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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

黒髪ギャルと金髪ギャルのパシリとして学園生活を送っている俺、女子に告白されたと報告したらどうやらギャルたちは俺のことが好きだったようで大泣きされました。

作者: 三氏ゴロウ

 こんにちは。俺の名前はたちばな湊斗みなと

 ごく普通の高校生!


湊斗みなとー。一階の自販機まで行ってカフェオレ買ってきて。ダッシュね」

「私ファンタ」

「はい、分かりましたぁ!」

「遅れたら罰ゲームだかんねー」

「が、頑張りまぁす!」


 今日も今日とて、俺は元気に二人の陽キャギャルたちの奴隷パシリをする毎日を送っている。


「大変だなぁ橘の奴」

「まぁ目を付けられたのが運の尽きだろ。耐えるしかねぇよ」


 教室を出る間際、クラスメイトのそんな言葉を耳にするが、立ち止まることなく俺は教室を出た。

 

 くっそ! 星名の奴、なんで一階の自販機なんて指定すんだよ! 遠いっつーの!!


 星名千里ほしなちさと

 カフェオレが飲みたいといった方であり、金髪と物怖じしない活発な性格が特徴のギャルだ。

 

 根上も根上だ! ファンタってウチの自販機無駄に種類あんだぞ! どれ買えばいいんだよ! 聞いたらどうせ罰ゲームだなんだと難癖つけられるから聞けないし……!!

 

 根上琴葉ねがみことは

 ファンタが飲みたいと言った方。艶やかな黒髪と常に気怠けだるそうな雰囲気を放っているのが特徴のギャルだ。

 

 そして性質タチが悪いのは、この二人がとてつもない美人で学校のカーストトップに君臨しているということである。

 

 カーストトップの彼女たちに逆らえばどんな運命が待ち受けているかは想像にかたくない。

 だから僕は今日も奴隷パシリを続けているのだ。



「は、はい! カフェオレとファンタ買ってきました!」


 約一分三十秒後。

 俺は過去最高のタイムを記録し星名と根上がいる机の上に二本の飲み物を置いた。


「おー早かったじゃん!」

「超高速」


 感心したように星名と根上は言う。


 よ、良かった……。これで罰ゲームは……。


「じゃー罰ゲーム!」

「ドンドンパフパフ」

「え?」


 理解不能の流れに、思わず俺は間抜けな声を出した。


「「え?」じゃないよ湊斗。ウチ時間以内に買って来いって言ったじゃん。三十秒オーバーだよー」

「それに私が飲みたかったのオレンジ。グレープじゃない」


 にやにやと笑う星名と不満そうに顔を膨らませる根上。


「いや、あのぉ……はは」


 俺は顔を引きつらせて笑うことしかできなかった。

 


「あははー! どう琴葉?」

「すごいラクチン」


 そう言って、根上は俺の背中に全体重を預けた。

 星名たちから言い渡された罰ゲーム、それは『今日一日移動は全部俺のおんぶで行う』というものだった。


 なので俺は今、根上をおんぶしながら校内の廊下を歩いている。

 正直とても居たたまれないし恥ずかしい。周りの視線が痛い。本当に痛い。


「んじゃ次ウチねー!」

「あ、ちょっと千里」


 根上を俺の背中から引き離し、今度は星名が俺の背中に勢いよく飛び乗って来た。


 ――むにゅ。


「……」


 瞬間、俺の背中に衝撃が走る。

 

 デ、デカい……!!


 背中の衝撃の正体が星名の胸によるものであることは即座に合点がいった。

 推定カップA +の根上と違い、星名の胸は推定Eカップ以上。勢いよく背中に飛びつかれたことで、俺は一心にその柔らかさと大きさを実感する。


 気持ち悪いと言われるかもしれないが怒らないでほしい。男だもの。


「……」

「……あの、根上さん?」


 しかしどうしたのだろうか。根上が急に俺の頬をつねり出した。


「湊斗。やらしい顔してる」

「うぇマジ!? ちょっと見せろし湊斗! ……うわマジじゃんウケる! 何々? まさかウチの胸が当たってぇ興奮でもした? エッチだなぁお前!」

「ちょ星名さん!? 大声で言うのやめてぇ!?」


 多くの人が歩いている学校の廊下で女子の胸の感触を楽しんでいることを暴露された俺。

 体を走る羞恥心は数秒前とは比較にならない。


「湊斗のえっち」

「痛いれふ根上はん。止めへくらはい……」


 そして同時に襲い掛かるのは、先程よりも強さを増した根上の頬つねりだ。しかも両頬。

 

 あぁ……どしてこんなことになってしまったんだろう。


 羞恥心と痛みを感じながら、俺はコイツらに出会った時のことを思い出した。



 一か月前。

 

「でさー、昨日告ってきたのがマジキショくてー……って聞いてる琴葉ー?」

「聞いてる聞いてるー」

「聞いてないやつじゃんそれー」


 頼まれていたプリントの束を職員室に届けた俺は、彼女たちと学校の階段ですれ違った。

 彼女たちは学校で相当な有名人だったから俺の方は知っていたが、向こうは俺のことなんて知らなかったろう。


 こういう奴らとは未来永劫関わることは無いんだろうな。


 そんな風に思った矢先だった。


「っきゃ……!?」


 星名の方が、階段から足を滑らせた。

 一瞬のことで反応が遅れたのか、星名は体勢を保つことができず、そのまま落下する。


「危ない!!」


 気付けば俺は、反射的に体が動いていた。

 手を伸ばし辛うじて星名を掴む。そして彼女を抱きかかえ、一緒に落下した。


 ドン!


「ってぇ……だ、大丈夫か!?」


 背中の痛みに悶えながら、俺は星名を確認する。


「え、あ……うん」


 ポカンとし様子で、星名は答えた。

 どうやら痛みはないようで、捻挫や打撲もしていないようだった。


 ともかく良かった、俺は心底安堵した。


「ねぇ、名前は?」

「え? 橘、湊斗だけど」

「橘、湊斗……」


 何故か噛み締めるように、星名は俺の名前を呼んだ。 

 そして、


「湊斗! アンタ今日からウチらのパシリ決定!」


 次に放たれたのは、あまりにも理不尽な奴隷宣言だった。



 正直、あの時星名を助けたこと自体は後悔していない。

 助けなければ星名は大怪我を負っていただろうし。

 

 けど、助けた俺に対してこの仕打ちには明らかな不満がある。


 そのため、俺は状況を打開するためにある作戦を実行に移すことにした。

 その名も

『星名&根上に彼氏を作らせよう大作戦』。


 作戦内容は文字通りだ。

 あの二人に彼氏ができれば彼氏のために時間を使うようになり、俺のことが邪魔になるだろう。

 それに彼氏の方も彼女となった星名や根上の近くに俺みたいな奴がいることを良しとしないはず。


 完璧な理論構築が成された素晴らしい作戦。

 我ながら自分の頭脳が恐ろしかった。


 こうして、俺の作戦が始動した。



 ーーおかしい。


 俺がそう思うようになったのは、作戦を開始してから半年以上が経過した頃だった。

 時期は既に秋が終わり冬。

 星名と根上に彼氏はできていなかった。


 どうしてだ……!? 休日に買い物、海や夏祭り、体育祭に学園祭、修学旅行、ハロウィンパーティー! その他諸々(もろもろ)!!

 全てのイベントを有効活用してアイツらと校内の男をくっつけようとしたのに上手くいかなかった……!


 むしろアイツらの友達の他のギャルに色々面倒事に巻き込まれて俺の負担が耐えただけ……!


 俺は机の上で頭を抱えた。


 次のイベントはクリスマス、聖なる夜にして性なる夜!! 恋人を作る一大イベントだ!! これは今までと比べてもまたとない大チャンス!! 何が何でも成功させないと……!!

 

 頭を必死に回転させる俺、そんな時だった。


「あ、あの……橘、君」

「ん……おぉ園原そのはら


 少女の名は園原雫そのはらしずく

 星名たちに彼氏を作ろうと画策かくさくした中で仲良くなったクラスメイトであり、夏祭りや学園祭など様々なイベントで行動を共にしたことがある。

 今では友人と呼べる間柄だ。


「どうした?」


 夕暮れの教室の中、俺は問う。

 すると園原はどこかもじもじとした様子で教室の中に入って来た。


「あ、あのね……」

「おう」


 どこか言い出し辛そうな雰囲気の園原。しかし意を決したのか、彼女は俺の目を真っすぐに見て言った。


「……す、好きです。私と、付き合ってください!」

「……」

 

 それが、生まれて初めての女子からの告白だった。



 結局、その時すぐに返事はできないまま、俺は告白を保留にしてもらった。

 正直男として情けないとは、自分でも分かっている。


 だけど仕方ないだろ!

 ま、まさか俺が告白されるなんて……。しかも相手はあの園原。

 園原は控えめな性格だがとても気配りができてその上可愛く、学内での人気はとても高い。彼女から告白されれば十人中十人がオーケーを出すだろう。

 正直言えば、メチャクチャ嬉しい。


 しかし、


「湊斗ー。手止まってる」

「うぇ? あ、すみません星名さん」


 星名の声で、現実に帰る。

 俺は今、星名の手を握りネイルを塗っていた。

 最初の頃はパシリや荷物運びのみだったが、今では彼女たちのネイルを塗ったり料理を作ったりと、どこまでも仕事の幅が増えていた。


「もー、また苗字で呼んでる。名前で呼べって言ったっしょー?」

「あぁ、すみません。千里さん」


 そしていつの間にか、俺は彼女たちに名前呼びを強要される程度には、距離が近くなっていた。

 俺が仲良くなってもマイナスにしかならないのだが。


「ねーねー琴葉。クリパどーする?」

「クラブ貸切」

「おーいいね! 朝まで騒ぐかー!」


 二人がクリスマスの計画を立てている。話題に上げていないだけで、俺も当然のように頭数に入っているのだろう。


 そうだ。園原への告白の返事よりもそうだが、まずはこちらを何とかしなければならない。

 しかもこれまで幾度と無く作戦は失敗している。

 次のイベントで作戦が成功するイメージが、俺には全く見えなかった。


 やり方を、アプローチを変える必要がある気がした。

 そしてふと、園原の顔が浮かぶ。


「……あ、あの」


 気付けば口が、開いていた。


「ん? どしたん湊斗?」

「何か真剣」


 星名と根上は、俺を見て首を傾げる。

 

 これを言ったら、どうなってしまうのか。


 正直怖い気持ちはある。しかし、現状を変えようとするならば、解放されたいならば、手段は選んでいられない。

 思いついたのなら、実行すべきだと思ったのだ。


「実は俺、告白されまして……」

『……』


 俺がそう切り出した瞬間、場の空気が凍りついたような気がした。


「え、何?」

意味不イミフ

「い、いやその……ですから告白を……」


 恐る恐る、俺は言葉を続けようとするが、


 ――バン!!


 星名が机を勢いよく叩いたことで、思わず口をつぐんだ。


「それで? ちゃんと断ったんでしょ?」


 あ、まずい。これヤバい程怒ってらっしゃる……。


 星名の声音から、俺は身の危険を感じる。

 

 い、いやいや落ち着け俺!! ここで怖気づいてどうすんだ!! 行け、このまま行くんだ!!


「いやぁ……あの、受けようかなって……思っておりまして……」


 あはは、と自分でも分かるほどの乾いた笑いを浮かべながら、俺は答えた。


『……』


 沈黙が流れる。

 とてつもなく居たたまれない。今すぐこの場から逃げ出したい。

 そんな思いばかりが募る。しかし、


「帰る」

「え?」


 そう言い残し、星名は足早に教室を去ってしまった。

 俺はあまりにも唐突なその出来事に、呆然と立ち尽くすことしかできない。


「あぁーあ。湊斗、やっちゃったねー」


 教室に残ったまま、机の上に頬を預けていた琴葉はジト目で俺を見る。


「こ、琴葉さん。俺……」

「ねぇ湊斗」

「あ、はい。何でしょうか……?」

「好き」


 ――……。


「……は?」


 理解が不能だった。

 あまりにも唐突に、根上から放たれたたったの二文字。それらが紡ぐ単語の意味が。


「ちょ、あの……え、は……?」


 まともな言葉が思い浮かばない。昨日の今日で二人目の告白。

 それも自分が奴隷パシリとしてコキ使われてきた根上から。

 情報が多すぎる。脳みそが理解を拒んでいる。


「実はねアタシ、前に湊斗に会ったことあるの。あの時、千里を助けるよりもずっと前に」


 いつも一言一言の口数が少ない根上が、矢継ぎ早に言葉を重ねていった。


「中三の冬にさ、アタシ家出したんだ。スッピンで化粧もしてなくてさ。お金も少ししか持ってなくて。友達の家に泊まっても親にバレるから泊まれなくて。でも家には帰りたくなかったからエンコーでお金稼ごうと思ったの。そしたら湊斗に会った」


 言われて、微かに思い出す。

 中三の冬、確かに家出したと言っていた女の子に出会った。


「初めて会った他人なのにさー。近くのコンビニでご飯とかカイロとか買ってくれて。自分のことみたいに心配してくれてさ。あー、こんな人いるんだって、思わず笑っちゃったもん。アタシの名前も、家出した理由も聞かないし。どこまでお人好しなのコイツって思った」

「いや、まぁそれは……色々事情があるのかなって、思いまして……」


 ポリポリと頬を掻く。正直、その時のことはよく覚えていた。

 家出少女……根上がとても寒そうにしていて、放置していたら死にそうだと思ったから、あれこれ手を尽くしたのだ。

 小遣いを大分消費した記憶がある。


「こんな人もいるんだって、そう思ったら何か家出することがバカバカしくなって、だから帰ったの。ママにすごい怒られたけど、今となっては良い思い出」


 思い出って、寒空の中死にかけていたことや援助交際しかけたことをそんな扱いにしていいのか?


「で、高校に入学してぐーぜん湊斗に会った。相変わらず人に頼み事されたら断らないし、いつも誰かのために走り回ってた。そんな姿を見て、好きになった。けど、それは隠してようと思ってた」

「え……それは、どういう……」

「だって私みたいのが湊斗に絡んだら、迷惑かなって思ったし。けど階段で千里を助けて、千里が湊斗を気に入った時、やっぱり一緒にいたいなって……。アタシって意思弱いよね」


 ボソボソと、段々根上の語尾が小さくなっていく。

 そこには、申し訳なさが滲み出ていた。


「アタシは、言いたいこと全部言った。だから、これでおしまい。スッキリした。次は湊斗の番」

「俺……ですか」

「うん。湊斗は、どうしたい?」


 迫られる、たく

 俺の中に、彼女たちと出会ってからの思い出が……走馬灯のように駆け巡る。


「一つ、聞いてもいいですか?」

「ん、何?」

「どうして、今俺に告白したんですか?」

「……そろそろ、このままじゃいけないなって、思ったから。アタシも、たぶん千里も」

「そう、ですか……」


 根上の言葉が、俺を穿うがつ。

 このままではいけない、それは俺も同じだ。変わらなくちゃいけない。

 ――そして、それは……。


「俺、ちょっと行ってきます」


 根上に背を向けて、俺は走り出した。


「……頑張れ」


 微かに、そんな声が後ろから聞こえた気がした。



「……」

「……風邪、引きますよ」

「……」


 学校の近くの公園に、星名はいた。ベンチの上で、体育座りをして。


「あの……」

「うるさい。喋んな」


 ピシャリと、そう言い放たれてしまう。


「……何で来たの」

「そんなの、心配だからに決まってるじゃないですか」

「ふん。彼女ができた奴は言うことが違うわね」

「……」

「……」


 ――……。


「ふぇぇ……」

「えっ!? ちょ!? 何で急に泣くんですか!?」


 数秒の沈黙の後、いきなり泣き出した星名に俺は思わずたじろいだ。


「だって、だってぇ……!! 湊斗がぁ、他のコの所に行くんだって思ったらぁ……!! うぅぅぅ……!」


 まるで小学生のように、星名は泣きじゃくる。


「考えてみればぁ、そうだよなぁって思ってぇ!! 今までいっぱい酷いことしたんだからぁ……ウチのこと、キライになるのは当たり前だしぃ……!」

「お、落ち着いて下さい星名……じゃない千里さん!」

「初めて階段でウチを助けてくれた時ぃ、すっごくカッコ良くてぇ! 運命の人なんだなって思ってぇ! だから一緒にいたくってぇ! 今までクソな男しか近づいて来なかったから余計にそう思ってぇ……!」


 言いたいことを思いつきでそのまま言っているためだろう、星名の言葉は明らかに前後がおかしかった。

 しかし、その意味を理解できないほど俺は馬鹿でも無いし鈍感でも無い。


 結論。

 つまり俺は、非常に信じられないことだが……三人の女子から恋愛的な感情を向けられているということだ。

 あまりにも、あまりにも非現実的な状況だが受け入れるしか無い。

 そして大事なのは、だからこそどうするか……俺が、どうしたいかだ。


「千里さん。少しだけ俺の話、聞いてくれますか?」

「ふぇ……? う、うん」


 涙を流しながら、上目遣いで星名は俺を見る。

 一瞬その涙に流されそうになるも、俺は首を振り、口を開く。


「俺は、今誰のことも恋愛的な意味で好きじゃないです」


 これは紛れもなく事実だ。

 この数ヶ月、星名たちの奴隷パシリを続け恋愛をする暇など無かったし、当然そんな状況では星名たちにその感情を抱くことも無かった。

 園原の告白は、俺にとって生まれて初めてされたモノだったから嬉しくて混乱して、思わず保留してしまった。が、彼女に対しても恋愛的感情は抱いてない。


 それに俺は、彼女の告白を星名たちから解放される口実に利用した。

 俺が彼女にしなければならないのは、謝罪だ。


「……うぇぇぇぇぇん! やっぱりウチのこと嫌いだよねぇ……! ごめんねぇ! いなくなる、ウチいなくなるからぁ……!」

「ちょちょちょちょちょ!? だから落ち着いてくださいって……!」


 くそ! 星名の人が変わりすぎてやり辛い!!


 このままでは本当に俺の目の前から消えてしまいそうだ、そう考えた俺はさっさと言葉を畳むことにした。


「俺、気付いたんです! 奴隷パシリとして千里さんたちと色んなイベントを体験して、思い出を作って……俺も、楽しかったんだってことに!」

「うぇ……ど、どーいうことぉ……?」

「恋愛とか、付き合うとかどうとか、今はまだ考えられません! けど、少なくともこれからは……奴隷パシリじゃなくて、『友達』として、星名さんや根上さんと関わっていきたいんです!」

「友、達……?」

「はい。友達です」


 そう言って、彼女を落ち着かせるように肩を掴んだ。


「それで、どうですか?」

「ど、どうって……」

「俺と! 友達に、なってくれますか……!?」

「……わ、私……今まで、湊斗にいっぱい酷いこと、したんだよ……。友達、なんて……私に、そんな資格……ないよ」


 星名はうつむいた。

 

 あーもう、この人は……!!


 気付けば、俺の中で確かな怒りが蓄積していくのを感じた。


「そんなこと気にしなくていいから!! 千里さんが、どうしたいのか!! それを答えて下さい!!」

「わ、私……私はぁ……!!」


 肩を震わせる星名、やがて彼女は顔を上げる。


「友達、友達に……なりたいよぉ!! もっと、もっと湊斗と一緒に楽しいことしたいよぉぉ!!」


 子供のように泣きじゃくりながら、そう言った星名を見て、俺は思わず苦笑した。



 その後、


「湊斗ー! 一緒に帰ろー!」

「ゴーホーム」

「あぁ、うん!」


 俺は千里さんと琴葉さんと、友達として良好な関係を築いている。

 ちなみにだが、園原さんにはちゃんと謝り、告白は断った。しかし、


『あ、諦めませんから!!』

 

 というのが彼女の回答だった。

 

「湊斗ー! 何ぼーっとしてんの? 早く行こー!」

「行くぞー湊斗」


 教室の入り口で、千里さんと琴葉さんが待っている。


「今行く!」

 

 俺はカバンを持ち上げた。

 

 未来がどうなるのか、それはまだ分からない。

 きっと俺がした選択は、都合の悪いことを先延ばしにしただけ。臭いモノに蓋をしただけだろう。


 だが今はただ、『友達』となった彼女たちと、楽しい時間を過ごしていきたい。

 これまでの時間を取り戻すように、思い出を積み重ねていきたい。


「っと!」


 教室の窓から入ってきた風に背を押されるように、俺は足を前に踏み出した。

ここまで読んでいただきありがとうございます。

本作は長編として構想があったものを時間が無いということで短編化したものです。

ヒロインの名前の由来は

明るい・活発→ポジティブ→星名千里ほしなちさと

マイペース・ダウナー→ネガティブ→根上琴葉ねがみことは

っていう感じです。

ギャルはこれからもガシガシ書いていきます。


よろしければブックマークや

下にある☆☆☆☆☆を★★★★★にしていただけると嬉しいです。

応援が大変励みになります。



※新作投稿しました!

『周囲から陰キャとバカにされる俺、実は全国制覇を成し遂げた不良チームの元総長~引退しても何かと不良たちに絡まれるが推しのVtuberの配信があるから邪魔をするなら容赦しねぇ。そこんとこ夜露死苦ゥ!!~』

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[良い点] ギャルが好きだからギャルものうれしいです。 最近よく見るギャルだったのに突然清楚になった詐欺じゃ無くて良かったです。 [気になる点] 主人公が複数の子に好かれてるのは良いけど負けヒロインが…
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