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もしも人間が魔王になったら  作者: キバごん
海斗不満爆発編
274/293

高望みはするな、痛い目を見る

海斗はバルの包帯をほどききった。 したら空洞になっているはずの瞳の上に貼り付けられる一枚の紙……。 「ドッキリ大成功!」 それにはそう書いてあった。 海斗は停止した。 え? なにが? と思って。

困惑を極める様子ーーーーただただその文字を反復して読んでいた。 すれば、力無く口を閉ざすバルが急に。


「今、もうハーレムは望まないと言いましたね?」


言って、むくりと上半身を起こして彼を驚かした。 流血の割に動きがスムーズ、怪我の割に痛みを感じてなさそうな素振り……あまりにも先ほどの現実から離れてしまった海斗はゆるりと尻餅をついた。 ラーファも彼に抱かれながら、目を大きく開いている。

それでも彼は彼女に応答しなければならないと思い、「あ、はい……」 と言った。 したらバルは跳ぶようにして立ち上がり、貼られた紙をベリっとはがしてルシファー達の方に近寄っていく。 その足取りはなんとも軽やかで。

はがした瞬間に見えた赤と青の美しい瞳、海斗はそれを確認してまたしても驚いた。


「いや〜! やっと聞けましたね〜」


「そうですねぇ〜……ここまで長かったですよぉ〜」


彼女の言葉に、堕天使は笑顔で返事した。 そして二人は手が届く場所まで近づき、サタンとアスモも 「ひっさしぶりに暴れたわ〜」 「うへへ……多少ドMから脱線してしまいましたけどねェ……」 と、先の緊張感や圧も無く集まる。


その光景を未だ呆然と見る海斗、ラーファ。 前者は混乱した頭を精一杯働かせて 「ど、どういう……?」 と一言つぶやいた。 小さいつぶやきは当然バルたちの耳には聞こえていなかったが、彼女らの話はその言葉と同時に終わったらしく全員が彼に視線を向ける。


「魔王様は……自分の言葉に責任を持つ男ですよね?」


「え……あぁ、まぁ……一応は……」


そして出された質問に戸惑いながらも返答するーーーーしたら、バルはうんうんと頷いて 「ですってベリアル! どうやら私達の演技は、魔王様の心に響いたようですよ〜」 と、全身血に濡れてぶっ倒れているベリアルに向かって言った。 すると、彼女はむくりと起きて、海斗を驚かせた。 目を細めて眠そうな顔で頭を掻きながら、彼女はバル達にのそりのそりと近寄って行く。


「あぁ〜そうかい? たまには私も、機械いじりの他にも役立てることもあるってこったね? それはなんだかむずカユイね〜」


やはりバル達同様痛がる素振りなく、普段の調子の喋り方。 どこかめんどくさそうな、でも相手の心の中を悟ってそうな感じ。 海斗達はそんな彼女を目で追った。

すると海斗をもう一度見たバルは、小さく不思議そうな顔をした。


「……なにをそんなに驚いているんですか?」


「いや……いやいやいやいやッ!! 驚くだろうよ!! おまっ、お前目ェ潰されて死にかけてたんじゃ……ッ!!」


「生きてますよ?」 両手を少し広げて何ともないアピールをする。


「そんなこと分かるわ!! ……え? いや、だってでも……その怪我は!?」


「特殊メイクですよ。 化粧がうまいはいっぱいいますからね。 その娘達に手伝ってもらったんです」


彼女は死にかけていたわけではない。


したら 「よっこらせっ……と」 そして新たな声がした。 バル達の向こうからで、彼女らの身体の隙間から見えたのは札生。 そうだ、あいつもいたんだーーーー海斗は唾を飲む。

彼も心臓を貫かれたのにピンピンしている。 でもなんで? おかしい、だって俺は確かにあいつの血を浴びたのに……そうも思った。


「て、テメェ札生! お前は分かりやすく死んだんじゃないのかよ!!」


「え? 死んでへんよ。 わてはこの通り正常に生きとるがな」


「でもお前心臓を……ッ!」


「あれは貫いてるように見せてるだけの、ただの飾りや。 あるやろ? ハロウィンの時に、フランケンシュタインの頭を真似るためのカチューシャ……そういう感じのヤツやったんや。 血も、あらかじめいくらか抜いて袋に入れてたんや」


札生はふところに手をごそごそと忍ばせ、ちらと袋を見せた。 中心部分が裂けていて、中にはいくらかの血が揺れていた。

「あれも多分効いたと思いますよ。 多少のふざけのあとにあんなの目に入ったら、さすがに誰でもこたえますからね〜」 微笑してそう言うはバル。 彼女はさきほどから饒舌になっているように感じられる。


「……じゃ、じゃあ! あいつらは!? シウニーに花音にアイナ!! あいつらはどうなんだよ!?」


立て続けに起こった衝撃的な光景ーーーーその中には、彼女らの姿があった。 アスモから守ってくれたシウニー、ルシファーから守ってくれた花音、アイナ……その三人は死んだと思っていた。 シウニーはさっきアスモから死んだと聞いた。 二人は目の前で息を引き取ったように見えた。

どうなんだ、そう聞けば彼女らはくすりと笑った。


「私達はここにいますよ〜」


と、ほぼ同時に扉の先から聞こえた声。 顔をずらしてそこを見れば三人……心配した三人の顔がひょこりと出されて、シウニーはこちらに右手を振っていた。

そして悟ったーーーーあぁ、こいつらもバルと同じでメイクだったのか、と。 顔をゆるっと脱力させると、三人は近づいた。 中でもシウニーは小走りで近寄り、あらぁ? 心配しましたかぁ? と小さく腰を下ろした。


「しかぁし! 私達は元気なのですよ! 死んだ、なんてことはまったくありませ〜ん」


「……お前、穴を開けられたって……二人は、壁に打ち付けられて……」 聞き、見たことを力なく言うと、目の間でゆるく微笑むシウニー。


「あれはアスモさんの嘘ですよ〜。 身体に穴なんて開けられてないですよ。 お二人は……」


「私達は背中にクッションを装備していた。 ベリアル殿が作った丈夫なやつをな……。 それにあの衝撃で死ぬほど悪魔や天使はやわじゃあない、お前も知っているはずだ」


顔に塗りたくられた特殊メイクの血を気にするように触るアイナ。 その少し後ろではこちらをチラ見しつつ髪をいじくっている。

これで洗脳メンバー全員がここに集結した。 死んだと思われた者達は全員活き活きとしているーーーーむしろ普段よりもずっと。 まだ呆然とした表情から変えられずにいると、バルがこちらをみてにっこりとはにかんだ。 あまり見ることのできない彼女の笑みがここで咲いたのだ。


「お前ら……だって俺を本気で好きになってたんじゃ……」


「魔王様……まだあまりこの状況が理解できていないようですね……あ、ラーファはこっちに来て大丈夫ですよ〜。 というか説明しなくちゃいけないからこっちに来てくれた方が助かります」


そのはにかみのまま、ラーファに向かって手招きをした。 数秒戸惑ったラーファだったが、普段と変わらぬ素振り、顔を見ると安全であることを少し確認したのか、俺の目をちらと見た。 そのあとは小さな足を不安げに動かして、俺の腕をほどいて、しゃがんだバルに抱きついた。


「理解って……なにがだよ……」 まだ全貌を見渡し切れていない俺は歯切りが悪い。


「魔王様が最近しきりに言ってることって、一体なんですか?」


え? と思って想像した。 書類整理のときは、うんうん、くらいしか返事していないし。 休憩の間は詮無い話をするくらい。 しきりに言っていることなんて……多分、ない。 あっても、めんどくせェ、くらいだけじゃないだろうか。

そうして思い出しつつ頭を掻き、不思議そうにしていると彼女は呆れた顔をした。 「やっぱり自分ではわかってないんですねぇ……」 とため息まじりに呟いてーーーー。


「いいですか? 魔王様は最近いっつも! 毎日五回くらいは言ってることがありますよ!! 覚えてませんかぁ? 『ハーレム生活が送りたい』 という言葉ですよ!」


うんざりと肩を落としたのだ。 周りのメンバーも、札生をのぞいて数回頷く。


「……うん、まぁそれは毎日言ってるね。 ため息吐くとき、ついでに言ってるね」 そして彼もこれには同意。 確かに言っている、それは認める。


「そのついでがどれだけ私達の耳にたこを生じさせてることかッ!! どれだけ痛くさせていることかッ!!」


言って彼女は鼻に人差し指を当ててきた。 むすっとした顔が彼の視界を支配する。


「一回くらいなら良いですよ! あぁ〜……いや、数日あけて言うくらいならば良いですよ! でも貴方は一日に何回も言う!」


「そんなに言ってるか〜……?」 そう言ったらバルが顔と指を離す。


「言ってますよ! 朝起きて書類を届けに行ったら 『あ〜、ハーレム生活送りた〜い』。 お昼ご飯食べるときに 『ハーレム生活がいい〜』。 ケツ掻きながら 『ハーレム生活〜』。 夜眠るときに 『ハーレムが〜』。 もう終わったと思ったら廊下にも聞こえる大きな寝言で 『こんな生活イヤ〜』……もうほんと、飽き飽きしてんですよ……」


閉口した。 こんなにも言っていたのか。 いや、確かに言っていたのは覚えていたが、そんなに言っている自覚はなかった。

しかし周りの反応を見ると、彼女が正しいらしい。


「そこで! 魔王様のその考えを改めるために、ベリアルに機械を作らせていたんですよ! ボタンを押した者を好きになるという演技をするためのガラクタをね! いつ彼女に相談の矛先が向かっても良いように!」


そしたら予想通り来たんだよね〜、ベリアルの楽しげな声が響く。

ーーあぁそうなのか、俺は騙されていたのか。

落ちきった肩をさらに落とした。 しかし気分が落ちきった海斗に、バルはもう一度顔を向けた。


「それじゃあ悪魔の約束についておさらいしましょう。 一度した契約はーーーー?」


「……絶対?」


「正解ですね〜」


そしてふたたびバルははにかんだ。 対して俺は真顔になった。

そうだ……悪魔との契約は絶対。 つまり俺は……この先ずっとハーレム生活を望んではいけない、そういうことになってしまったのだ。 理解した俺を見るなり、周りの奴らも小さく微笑んだ。


「でもよかった〜! 海斗はこれから一人の女と愛を育むことになるんだから……ッ! じゃあこれから私と恋しようね〜」 なにより花音が微笑んだ。 これからのことを想像したのかすごいとろけた顔になった。


「じゃあ…..俺はもうハーレム生活を……」


「望めませんね〜」


なんてこった……。 絶望した。

ハーレム小説なのにハーレムを望んではいけない……どういうこと……?


「つーかハーレム小説の主人公なのにハーレムを望めねェってどういうことだよォッ!! 俺は……俺は……ここまで不純なハーレム系主人公なんていんのかァ……!?」


「まぁまぁ、ヒロイン達の数的には、他の小説よりも多いと思いますよ? だからいいじゃないですか、こんなに可愛いヒロイン達に囲まれてるんですから〜」


「でもお前俺のこと好きじゃないじゃん、愛を感じてないじゃん」


「尊敬はしてますから」


笑顔だった。 内に少しのからかいを込めた笑顔をして、俺の右手をとり、悪態をたれる俺を立たせた。

そして俺の上着を整える……普段は絶対にやらないことだ。 それが若干の気持ち悪さを覚えさせる。


「だからね? いいじゃないですか」


でもよォ……と、言葉を紡ごうとした時、バルが 「でもじゃなくっ!」 そうバツンと遮った。


「多くの女の子に囲まれて暮らすこと自体が稀なんですから! それをなんとか味わってください……ねっ?」


そして俺の左肩をドンッと強く突いた。 すると力なく立っていた俺の足は簡単に揺れ、後方に身がふれるーーーーこれは尻餅をついてしまう、そう思って右足を後ろにやって踏ん張ろうとした。


が。


右足の下に地面がなかったのだ。


「は?」


無いと理解できても足は無抵抗に沈んでいく……何故か不自然に、正方形に切られたレッドカーペットもつられて沈んでいく。 シワを作って足を飲み込む感触が伝わった。

身体も支える柱なく傾いて、前にいるメンバーの顔が下がって見えなくなった。 見えなくなる瞬間にハッとした顔をとらえたが、そこから助けの手など伸ばされるわけなく。


「アァァァァァァァァァァァァッ!!!!」


俺は落ちていった。


「……あっ」


そしてアイナは思い出した。


「そういえば私……完成させた落とし穴をいろんなところに作ってたんだった……」


ーーーー海斗が落ちた落とし穴。 その中には無数の針と、強力な酸が満ちに満ちているのだ。



ーーーー



「俺はこんな状況になってもハーレムを望んじゃあいけねェのか……」


昼間の強い、しかし心地良く思う日差しがレースカーテンを貫いて部屋に鎮座した。

その壁際のベッドに、枕を高くして寝るのは海斗。 学校も無いまっ昼間ならよく見られる光景である。

しかしいつもとは違うところがあり、それは彼の全身が包帯でぐるぐる巻きにされているということ。 真っ白なその身体は、まるでミイラ。 エジプトのどっかのピラミッドにありそうだ、そう見る者を思わせる。


「不運だったですね〜……」


バルはその横に置いた丸椅子に座って見ていた。 そして 「はい、これみんなからのお見舞いのお菓子です」 と言ってクッキーやらチョコやらが入った正方形の缶を寄せてくる。 いらねェと押し戻したら、自分の膝の上に置いてクッキーを一つまみ。 ぽりぽりと食べ始めた。

したら至福の時間が下の上でのみ踊り狂ったのだろう、幸せそうな顔をして一気に飲み込んだ。 そしてもう一枚同じクッキーを取って食べ始める。

すると 「でもあれでしょう? 女の子が近くにいつもいるのは幸せでしょう?」 と言ってきた。 俺は少し考え 「まぁ、そうかもしれないな」 と返した。 そうでしょうそうでしょう、じゃあもっとその幸せを味わってくださいね〜、二枚目のクッキーを飲み込んだ。


「あっそうだ。 魔王様に渡さなくちゃいけないものがあるんですよ〜」 バルは机に近づいて、上に置かれてある一枚の書類を掴み取って戻って来た。 なんだろうか? はてなを浮かべていると、手をあまり動かせない俺の目の前に、バッと表面おもてめんを見せてきて。


「これ、城内を壊したりしちゃったやつの修理費です」


一億八千万。 最後の方にそう書いてあった。


「やっぱり幸せでもなんでもねェェェェェッ!!!!!」


ハーレムなんてもうこりごりだ、こいつらでは幸せなハーレムなんて形成できない。 俺はあれだけ望んでいた生活に蓋をした。

これで 「海斗不満爆発編」 は終了です。

と、ともにご報告です。 しばらく次話投稿は控えさせていただきたく思います。

というのはですね、これまでの話を見返したらすさまじいほど物語がなっていない、キャラクターができていない、そう思ったので、これまでの話を改稿していきたいなと思っているのであります。

もう、一話からまるまる全部。


あまり流れが変わらない話もあるかもしれません。

めちゃくちゃ変わるのもあるかもしれません。

もしかしたら途中で新キャラが出てきたり、死ぬはずのキャラが生きて章を終えたりしちゃうかもしれません。

まぁキャラが減ることはないのかな、と思います。


そういった大規模な改稿をしていきたいと思いますので、新しい話はしばらく無しと! いうことであります。

もう少し深く言えば、次話投稿をしながらの改稿は無理だったということですね。 えぇ......。 キバごん無能。


また、改稿が終わった話はあらすじ、活動報告の方で報告させていただきますので、宜しくお願い致します。 

そしてキャラクター紹介も、各章が終わるたびに挟んでいきたいですねェ! 立ち絵ありで! 設定も練りこんで!!

最終的には改稿前の話も、別の小説として載せたいと思っております。


最後に、何度も言いますが、私は失踪はしませんので。 失踪するときは私がお星様になった時くらいでしょう。


ではみなさん、お楽しみに。

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