表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

2/6

埋まりかくれんぼ

見つけられない



俺らが子どものときの友達はかくれんぼの間に消えた。


隠れている間に行方不明になった。


警察も自衛隊も捜索したけど、見つからなかった。

テレビでニュースになったけど、目撃情報はなかった。




でも僕は見つけていた。



「かくれんぼしようよ」



行方不明になった子は浮いていた。幽霊になった姿で。

かくれんぼでいなくなった子は死んでいたのだ。

死体の目撃情報はないが、こいつは死んでいて、幽体で俺の頭上周りを浮かんでいる。


霊感が少しだけある俺だけが知っている事実。



「あいつは死んだんだ」




と話してもきっと誰も信じてくれないだろう。


俺でも「死ぬ」ということは理解していた。

そして死んだ者と関わってはろくなことにならない、ということもよく理解していた。




でもあまりにも



「かくれんぼしようよ。かくれんぼしようよ」



としきりにうるさくて騒ぎだす。

しまいには僕の家にまでつきまとってきて、かなりのストレスだ。


こいつは、かくれんぼが好きな子だった。

何か遊びをするときには必ずかくれんぼを提案してくるやつだ。


うっとおしいので俺はずっと無視をしていた。





日が落ちかけた夕方の夏のある日のこと。


道を歩いていたら、またヤツにつきまとわれてしまった。



「かくれんぼしようよ。かくれんぼしようよ」


「あーもう!!うるさいなあ!!!」



ずっと無視していたが、うるささについ大声を上げて反応してしまった。


しまった。と思って僕は振り返ってしまった。

幽霊の体になったヤツはニタァと笑って



「かくれんぼ!かくれんぼ!」



ときゃっきゃと言っていた。



「わかったよ、かくれんぼしてやる」


「!」


「1回だけやってやる。代わりにかくれんぼしたら、俺からはなれてくれ」


「いいよ!じゃあ君が逃げてね!30秒数えるよ!」


「はいはい」



むかつくが、かわいそうだから1回だけヤツの遊びに付き合ってやろう。

もしかしたら、成仏するかもしれないし…。



「いーち、にーい、さーん…」



カウントダウンが始まった。

隠れるため、俺はすぐ近くの神社のほうへ歩き出した。


だいたいの幽霊は神社の神域で拒絶されて入ることができない。

だから神社の中で隠れる俺を見つけることはできないって算段だ。


絶対に勝つことができるわけだ。



俺は勝ちを確信していた――いや、油断していた。



「っ!!」



足元にある穴に気が付かず、足を滑らせて落っこちた。

暗くなっていたので気が付かなかった。



「いってぇ…」



状況を整理しようと見上げた。


穴が深い―――手を伸ばしても地面に届かない。

穴の大きさは子どもが一人入れそうなほど。


のぼろうとしたが、土で滑って登れない。



ビチャ。


冷たい。雨か?

顔に冷たいものがかかったようだ。手で顔を拭うとそれは泥だった。


すると、どんどんバケツをひっくり返したように何か降ってくる。



「ちょ…ぺっぺっ!」



降ってきたものが口の中に入った。砂の味がする。


どんどん降ってくる。俺は腕で顔を守ろうとするも、大量の泥と砂が降ってくる。

このままでは何者かに埋められてしまう――。



「やめろ!やめてっ!誰か!!!」



「あれれー?どーこだ???」



幽霊の声がする。



「ここだ!ごほっ!ここだ!誰かっ!」



誰でもいい。必死に助けを求めた。



「うーん、見つからないなあ」



「おいっ!!ここだっ!ここ…」



足元が砂と泥で埋まった。コンクリートで固められたみたいで足を動かせない。


たえず砂と泥が降ってくるから、呼吸すら苦しくなってきて、声も出せなくなってきた。



「あっ!」



幽霊の声がした。



「見つからないな、帰ろっと」



そうか。きっと行方不明になったあいつは…こうやって――埋められて死んだんだ。

あの時、かくれんぼをした場所は大きな山だったから。


肩まで体が埋まった。

降ってくる砂で目すら開けられない。


「だ、だれ………か………」


冷たい感触が、俺を包んだ。

視界が真っ暗になった。


やがて、その感触もなくなっていった。






翌日の夏の日の出来事。

子どもの行方不明者が出た。



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ