ……じゃから今もこうして付き従っているのじゃ」


アイネはエアリア達に圧倒されながら話続ける。


「そう……なのね。ふふ……兄さんなら当然か。困っている人を見過ごせない性格だもんね」


アイネは俺の方を見ながらニコっと微笑む。


「……でも、気になっていたんだけど……何で兄さんはアモンって呼ばれているの?」

「え? あぁ……もう呼ばれ慣れて気がづかなかったよ。人間界に来た時に魔族である事がバレないように偽名で行動していたんだ」

「え!? ……偽名だったんですか?」


エアリア達が多少なりと驚いていた。


「あ……うん。ごめんね。……でも、もうアモンで呼ばれ慣れているし、アモンのままでいいよ」

「わ、わかりましたアモンさん」

「……私も昔から兄さんは兄さんだから変わりはないけど……そうだったのね」


アイネは妙に納得したようだ。


「うん。……それでアイネ、今はこうして無事に過ごせていると思うけど、王様から処刑されそうになったって聞いたけど……大丈夫だったの?」

「あぁ……最初はね。魔族って事で皆から白い目で見られていたの。この角が一番魔族って事が分かる目印だったから」


アイネは自身の頭の角を触りながら話す。

角ならディアマトにもあるが、希少種なドラゴンは4体しかいないから見る人がそもそも少ないのだろう。


「お城の地下にある牢獄に捕まっていたんだけど、助けて貰ったアリシアが何度も話をしにきてくれたの。兄さんの事やこの世界の事。……そしてアリシアのお兄さんの事とかね」

「……俺もエアリアからいろいろ話は聞かせてもらったからね。情報が有ると無いとでは全然違うよ」

「本当にそう思うわ。……それから処刑という話が出始めた時もアリシアは私を庇ってくれて、今こうして兄さん達と話せる状態にしてくれたのよ」

「……アリシアには感謝しかないな。後でまたお礼を言っておこう」


俺がそう呟くと、エアリアがアイネに質問をする。


「……ところでアイネさん。アモンさんって子供の頃はどういった方だったんですか?」

「そうね……子供の頃からずっと一緒に兄さんといたから話せる事は沢山あるわ! う~ん、何から話そうかしら――」


それからエアリア達とアイネは俺の過去話に花が咲いてしまった。

……俺は終始恥ずかしい気持ちを我慢しながら聞いているのだった。

「面白かった!」


「続きが気になる、読みたい!」


「アモン達は今後どうなるのっ……!」


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