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もしも人間が魔王になったら  作者: キバごん
呪われた子編
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第七十一話 終わりが悪ければ全て悪い

「ーーーーなんだあれは……」


「うええぇ……さすがに気持ち悪いな……」




ジニアイの首から下は鉄の塊だった。


均等に接合された部分もありーーーまた乱雑に取り付けられたところも見えた。

灰色のパイプは呼吸をしているかのように、心臓と全く同じ速度で脈打っていたのだ。




「どうしたクソガキィ……動けないかぁ?」


「……」

「……なんだ…..その体……」


たまらず海斗が問う。

壁に打ち付けられた体を押さえながらーーー


「これかぁ?ーーー改造したんだよ」

「お前が我らを跳ね除けてから一年……私はその間、少しずつ少しずつ体を機械化していった……」

「そして後一年で慣らし、ここに来たのだ」


「……ご苦労なこった……そこまで、人に恨まれるたぁーーー思ってもみなかった……」


なかなかいい思いはしない理由だった。


「そこまでの事をしたのだ貴様はーーー罪の重さを感じるがいい……」



そう言ってジニアイは右腕を大きく振り被るーーーー

海斗はそれに目をそらすことなく、しっかりと終着点を見定め躱した


だが手の内を明かしたジニアイは勇猛果敢に体を海斗へと持って行く


身のこなしは確実に海斗が上ーーーそれを示さんとばかりに連続した攻撃を避けて行くーーーー


それに対しかなりの鬱憤が全身に溜まったのだろう

身、そのものを海斗にぶつけさすーーーー



「ーー!?」



「あいにく罪を背負う余裕なんて、背中にはもう無いんでなーーーーー」



しかしそれはあっけない最後を迎える


己の体の上に海斗が立っているのだーーーーーーー


それをいいことにジニアイの鉄塊に刀を突き刺す

丁度右腕の付け根部分ーーー僅かながらに動作にぎこちなさが発生する



「オォ……!? 貴様ァ……ッ!」




なぜだ……なぜ、どうやってもこのガキに勝てんのだ……!


気に食わんーーーーーーー気に食わんぞ……!



ここまでしたのだ……二年間も耐えたのだ……それなのに……!



「気に食わん……腹立たしいッーーーー!!」



「ーーーッ!」


上に立つ海斗の足を掴み真正面に投げ飛ばすーーー


終点は石壁   かなりのダメージを蓄積させる



「なぜ……なぜここまで追い詰められなくてはならんのだ!」

「貴様のようなものはいらん! 我が覇道の前にはいらんのだぁ!!」


石壁に打ち付けられ思うように動けない海斗ーーーーそれを好機とし止めを刺そうとするーーーーー



「ーーーーー……!」



だがそれはできなかったーーーー手が届く前に体が静止したのだ



「お前はいらなくとも……私達にはいる存在だーーーー」



後ろにはシェイラーー腕には剣、それがジニアイの左足に刺さっていた

海斗の危機に沈黙を打ち切ったのだ



「き、貴様まで……!」


「ここでそいつを消されてもらっては……困る」

「生きていてもらわねばーーーー」



静かに笑うシェイラ

それは前までの顔つきではない    覚悟を決めた顔でもあった



「……ーーーー!! 元はと言えば……! 貴様が承諾しておけばこうはならんかったのだ!!!」


ジニアイの裏拳が腹に沈み込むーーーー

それがたてた音は並大抵のものではなく



「ーーーーーグ……アァッ……!」



足は地面を離れ吹き飛んで行った


怒りが頭を支配する


「その綺麗な顔を潰してやるわぁ!!」



目の前が真っ赤に染まる


自分の行動一つ一つが滑らかになる


決して何も目の前に立ちはだかるものはなく




一人の女の顔に拳が飛んで行った

















「………ーーーーーカ……ァ……」


「……」


それはいきなり止まったーーーーー


急にエンジンが切られた車の止まり方をした




「……海、斗……」



ジニアイの背後には海斗ーーーー


心臓の位置に刀が顔を出していた



「……」

「……注意散漫だよ、閣下ーーーーーーそうやってころころターゲットを変えてちゃあ……」


「承諾云々の話じゃなく、遅かれ早かれあんたは滅んでた」



「……」



言葉に反応する動きは見えない



「……核を切った……もうあんたは動けねえはずだ」



「……」

「………小僧……」

「……そうか……私は、導き方を……間違えたか……」



口だけを動かし声を発するジニアイーーーー

だが声だけでわかる……悲しみで濡れた表情が見えた



「あんたは無我夢中で道を走りすぎたーーーーそこにゃあ前後左右、誰もいない」

「あるのは枯れ果てた地面と自分だけだ」


黒い眼差しを当てる

それは感情が一つしか混ざっていない目だった


「………そうだった……か……」




鉄の塊は完全に




「ーーーーー」




停止した。







ーーーーーーーーーーー


ーーーーーーー


ーーー







「またしても世話になったな……海斗」


「いんや、結局龍を退治したのはこいつらだし……俺はあんまり働いてねえよ」


言葉をかわすシェイラと海斗ーーーー


「謙虚ですね魔王様」


「姫、勘違いしないようにーーーーこいつは種馬変態魔王ですよ、これだけは忘れてはいけません」


「そうだね、どんだけ謙虚でも根っこの部分はド変態を養分代わりとして吸ってるからね」


「謙虚で変態で種馬って……救いようがないですねぇ……」


最初の時のように言いたい放題の悪魔達。


「あれ? 今大団円じゃないの? もりあがったり感動したりするところじゃないの?」


諍いや言い争いが絶えなさそうだが……


「……」

「よかったな、海斗……いい国の王になったじゃないか」


一人の姫として、シェイラはそう感じた。


「……」

「まぁな」




「さ、クエストも終わったことだーーーさっさと帰りたいだろう」

「この書類にサインしてくれ、それをギルドに持っていけばクエストを達成したことになる」


「あぁ」


そうか、こんな感じで終わるんだな……


まぁでも確かに成功したっていう証がなければ認めてくんねえかもしれないから……



『汝は王にーーーーーー』







「………」



なんか……王っていう単語がちらほら……






「………あれ……?ーーーこれ……」









「やったぞアノミア!! 遂に……遂に海斗が王になってくれたぞ!」


「やりましたねシェイラ様! いやぁ! この作戦はうまくいくと持ってましたよ!」



「……」



ーーーーやられた……これクエスト成功とかじゃなく………契約書だ……



「……」

「頑張ってくださいね、魔王様」











「くそったれええええええええええええ!!!!」









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