第七十二話 ガールズトークは男にはよく分からない
今回は二話構成です。
「……雨だなぁ……」
「ですね〜……」
魔界でも雨は降るのかーーーーーそう疑問に思う人もいるだろう。
魔界といえば暗黒面という印象、雲行きがあやしい状況がひたすら続くイメージを持つことが多い。
だが、そんな魔界でも雨は降る。
季節や天気は人間界と大差ないのだ。
「何連続だっけ……」
「ーーーーーー三日連続ですね〜」
そう、今現在魔界も梅雨真っ盛りーーーー
ジトジトジメジメ、停滞前線が真上に存在しているのだ。
「雨だからこそできることもあるでしょ」
「……例えば?」
海斗とバルが元気なくしおれていると、隣に座る花音が口を開けた。
「例えば……瞑想とか」
「遊びじゃなかった、期待した時間が無駄だった」
瞑想て……
てか、それお前が一番やらなくちゃあいけないんじゃないんかい……天使なんだから。
「じゃあトランプしましょうよ! 楽しいですよ〜」
「却下、俺はトランプに良い思い出が無いんだ」
バルがトランプを提案したが、海斗はそれを拒否。
なんせルシファーたちにボッコボコにされた過去を持つからだ。
「男だったらそんな思い出塗り替えてやる的な意気込みは無いんですか!」
「仮にそうならこんなにだらけてない」
「確かに」
納得されてしまった。
「えぇ……じゃあ……」
「……あ!」
「?」
うんうんと悩むバルーーーーそして何か思いついたようで
「では! お泊まり会しましょうよ!」
そう提案した。
「……お泊まり会ー……?」
「ソウデース、この城でお泊まり会を実行するのデース」
何だその喋り方……
「……」
「どこの部屋で」
「ここです」
ここ?
「……それじゃあ俺がお泊まりじゃないだろ、俺の部屋なんだから」
俺にとっちゃあお泊まりじゃねえよそれ……何回か泊まったことあるし。
なおかつ己の部屋でお泊まりって何も興奮しねえよ。
「でも、魔王様がここで複数人と寝たこと無いでしょ?」
「………まぁ……そうだな」
確かに……アイナと寝るか、起きたらルシファー潜り込んでいたぐらいしかねえな……
そうか、お泊まり会だから結構な数がいんのか……
「しかも今は花音さんもいます、また違った快眠が取れるかも……」
「……」
「ーーーーしゃあねえ、するか」
それはそれで面白そうだーーーーー
ーーーーーー
結果的に元いた三人と、ルシファー、サタン、アイナが集まった。
いつもとは違った賑やかさを出してくれている。
……賑やかなのはいいんだが……
「……」
「あらぁ……? 久しぶりね花音さん……」
「本当ですね〜ルシファーさん〜、相変わらず鬱陶しい声でー」
ルシファーと花音を合わせちまった……
「四十四話目から今の今まで登場しなかったから、私もう失踪したのかと思いましたよぉ?」
「ほざけ糞堕天使、お前がキャラ確立させてくれてるのはネームバリューがあるからよ、決してお前がいいわけじゃないから」
「負け惜しみにしか聞こえませんよ〜? まぁ貴女にはネームバリューすらありませんものねぇ?」
「ただのどこにでもいる幼馴染ポジ陣取っているだけですものねぇ?」
ーーーーどんだけ口喧嘩すりゃ気がすむんだ……
会うごと会うごとこうしてるぞ……
「……」
「……仲良いなこいつら」
サタンでさえも引いてるぞ。
「で、天使の消しカスみたいな奴の相手はこれぐらいにして何かしましょうか」
「誰が消しカスよ、天使の残り汁みたいな奴がよく言うわ」
ルシファーはこれをサラリと無視しーーー
「トランプでもしましょう」
「絶対お前とはやらねえ! 金輪際しない! 断固反対!」
「あら面白くない……」
ルシファーとのトランプは絶対に勝てないからな……
どこからか俺の手札を見てるから。
「ではガールズトークしましょう! 恋話とか」
バルが元気良くそう言うが
「すいません! 貴女の目の前に女性じゃない人がいます!」
海斗はガールじゃなかった。
「恋話は女じゃなくてもできるでしょ? 私は聞きたいです……魔王様の恋話」
「ねえし、そんなのねえし」
俺に色恋とか求めないでくれるか。
「私とやったことを話せばいいだろう!」
「それこそねえよ! 記憶にねえよ!」
添い寝だけだよ!
「……でもよ……お泊まり会つったって、することねえぞ? 証拠に何も決まってない」
「……」
海斗の言う通り何も決まっていない。
ただただおしゃべりをするっていうのもいいが、それだといつか飽きがくる。
しかもグループ化されてしまう恐れもあるし……
何かないだろうか……?
すると突然
この空気に惹きつけられるように、ドアがノックされたのだ。
入ってきたのは
「失礼しますー……」
シウニーだった。
「ーーー!」
「な、なんですか……!」
海斗が彼女を見るや否や目を輝かせるーーー!
それは目当てのおもちゃが手に入った子供のごとく……! 期待に胸膨らんでいたのだーーー
「そいつを抑えろぉぉ!」
「え、ちょーーーーーー」
海斗の号令に皆がシウニーを抑え込む。
五人の悪魔の力に可能はずもなく
「大人なしくしろ!!」
「いや意味がッ! あわっ!!」
あっけなく捕まったシウニーだった。
ーーーーーーーーーーー
ーーーーーーー
ーーー
「はぁ……お泊まり会……」
シウニーに訳を話す海斗。
今とてつもなく暇なのだと説明したのだ。
「そうだ、でもやることがなくてなーーーーーお前を生贄にしようと考えたんだ」
「生贄!? 暇をつぶすために私生贄にされちゃうんですか!?」
「当たり前だろ、お前は以前から生贄に選ばれてきたーーーー思い出してみろ……今までのことを」
「生贄……」
海斗に言われるがまま過去を頭に広げ出すーーーーー
ーーーーーーーーーー
ーーーーー
『……だって…私まな板だし…絶壁だし…』
『何をやっても膨らまないし…』
『たくさん食べてもお腹に溜まる一方だし…』
ーーーーー
『じゃあここで囮役しててくれ』
『ちょ、ほんと、なんですか…?!』
『ほんとほんと、俺らはその隙に侵入してくるから、よろしく〜』
『ちょっと!!嫌だあああああ待ってええ!!』
ーーーーー
ーーーーーーーーーー
「………」
「……確かに……」
いい思い出は無い。
というかほぼ被害者の立ち位置。
「だろ? だから今になって怖気付く必要はねえーーーーーはい、というわけで面白いことやって」
「生贄ってそれ!? 今までよりも悪質なんですけど!」
シウニーの言う通り悪質極まりない無茶振り。
何か特別な集まりなどの時によく振られるそれーーーー
上司が部下に行っているのをよく見る。
振られる者にとっては迷惑すぎる。
「大丈夫、お前ならやれるーーー全員笑わせるくらい片手でできるはずだ、ちなみに全員笑わせることができなけりゃあ切腹な」
「代償がデカすぎる!! ほぼ無条件で死を渡されるぐらいひどいんですけど!!」
なぜ死ななければならない!?
不条理の塊なんですけど!
しかしその言葉に海斗は身を震わせたーーーー
「んぅぅ……いや……流石だな」
「……え」
そしてそう褒めたのだーーー
「流石シウニー、花音ーーーこれが連続出演の実力だ」
「こいつは二十二話目で登場したんだが、それからというものほとんど毎回出演している……」
「……凄まじいわね……」
「それには理由がある、一つ目はツッコミ役ということだ、ツッコミ役は立ち回りが容易ーーーーつっこむという行為はどんな物語でも必要不可欠」
「最後はまな板としてのキャラが確立されているからだ」
「後者は入りませんよね」
せっかくいい感じで褒められていたのに。
「なるほど…….私も見習わなくては……」
「いや納得しないでください」
花音さんまでかい。
「でも、少しの暇は潰せた……ありがとうな、シウニー……」
「え……は、はい……」
そっか……あの無茶振りは本気じゃなかったんだ……
私を褒めつつ周りを笑顔にするなんてーーーーーーーーー
心が透き通っていくシウニー。
顔もそれと同じように柔らかくなっていった。
「じゃあ帰れ」
「本当最低ですよ」
一瞬で心がどす黒くなった。
後編へ続くーーーーー




