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     買い物は天気予報を見て計画的にしよう

 念願の双子が生まれた年、私は戦争のために出兵命令がくだされた。 その日は、妻が体調不良から回復した日の夜であった。 なにか、軽くごちそうでも、とつくった夕食を食べて間もなく、出兵の知らせが届けられたのだ。

 なにもいま届けなくとも、とは思ったが無理なは話だ。 国が国民の一人一人を目にかけることはできない。 しかし私らはそんな国のために命を張らなくてはならないのだから、つくづく割りに合わない関係だと思う。

 今日から2日後に、戦争相手であるシュラウを直接叩く部隊に配属されるらしかった。 我が国リナントから北上していけば、シュラウがある。 こんなに急なのは、2国のあいだに広がる、多少の起伏がある平原で、シュラウの主力部隊がこちらに向かって進んでいるとの情報があがったらしいのだ。 その途中にはリナントの小さな配属国がいくつかあって、そこを確実に潰しながら進んでいると。

 こちらはそれに対し、正面から耐えうる壁の部隊と、相手の主力部隊を東から叩く部隊、そして私が配属される奇襲部隊に分けられることとなった。 我が国の、遥か西からいくつも支流を広げている川の本流が、近くにまで流れていた。 蛇行するそれは、平原の、おそらく敵の主力部隊とあたる場所のすぐ横に流れていると予測された。 翼を持たぬ、厩戸らなどと言った生物も実戦投入する傾向が強いシュラウには、2つの部隊と川で挟んでしまおうという作戦である。 そのうちに、主力部隊が抜けきったシュラウを狙うのだと言われた。

 それが全て聞かされたのは、その日の翌日であった。

 命令がくだされた夜は、そんなことなど考えず、最悪自分が死んだとしても、なにか妻に残せるものはないかとだけ考えていた。 絵を描こうと思いたち、気づけばもうキャンパスを濡らし、紙をはっつける直前であった。 妻の言葉がなければ、どこまでも1人の世界にひたったまま、絵を描き続けていたのかもしれない。


「なにしてるんですか?」


「絵を……描こうと思って」


 なんでこんなときに、いきなり──そう尋ねるのは、妻にとって当たり前である。 正直に答えると、妻はうつむきがちに、「冗談でもやめてください」と暗く言った。 あまりに正直に答え過ぎたと反省しつつも、やはり絵は残したいと思い、筆をとった。

 降りしきる雨の中、コンクリートの道路の上に、ひらかれた傘がポツンと捨てられている──そんな構図が浮かんだ。 筆の動きははやかった。 背景は塗りきり、あとは傘の色だけだと、パレットで紫の色を混ぜつくって、筆を走らせるすんでのところで、また妻が声をかけてきた。


「紫で塗ろうとしているのですか」


 まもなく筆先がキャンパスにつかんとする直前に、止まった。


「なにか気に入らないか」


「私、黄色がいいわ」


 私のすぐうしろで立っていた妻を見上げると、口元を柔らかくさせてキャンパスを見つめていた。

 なぜ、と尋ねる前に、妻は口を開いた。


「私、一番好きな色が黄色なんです。 なんだか、背中を押してくれそうな、強く、前向きな力が含まれているような気がして」


 知らなかった。 彼女が一番好きな色が黄色だなんて、そういえば聞いたことがなかった。 絵によく振れている私が、そのとき初めて愛する人が、愛する色を知ったのだ。 よりによって、こんな日に。

 私は筆先の紫を見た。


「黄色……じゃあこの紫とは色そう──」


「色相環では真逆の色、でしょう?」


 知っているのか、という目を、身体ごとねじって妻にぶつけた。 妻は口元をおさえてほほえんでいた。


「知っていますとも。 私の愛する人が愛する絵……それをいつも近くに感じていれば、知識は身についていくというものです」


 そして妻は、机の上に重ねられた数冊の絵に関する本へ目をやった。 隠れて読んでいたのか。

 しかし恥ずかしかった。 愛する人が愛するなにか……それを、相手は自分を知り、自分は相手を知らなかったのだ。 そして、きわめつきに、「紫はあなたが好きな色でしょう? 真反対ですね」なんて言う。

 私はその罪滅ぼしのために、筆を洗い、黄色の絵の具をパレットに出した。


 翌日からすぐに準備と訓練、情報の開示が行われた。 シュラウは、こちらを本気で落とす気ではないだろうという見立てであったらしく、奇襲部隊である私たちも、建物を倒壊させたり、農作物に打撃を与えるだけでいいという方針であった。

 そして2日後に開戦と聞かされていたのだが、奇襲部隊だけはその前日に出るのだと聞かされた。 我が国の南からぐるっと東方面に曲がって、そのまま北に連なる山脈がある。 そこを丸一日かけ、もっともシュラウに近い場所で待機し、攻撃をしかけるのだと。

 山を北上している途中、平原のど真ん中でうごめいている黒い塊を見た。 あれがシュラウの部隊であると、すぐにわかった。 双眼鏡で見ると、前には大きなイノシシに乗る部隊と、後ろにはそれに負けんばかりの大きさを誇る犬のような連れている部隊、一番後方には歩兵がいた。

 あの大軍を、こちらが案じた作戦で潰せるのならいいのであるが、やはり私には心配であった。  なにより、妻のことが。 生まれて間もない子どもを2人も抱え、もし国にあれらがはいってきたらと思うと、背筋が凍った。


「家族が心配か? 問題ねぇって、こっちの主力にゃあ歴戦の将軍たちがいる」


 確かに、そこはまだ安心できるところではあった。 戦いを重ね、知る者たちはこちらの軍にも多くいる。 シュラウの軍を見て、息を詰まらせていた私に声をかけてくれた仲間の笑顔も、それが作っているような気がした。


 翌日──朝日が昇ったと同時に、腰の通信機に、本国からの開戦が告げられた。 私たちは山から出、シュラウへと一直線に駆けていった。 見張り台の奴らが騒ぎ立てるようであったが、手早く城壁に爆薬をしかけ、穴をあけた。

 できるだけ私たちは建物を壊し、農作物を荒らし、大きな被害をもたらそうと奮い立った。 部隊の中のほとんどが、逃げ遅れた一般市民にもやいばを振るったが、どうにも私はその気が起きずに、まわりの兵や動物と戦っていた。 市民をみると、妻を思い出してしまう。 だから兵以外を殺すなど、私には到底できぬことであった。

 私は本国への通信役を担っていたから、戦況を逐一伝えていた。 そして、これ以上攻めあげるとこちらが危なくなるであろうと部隊が判断したとき、引き上げる、と通信しようとしたのだが、どうにも翻刻の通信役と繋がらなく、戸惑った。 なんど呼びかけても応答がないのである。 仕方なし、とシュラウを出、リナント方面を見れば、かすかに、淡い灰色の煙があがっていた。


 私たちは急いでリナントへと戻っていった。 シュラウからの追っ手もいたが、降り出した小雨を肌で感じる頃にはいなくなっていた。 リナントへ近づけば近づくたび、煙の色は濃くなって、私の心臓を痛めつけた。

 リナントは、ほぼ壊滅と言っていいほどに瓦礫の山と化していた。 至る所から火が上がり、むせるほどの煙が広がっていた。 なにがあったのか、見当もつかなかった。


「おい! なにがあった!しっかりしろ!」


 部隊の仲間の声が近くであがり、駆け寄ってみると、まだ息がある兵が横たわっていた。 声も満足に出せる状況ではなかったが、彼は、何があったかを話してくれた。 近くを流れる川から、水陸生龍(水の中では蛇のように泳ぎ、陸では強靭な4本足で駆ける龍の一種)が、山からは歩兵の奇襲部隊が現れたのだと。

 話し終え、息絶えた兵を見、私はさっきから心配になっている妻のことで頭がいっぱいになった。 瓦礫が物語る過去の情景と、記憶とを照らし合わせながら、家に向かった。


 妻は、リビングがあった場所で倒れていた。 私が仕上げた、黒ずんでしまった絵を抱きながら。

 おそらくここら一帯は焼かれたのだろう。 ススが広がり、妻の服は焼け焦げていた。 やけども酷く、抱きかかえた絵と、一部の腕の皮膚がとけてくっついているようにも見えた。

 妻の身体を抱き起こすと、雨はとうとう本降りになった。


「……子どもたちは無事、ですから。 地下の部屋に、隠しました……」


 まだかろうじて意識があった。 命を持つには苦しすぎる痛みを感じながら、まだこの女は自分の子どものことを思っていたのだ。 なぜ、お前も隠れてくれなかったと問うと、妻は力なさげに微笑んだ。


「私も家にいないとなると……必ず子供達もバレてしまい、ます。 あの人たち、みんなを殺してまわってたから……」


 妻の顔を、なんども雨は打った。 涙はこらえていたが、とどめられなかった数的のそれが、混じっていたのか、いまとなってはわからない。

 とにかく、私は妻に生きていて欲しかった、無事でいて欲しかった。 子どもたちもそうだが、私にとって一番生きていて欲しいのは妻であった。 父親失格だとも思うが、自分の気持ちはいつでもそうだった。

 私はぎこちなく、絵を抱えているやけどまみれの手をにぎった。 妻は息をもらすように笑った。


「ごめんなさい、あなた。 あなたが描いた全部の絵を……我が子のように大切にしているのは、わかっております。 でも、この絵だけは持って逝かせて……?

 あなたが私のために描いてくれた、初めての絵、だから……」


 私の口から、このときには声が出なくなってしまっていた。 美しい風景を見たときのように、初めて愛しい人が産んでくれた子どもを抱えたときのように、喉が詰まって声が出ず、口はあわれにも酸素を求める魚のごとく開閉を繰り返していた。


「……だから、私、あなたにも、誰にも、この絵を……渡してあげない」


 妻は、シュラウの兵から、子どもだけでなく、この絵も守ったのか。 この絵は、腹を痛めて産んだ子どもにも匹敵するような価値を、お前は抱いていたのか。

 その尋ねも、答えも返ってくることなく、妻は息をひきとった。

 妻を土に埋めるまでの記憶があやふやで、気づいたら子ども2人を抱え、手作りの墓の前でただ膝をついていた。 妻の願い通り、絵とともに焼いて、ここに埋めたのは確かである。

 それからは、妻がかねてから、もっと賑やかな場所に住みたいと言っていた願いを叶えるように、あれから数年経ってできた中央街に転居した。



 スーパーのレジ袋に、買った食材を詰めていた。 なんだかいままでぼんやりと買い物をしていたような気がするが、それでも、必ず買う食材を買っているのは、我ながら流石だと思いつつも、どこか、代わり映えのしない日常を送っているのだと感じ、虚しくなる。

 レジ袋に全て詰め入れ、買い物かごを戻し、外を見てみると、降り注ぐ雨は激しさを増すところであった。



「私が聞いているのは、それだけです」


 バルは男から話を聞いてもなお、表情を崩すことはなかった。 同時に、こんな作戦で心を揺れ動かそうとしていたなんてと、若干の後悔を感じた。

 初めから、私たちが介入できる隙間などなかったのかもしれない。 だってあの人の胸には、いつまでも奥さんとの思い出があるのだから。 その奥さんの願いを、息子さんたちでもひきはがすことは困難の極みであろう。 やはり私たちが背負ってはいけない問題だったのである。

 雨が強くなってきて、うしろで海斗がさわいでいるのが聞こえた。 男も、「すいません、長く話してしまいました」と頭を下げ、足早に去ろうとする。

 しかしバルは、海斗のことを手伝おうと、駆け始める直前に、男を振り向き、呼び止めた。


「あなたの父親が行っているスーパーは、市街地から一番近いスーパーですか」


 男は、はてなが浮かぶ顔で、そうですと答えた。

 バルは礼を言い、海斗たちへと駆け寄り片付けを手伝い始めた。 あそこならば、片付けたあとでも、急げば間に合うと。



 雨はひどくなる一方だった。 家までなんとかあと半分のところまで来たが、さすがにこの雨の中、老体では走れない。 市街地に近づくにつれ、大通りから外れることもあってか人が少なくなった通りにある、シャッターがおりた店の屋根で雨をしのがせてもらうことにした。 シャッターを背もたれにして、腰をおろすと、あの頃には感じなかった関節の痛みを小さく感じた。

 年はとりたくない──人はそう言う。 私もそうだが、少し意味合いが違う。 単純に、「時が流れて欲しくない」のだ。

 時が流れなければ、出兵命令が届けられる前から時が流れなければ、あのまま幸せな時間を味わい続けることができたろうに。 雨もしたたり落ちることなく、ずっと晴れやかに過ごせられただろうに。

 おそらく、この雨は長く続く。 妻に出会った時と、同じ空模様だ……きっと当分やむことはないだろう。 何年振りだ、こうして、雨の中、なにかの店の屋根の下、膝に顔をうずめるのは。 妻と暮らしているときには、絶対にしなかったうしろ向きな行動。 どれだけ、あの存在が大切であったか、身に沁みる。

 虚しい気持ちだ。 これは、はたして、傘を求めているのか、妻を求めているのか……ただ間違い無いのは、なにか支えになるものが欲しいという色を、この気持ちはしているとわかるのみである。


「使ってください、これ」


挿絵(By みてみん)


 女の声をかけられ、私ははじかれるように顔をあげた。 銀髪の、赤と青の目をした女が、私に傘の柄をとれと腕を伸ばしていた。 ただ立って、こちらを見下ろす姿は、目の裏に、あのときの妻の姿を思い浮かばせた。

 屋根から半分だけでた傘を、雨はなんども打った。 女は全身を雨にさらし、みるみるうちに銀髪をしぼませていく。

 出す言葉を選べずにいると、女がさきに口を開いた。


「傘、もっていないのでしょう。 差し上げます」


 差し出してくれているその傘の色は、黄色であった。 奇しくも、妻が好きだった色であったのだ。


──私、一番好きな色が黄色なんです。 なんだか、背中を押してくれそうな、強く、前向きな力が含まれているような気がして。


 そう、妻は言っていた。 背中を押してくれそうな色を、彼女の傘はしていた。

 すると、すぐ横にある角の奥から、男の声で、誰かを呼ぶ声が雨の音の中、聞こえた。

 いまだ言葉に詰まっていた私に、ハッとして、なかば押し付けるような形で傘を手渡してきた女は、「では」と小さく頭を下げ、そちらへと走っていった。


「あ! おま、どこに行って……あれ? 傘は?」


「あー、なくしちゃいましたね。 だからいれてくださいよ」


「はぁ? お前勝手に走ってって傘なくすっておま、うえぇー! めちゃくちゃびっちょり濡れてんじゃねーか! くっつくな気持ち悪ィ!」


「私の傘使いますか?」


「いえ、大丈夫ですよ────」


 大きな会話をしながら、あの女は、連れとここから離れていった。 なんだったのだろうか、初対面のおいぼれに、なぜ傘を渡してくれたのだろうか。 疑問は尽きないが、黄色の傘を見上げると、妻の笑顔が目に現れるようで、なんとも言えぬ気持ちを抱いた。

 荷物の重さで痛む腰に鞭打ち、再び帰路に着いた。 今日は、傘がある。 あのときのように……妻の死に際を娶ったときのように、涙をごまかすことなど、できそうになかった。

 私は、帽子を深くかぶるように、傘を下げ、歩いた。



「いやー! めでてェな! まさかあれからすぐに転居してくれたなんてよ!」


 今日は晴天であった。 あれからしばらく雨は続いたが、ようやく今日、それが嘘だったかのような晴れ空が広がっていた。

 どうやら、あの親子問題は解決したらしいと、今日の朝、あのときと同じように伝書鳩でダゴンが伝えてくれたのだ。 手紙の中には、団子3割引のチケットが添えられていて、食後のデザート感覚で、海斗たちは彼の店に訪れていた。


「いまは、息子さんたちの家に、アトリエを構えて住んでいるようだよ。 よかったねぇ、3人の努力が実を結んだというわけだ」


 海斗は上機嫌で三色団子をほおばった。 「そんなにがっつかなくとも」と、シウニーも同じ団子を頬張り、飲み込んで口をひらいた。


「でも、ほんとにあんなので転居しよう、だなんて思ったんですかね?」


「間違いねーよ、俺のハイセンスな画力に心打たれて、占いの結果で決心したに違いねーよ。 二発の弾丸をはずすことなく心を射止めたんだなー! さすが俺!

 しかもその報酬ももらったし、こうして団子も食べてるし……いやー! よくやったわ俺! お前ら! 今日は焼肉でも食おーぜ!」


 また次の団子の串をつまみ、口に運ぶ海斗の横で、バルは静かにみたらし団子を食べていた。

 あれから初めて設けられた息子さんたちとの話し合いで、すんなりと転居の意思を見せたという。 なにはともあれ、魔王様の意見と同じく、よかった。 あの日で心を変えられたと思うと、嬉しいものである。


「あら、あんた……」


 ダゴンがそう言うと、海斗たちは、店のすぐ横に立つ、息子さんの姿を見た。 彼は、「お」と海斗が言うや否や、すぐ隣まで寄ってきて、頭を下げた。


「このたびは本当にありがとうございます。 みなさんのおかげです」


 その姿に、海斗は少しばかり面映ゆい表情になり、まぎらわすかのように頭を掻いた。

 そして男はバルに視線をやり、口をひらいた。


「すみません、バルバロッサさん……あの傘、バルバロッサさんのですよね。 父が、銀髪の、目の色が左右で違う女性からもらったと言っていて……。

 返そうと思ったのですが、あれをモデルに絵を描いていたため、持ってくることもできず……」


 バルは、そんなのいいと、手を振った。


「私にはもういりませんよ。 あれはあなたのお父様にさしあげたのですから、持たせてあげてください」


 男は、しかし……と呟くも、次の団子を口に運んだバルを見て、もう一度頭を下げて礼を言った。

 海斗は両者の顔を、戸惑ったように見た。


「え……? お前なにかしたの? っていうか傘なくしたんじゃなかったの? え、もしかして……俺の占い、問題経血にあんまり関係してなかったり?」


「いや、それはないと思いますよ」


 できる限り、バルは咀嚼音を出さぬよう口に手を当てて言った。

「では、僕はこれで失礼します」と、もう一度礼を言った男の背中を見送った直後、海斗はバルに抱きつかんばかりに問うた。


「いやお前聞かせろよ! あんときなにがあったあんだよ!」


「さ〜? それは私のみぞ知りますね〜」


「私も知りたいですよ姫! なにがあったんですか!?」


 バルは2人からしがみつかれようとも、表情を崩すことなく、さ〜? とシラを切り続け、団子を食べていた。



 息子たちが住んでいる家では、妻を亡くした男にあてられたいっすつは和室で、縁側がついている窓からは、やわらかな日差しが部屋に流れていた。 その日は、部屋の真ん中にすっと立つ、キャンパスを照らしている。

 描かれているのは、晴れた空の下、草原の上でたたずむ黄色い傘。 その絵の背中には、黄色の傘が、同じように部屋に転がっていた。

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