22 アモン達の猛特訓
結界の外へと出た俺とエレナに続いてドルフも結界の外へと移動する。
「さてと、何から始めようかの」
「よろしく頼むわね」
俺は2人から少し距離をあけて見守ることにした。
「まず、闇魔法の特性について説明するかの。下位の闇魔法は攻撃魔法は少なく、相手の戦闘能力を下げる効果のある魔法が多いのじゃ」
「なるほど、つまり相手を弱めて倒すって感じね」
説明しているそばからドルフ達の元へ空から黒い羽根をつけた魔物が近づいてきた。
「そうじゃの……実際に見て貰った方が早いじゃろう」
ドルフはそう言うと、魔物に手をかざし呪文を唱える。
――ドスンッ!
すると、空に浮かんでいた魔物は瞬く間に地面に落ちてきて、落ちた衝撃でもがき苦しんでいた。
「な、何をしたのよ」
「今あやつにしたのは動きを遅くする魔法じゃ、他にも相手の力を下げる魔法や守りを弱める魔法もあるかの」
「へぇ、いろいろ便利そうな魔法があるのね」
「そうじゃの、中位や上位の闇魔法になるにつれて殺傷能力のある魔法になっていくのじゃ」
「たしか……ディアマトにかけられていた魔法は上位の闇魔法だったはずよ。体中に黒い靄をまとっていて体内に核を埋め込まれ暴走する魔法だったはずだけど」
「……なんと、あのちっこいお嬢ちゃんはそんな魔法にかかっていたのかの?」
俺は驚くドルフに続けて話す。
「はい。なんとか対処する事はできましたが、あれはどういった魔法なんですか?」
「恐ろしい魔法じゃよ、上位の闇魔法で相手を暴走させ、その間に殺めた者の魂を刈り取る。そして術にかかった者を倒したとしても、集まった魂を周囲にまき散らし吸い込んだ者を即死させる禁忌の術じゃ」
「……あの黒い塊って吸い込んだら死んでいたんですね」
想像以上に危ない魔法だったようだ。
「それで、その黒い塊の被害をお主達はどうやって回避できたのじゃ?」
「実は、俺の力で消滅させたんです」
「……ほほぅ、やはりお主の力で魔法を無力化出来たということかの」
「あの時は夢中になっていたのでよく考えていなかったです」
「ふむ……まぁ、詳しくはお嬢ちゃんの特訓の後じゃ」
「そうよアモン、まずは闇魔法を教えてもらおうじゃない」
ドルフはコホンと咳払いをして話始める。
「そうじゃの……話は戻るがお嬢ちゃんのように耐性のある者しか闇魔法は扱えない。耐性のない者が無暗に闇魔法を使うと、自分にも闇魔法の影響が及んでしまうのじゃ」
「わかったわよ。それじゃ早速下位の闇魔法から教えてもらえるかしら」
「急かすでない。……それでは始めるかの」
それからドルフとエレナの闇魔法の猛特訓が始まった。
出てくる魔物に対してエレナはドルフに教わりながら、あらゆる闇魔法を魔物に試していく。
俺はエレナ達から視線をそらし、周りの人たちの様子を確認する。
「いくにゃ!」
――ガキィンッ!!
キャスティの剣を軽々と受け止めるボルティガ。
「ふふ、まだ軽いな。もっと腰を入れて振り込まなければやられるぞ。――フンッ!」
「にゃっ!」
ボルティガは力を入れて受け止めた剣を力強くキャスティごと薙ぎ払った。
「……すごい力にゃっ! でも、私には魔法も扱えるのにゃ!」
そう言いながら、キャスティは自身に風の層をまとわせて水魔法を放ちながら駆けだす。
「なるほど……無詠唱か」
水魔法を剣で断ちながらボルティガは呟く。
――ガキィンッ!!
ボルティガは再度キャスティの剣を受け止める。
「面白い、風の層で移動速度を上げ、攻撃魔法で相手の注意を逸らす……キャスティも魔法を扱えるのか」
「そうにゃ! ボルティガさんも魔法を使って戦闘をしてるのかにゃ?」
「あぁ、だが小生は少し特殊だがな」
ボルティガはそう言うと、呪文を唱えて自身に電気ショックをかける。
――バチチッ!
鍔迫り合いをしながらボルティガの髪の毛が逆立ち始める。
「な、何してるにゃ!?」
「小生はユニークスキルで自分自身に電気を帯電させることができる。これにより、小生の身体能力を格段に向上することができるのだ。――フンッ!」
すると先ほどとは違い、遠くに吹き飛ばされるキャスティ。
「わわっと! す、すごい……さっきと全然力が違うにゃ! 私もしてみるにゃ!」
キャスティも見様見真似で自身に電気ショックをかけてみる。
「あうぅ…っ! ビリっとするだけにゃ!」
「ははは、そうだろう。普通はそうなる」
ボルティガと剣での稽古をしているキャスティはとても楽しそうだった。
エアリアの方もクロエさんと白魔法の特訓をしていたり、アリシアはアイネとドラゴン化したディアマトと手合わせを遠くの方でしていた。
「みんなも頑張ってるんだな……俺も頑張ろう」
そう呟きながら、エレナの方へと視線を戻して特訓を見守った。
しばらくすると、ドルフはエレナに一通りの闇魔法を伝授し終わる。
「これくらいかの」
「ありがとね。これで次からの戦闘でも使えそうよ」
ドルフとエレナの周りには多くの魔物が倒れている。
それだけエレナ達の特訓が過激だったのだ。
「さて、次はアモンじゃの」
「はい、よろしくお願いします!」
俺はエレナと変わる様にドルフの近くまで移動する。
「先ほども申したが、マナは空気が元となってできておる。アモンの力を使う事で、魔法を無力化したり威力を上げる事ができるのじゃ」
「以前にエアリアの魔法に空気をまとわせると威力を上がった事がありました。それもマナを増やしていたからだったのでしょうか?」
「そうじゃろうな。アモンはあらゆる魔法の威力を上げる事は出来るじゃろう、それに加え威力を下げたり、消滅させる事もできるはずじゃ」
「黒い塊を消滅させた時は、その対象の四方に空気の壁を作り縮小させていったんです」
「ほぅほぅ、対象の魔法を密閉して縮小させた……か。それじゃ試してみるかの」
「お願いします」
ドルフは俺から少し距離をとり、呪文を唱える。
すると、巨大な水玉を掌に作り上がる。
「これを今からアモンに放つ、消滅させてみよ」
そう言いながらドルフは俺に向かって巨大な水玉を放ってきた。
「分かりました!」
俺は巨大水玉を空気の壁で包み込み、すぐさま縮小させてみた。
すると、見事なまでに巨大な水玉を消滅させることが出来た。
「……できた」
「これはたまげたな、本当に消滅させるとはの」
「俺も驚きです」
「それじゃ他にもいろんな魔法を試していくかの」
それからドルフと俺はマナを分解する仕組みやどうすればマナを効率よく作ったり、消滅させたりできるのかを検証していった。
一通りの検証が終わり、俺は空気中のマナに干渉することが出来るようになった。
「ありがとうございます!」
「うむ、ワシの周りからマナを消滅されると魔法が扱えなくなるとはの……魔導士にとって恐ろしい能力を持っているようじゃな」
俺の能力を使う事によって、マナを消滅・増加できる他に魔法というもの自体を使えなくすることが出来る事もわかった。
「あの、魔族なのですが……人間とは違いマナを体内に取り込んで生きているんです」
「ふむ、つまり魔族の周辺からマナを消滅させれば魔族は生きていけない、という事かの?」
「その通りです。俺の力があれば魔族に対して有利な状態に運ぶことが出来ると思います」
「ふぉっふぉっ。魔族であるお主からそんな言葉が出てくるなんての。わかったわい、一先ず特訓は以上じゃ。街に戻るとするかの」
ドルフはそういうと、周りの人たちも一通りの特訓をし終わっていた。
「ふぅ……そうねドルフ。私も疲れちゃったし、アモン達も兄妹で話したい事もあるでしょ。一先ず街に戻って休憩しましょう」
「……兄さん、お疲れ様です」
俺達は特訓を終えたアリシアとアイネと合流し、結界の中へと入っていく。
キャスティ達やエアリア達も結界内に戻ってきた。
「アモンさん! すっごく楽しかったにゃ! それに力の使い方も教えてもらったし、力負けすることはもうないにゃ!」
「うん。見てたよ。楽しそうだったねキャスティ」
「私もクロエさんから白魔法の極意をいろいろ教えてもらいました! これで上位魔法の光魔法も使えるようになりました!」
「え、本当! すごいじゃないかエアリア」
キャスティもエアリアも特訓により、格段に強くなったようだ。
「我もアリシア達をしごいておったのじゃ、勇者だけあってなかなかの手練れじゃったの。主様の妹君のあの怪力には驚かされたのじゃ」
「ディアマトもお疲れ様! 見てたけど、何か凄い戦いをしていたね! アイネのスキルは強力だからね、ディアマトも驚いたでしょ?」
「あぁ、我を持ち上げて投げ飛ばしたからの。さすが主様の妹君じゃ!」
ディアマトは非常に楽しそうに話していた。
「あたしもドルフから闇魔法を教えて貰ったわ。これからは戦いのアシストが出来るから楽しみにしててね」
「俺も空気操作で相手の魔法を無力化することを学べたよ。それに魔族に対しての対策も出来たかな」
「アモンさんにエレナさんもお疲れ様です! ひとまず街に帰って休みましょう!」
俺はエアリア達と特訓の成果報告を済ませると、ワープホールからエクリエル王国へと戻るのだった。
「面白かった!」
「続きが気になる、読みたい!」
「アモン達は今後どうなるのっ……!」
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