19 王国からの猛攻撃
ディアマトは向かってくる大きな光線を反射で避ける。
「うわぁ!」
俺達はその反動で大きくバランスを崩す。
「何だ、急に攻撃してきたぞ!」
「皆さん! 大丈夫ですか!?」
「痛つつ……えぇ、あたしは大丈夫よ。キャスティ、大丈夫?」
「うぅ……急に何にゃ」
幸いな事に俺が展開していた空気の壁で皆が落ちる事は無かった。
「主様! 無事かの!?」
「あぁ、でも……一体なぜ攻撃を」
俺は光線の向かってきた王国に視線を向けた。
すると、王国は更なる攻撃魔法を繰り出そうとしている。
「……無理もないじゃろう、急にドラゴンが一直線で向かってきたら誰でも撃退しようとするものじゃ」
ディアマトに言われて俺達がしようとしていた事の致命的な欠点に気付く。
「……確かに……でも、誤解だって言えば」
「それにはエクリエル王国の猛攻撃を突破する必要があるが……主様にできるのかの?」
「大丈夫だディアマト、任せてくれ!」
「わかったのじゃ主様!」
ディアマトとやり取りをしている間にもまたエクリエル王国から巨大火炎魔法が放たれてきた。
「アブソリュート・シールド! ……ディアマトは俺を信じて王国へそのまま突き進んでくれ!」
俺はエアリア達の周囲に展開した空気の壁は維持したままで、前方から来る魔法を防ぐ為に大きな空気の壁を展開する。
――シュワァァァァァ!
次の瞬間、巨大火炎魔法は俺の展開した空気の壁に衝突し、四方に分散する。
「さすが主様! 全然熱くもないのじゃ!」
「よし、行けそうだね!」
「問題なさそうじゃから、ちょっと速度を上げるのじゃ! 主様達は振り落とされないようにしっかりとしがみついてくれるかの!」
――ギュンッ!
ディアマトは核心を持ったのか、勢いを増してエクリエル王国へと向かっていった。
それから何度もエクリエル王国からの攻撃を防いだ後、王国上空へ到着する。
「よし、そのまま城内に降りる事はできるか?」
「あそこが良さそうじゃのぅ」
ディアマトは少し広い中庭のような箇所に狙いを定め、徐々に地面へと降りていく。
着地すると、予想通り重厚そうな鎧や魔導士などが戦闘態勢で俺達は出迎えられる。
「案ずるな、貴様らに危害を加えるつもりはない。我が主様が尋ねたい事があるだけなのじゃ」
ディアマトは気をきかせて中庭にいる群衆に言葉を発する。
すると、群衆の中に一本の道が出来るように両わきに寄り始め、奥から王様らしき人が開けた道を歩いてきた。
「さ、主様。そこから話すのも大変じゃろう、降りると良い」
ディアマトは俺達に手を近づけてきたので、俺達は手に乗り込み地面へと降り立った。
そして、ディアマトは光り輝き少女の姿へと変わる。
「お主たちは一体……」
ドラゴンが少女に変わった事に王様らしき人も含め、群衆達が驚く。
「手荒な登場ですみません。少しお聞きしたい事がありましてお邪魔しました」
「……いや、私たちこそ一方的に攻撃をした無礼を許してほしい」
「いえ、誤解をさせてしまったこちらにも責任はあります。気にしていませんのでご安心ください」
「おぉ……なんと寛容な方だ。聞きたい事があると申しておったな、私についてきてくれないだろうか」
「分かりました」
俺達は王様らしき人の後を付いていった。
少し距離を開けて、黒服に包まれた執事のような男性も俺達の後ろを付いてくる。
「申し遅れた、私はこのエクリエル王国の国王であるライフォード・エクリエルである」
「俺はアモンです」
「アモン殿か、先ほどは本当にすまなかった」
「いいですよ。本当に気にしていないので」
俺は後ろから付いて来る黒服の男性のプレッシャーによって会話に集中できずにいた。
恐らく、俺達が王様に危害を与えないか警戒しているんだろう。
「……えっと、私はエアリア・アランテルと申します」
「アランテル……? 君はもしやドルフのお孫さんかな?」
「あ、はい! ドルフはおじいちゃんの名前です」
「おぉ……そうじゃったか。君があのドルフのお孫さんか。これほどまでに美しく育っておったとは」
ライフォードさんはエアリアのおじいちゃんと知り合いのようで、エアリアをマジマジと見ていた。
「……あはは、そんなに見られると恥ずかしいです」
「あ、これはすまなかった。いつもドルフから話を聞いておってな。それでそこのエルフのお嬢さんは何ていう名なんじゃ?」
「え? あぁ、あたしはエレナ・ノーランよ。縁あってアモン達と一緒に旅をしているわ」
「私もにゃ! アモンさんに助けてもらったんだ! それで一緒に旅をしているの!」
「ほっほっほ、元気でいいのぉ。エルフ族に亜人族……それにドラゴンのお嬢さんか」
「あぁ、我も主様に救われての。付き従っているのじゃ」
「そうであったか……いや、個性あふれる仲間をお連れのようじゃな、アモン殿」
「言われてみれば……そうですね」
俺は終始後ろの黒服を着た男性が気になっていたので空返事を返す。
程なくして案内されたのは大広間で長方形の長い机がある部屋だった。
「さ、アモン殿。座ってくれ」
「ありがとうございます」
俺達は言われた通り席に座るとライフォードも席に着く。
ライフォードは先ほどから付いてきていた執事に視線を向ける。
「ちょっと失礼するよ。……彼はマイト・スタインと言ってこの城の執事をしている者だ」
マイトと呼ばれる執事は軽く会釈をしてきたので、俺も会釈を返す。
「マイト、何か飲むものを持ってきてくれるかな?」
「畏まりました」
マイトは短く返答すると部屋から出ていく。
「……それで、聞きたい事と言うのは一体どういった事ですかな?」
「はい。俺達は以前に魔族襲来の際に活躍した勇者一行に会いたいと思ってこの地へと来たんです」
「勇者一行……アリシア達の事じゃな。だが、一体なぜ会いたいと思ったのじゃ?」
ライフォードは尋ねてくるが、俺は妹の事が気になって仕方なかったので答える事にした。
「……確か、魔族を1人囚われたと聞いて興味があったのです」
「確かに、アリシア達が魔族を追い払う直前、1人の女魔族を捕らえたと申しておったな」
……アイネの事だ。
「――それで、その女魔族はどうしたんですか!?」
「アモンさん?」
急に感情的になった俺に気付いたのか、エアリアが不思議そうな表情をする。
「あ、ごめん。えと……その、捕らえた魔族はどうしたんですか?」
俺は最悪な答えが来るのを覚悟して質問する。
「あぁ、処刑する――」
処刑……その言葉が俺の背中に重くのしかかる。
「――予定になっておったが……アリシアから申し出があってな、監視と称して今はそのアリシアと共に行動しているはずじゃ」
「……それってつまり、まだ生きている。という事でしょうか?」
「うむ、そうなるな」
俺はホッと肩の荷をおろす。
「……それでそのアリシアっていう方は、どこにいらっしゃるんですか?」
「あぁ、それは――」
――バンッ!
ライフォードが答えようとすると、勢いよく部屋の扉が開かれる。
「あなた達がドラゴンに乗った来訪者ね!」
金髪で緑色をした瞳をした少女が純白なドレスをヒラヒラさせながら部屋に入ってきた。
すると、少女に続いて先ほど退室した執事もトレーに飲み物を持って入ってくる。
「お嬢様! 入ってはいけませんよ!! あぁ……申し訳ありません。ライフォード様」
「よい。……騒がしくしてしまって申し訳ない、アモン殿」
「いえ、とても元気そうなお嬢様ですね」
「私はマリッサ・エクリエルよ。あなた達、ドラゴンに乗ってきたって聞いたけど、ドラゴンはどこよ」
「お、お嬢様! 失礼ですよ!! ……申し訳ありません。お嬢様はあまりこういった席には慣れていない者で」
傍にいたマイトはマリッサの代わりに謝罪してくる。
「あ、気にしないでください。賑やかになっていいと思いますし……ちなみに、ドラゴンはこの子です」
俺は席に座ってポケ―ッとしていたディアマトの方へ手を向ける。
「あなたね! ねぇ、ドラゴンになって見せてよ! さっきまで護衛の者から危ないから外に一歩も出して貰えなかったのよ!!」
マリッサは目を輝かせながらディアマトに駆け寄り両肩をガシッと鷲掴む。
「な、なんじゃこの女子は!」
「お嬢様ー!!!!!」
それから苦労人である執事の計らいで落ち着きを取り戻したマリッサは不貞腐れながら席に座る。
「申し訳ありません。飲み物をご用意いたしましたので、お話の続きをお願い致します」
落ち着きを取り戻した執事はそれぞれに飲み物を置いた後、マリッサの傍に戻り待機する。
「……さて、何の話だったかな?」
ライフォードは俺の方に視線を向けて尋ねてくる。
「はい。アリシアという方は今どこにいらっしゃるんでしょうか?」
「アリシアか、今の時間だと城下町で飲み歩いているはずだ。……マイト、案内をお願いできるか?」
「畏まりました」
「マイト! 私も――」
「ダメです!」
マイトはピシャリとマリッサに向けて言い放つ。
「もう、何でよ!!!!」
「まぁまぁ、マイトさん。別に人数が増えても問題ないですし、私は構いませんよ」
「よ、よろしいのでしょうか」
「はい。でも……ライフォードさん、マリッサさんを城外にお連れしてもいいんでしょうか?」
「あぁ、構わないさ。マイトも付いているからな」
どうやらマイトという執事はとても信頼が厚いようだ。
「いいのね! それじゃマイト、案内してあげなさい!」
「はぁ……マリッサ様、アモン様とライフォード様のご厚意に感謝してくださいね」
それから俺達はマイトという執事とお姫様であるマリッサと共に、勇者であるアリシアの元へと案内されるのだった。
「面白かった!」
「続きが気になる、読みたい!」
「アモン達は今後どうなるのっ……!」
と思ったら
下にある☆☆☆☆☆から、作品への応援お願いいたします。
面白かったら星5つ、つまらなかったら星1つ、正直に感じた気持ちでもちろん大丈夫です!
ブックマークもいただけると本当にうれしいです。
何卒よろしくお願いいたします。












