シリーズ1-1
プロローグ
僕は出会った。いや、俺は出会ってしまった。
食べてしまいたくなるくらい愛おしい彼女と・・・
もう会うことの出来ないと思っていたその彼女と。
シリーズ1-1
あの日の心残り。
父は言った。お前にもいいところはある、と。
母は言った、周りの人を大切に、と。
先生は言った、先に手を出した方が負け、と。
友達は口を揃えて言った、お前なんて居なければいい、と・・・
※
中学生の時、とても嫌われた男の子がいた。そんな彼はつい最近病気でなくなってしまったそうです。
最初はみんなと仲良くしていました。中学生の上がり立ては、みんな緊張と楽しみで、みんながワクワクと不安でいっぱいの1年生を過した。
2年になって打ち解け始めたのか、学校内で喧嘩が減り、固定のグループというものが完全に出来上がっていた。だが、別々のグループで対立することも時にはあった。
彼はそんないくつかのグループに所属していた。言ってしまえば浮気者だ。だが、彼は誰にでも友好的で、誰よりも正しかった。クラスで頭が良かったから、その時みんなはそう思っていた。
彼のおかげでいつくかグループがくっつき、大きいグループができた。喧嘩の仲裁も彼が行ってきた。
今頃だが
うちの中学は3年間同じ人と同じクラスだ。
——それが中学生前半までの出来事。
中学2年後半から、受験を意識し始めた人が出てきた。その子たちは時々。あの彼に話しかけ勉強を教えて貰っていた。
そんな平和な日常を僕は見届けている。その時僕はそう思っていた。僕はどのグループにも属さず一人でいたのだ。
別に仲が悪い訳でもない。話しかけられれば仲良く話すし、抑えられそうな喧嘩を見れば仲裁に入ることもあった。
ただ僕自身がグループに入ろうとしなかった。都合のいい友達になっていたかったから。
だから、彼に、こっちにおいでよ、と言われた時はびっくりした。拒否もした。だが、中学生生活後半が始まって初めてクラスのグループに所属した。
というよりもはやクラスで1グループになっていた。ほかのクラスの人間関係は知らないが、僕のクラスはそうなっていた。
そんな幸せの日々を過ごしていた。
——だが彼は事故にあって豹変した。
階段から突き落とされたらしい。幸いにも段差が低く短い階段だったから。入院2週間で帰ってきたが、まるで別人だった。
——記憶が無くなったのではなく、記憶が戻ったのだそうだ。
この学校自体、実は小学校に行けなかった人が来る学校だ。
だから大概の人は違う小学校から来ている。みんな初めての相手だ。だが、母親に無理言われて来ている。
彼が記憶を戻すまではきっとみんな来てよかったと思っているだろう。だが彼は、攻撃的で、人としてとても意地悪な人になった。
彼の中の彼は、もう彼にはいないらしい。
次々に彼にみんなが告げる。
※
彼のお葬式には中学のクラスメイトみんなが居る。彼はあの後引きこもり、病んでしまった。きっと彼の中の彼が今の彼自信を攻めたのだろう。
もう昔の彼にも今の彼にも会うことが出来なくなってしまった。今ここに居るクラスメイトは、みんな攻めてしまった罪悪感と、仕方なかったという感情が、入り交じっているのだろう。
お経が唱えられている。
自分も唱えていると、お葬式はすぐさま終わってしまった。クラスメイトは誰も泣いてはいなかった。ただ暗い顔をしているだけ。
葬式が終わり、社会人になった僕達は、直ぐに帰るでもなく、話をするでもなく、会場近くをウロウロとしていた。居場所が無いのだ。
彼の母に呼ばれたものの、僕達が彼を廃人の道へと誘ってしまったから、とても気まずいのである。
彼の母は会場内で、最後までいたが、とてもすごく泣いていたのか、会場外に出てきた時には目元を腫らし真っ赤にした目や耳をしていた。そして僕らを集めた。
「あなた達」
僕らは彼女に責められてもおかしくない。だから一同は、顔を下に向け目をギュッと閉じ、責められる準備をしていたら、予想外の言葉が来た。
「あなた達、双田が記憶をなくしている時に、仲良くしてくれてありがとうね。」
涙目で彼女は笑顔を作り、そういった。
僕達は顔を見合せた。そして頷きあったあと、最も仲の良かった中上が代表して言った。
「い、いや、でも俺らがあいつを拒絶してたから、廃人にしてしまったわけで——」
「知ってるわ。でもあの子、小学5年生までずっと悪いことしてたみたいで……」
彼女は涙を堪えて、それでもなおこぼれてしまった涙を拭いつつ続ける。
「先生によく叱られて、あまり笑顔の時間がなかったの。その後、やんちゃしすぎて、頭打って、記憶なくしちゃって……」
彼女はやんちゃして、でも何も無かった子を見るように笑い、その後すぐまた泣いてしまった。
「でも中学生の間は帰ってきてから笑顔の時間が増えてたの。」
また笑顔を作り、そんなことを言う。
「それはあなた達のおかげ。あなた達が仲良くしてくれたから、あの子は、あの子は笑顔で暮らせていたの。」
俺らはまたも顔お合わせる。みんな話を聞いて目元を赤く腫らしているが、今度は島本が、声をかけた。
「でも、結局彼の笑顔を奪ったのは私たちで——」
「もういいのよ」
彼女は大きな声で島本の声をかき消しながら言った。
「私だってあなたがたを叱ってあげたい。でも、もう今はそんな元気はないの。だから」
そう言って息を切らし、
「もういいわ」
静かな声で、見下すわけでもなくそう言った。
「「「「…………」」」」」
一同の沈黙が続く中、双田の母は僕達の前から去っていった。
こんな夢を描いたしまった僕の、いきなり浮かんだ物語。きっかけはYouTubeのレート先生。ベンチで会う謎の人物。それが僕の創作欲を掻き立てた。ただそれだけ。最近、感動する物語を見ていてとても描きたい欲が出てきた。不定期ですが続編をお楽しみに。
読んでいただきありがとうございます。