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もしも人間が魔王になったら  作者: キバごん
中央街騒擾編
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第百六十七話 結果が分からなくてもとりあえず意見があるなら言っておけ

「魔王様〜。 はい、これ。 情報一覧です。 目を通しておいてくださいね〜」


現在昼過ぎ。

昼食を済まし、十分な休息をとった時間帯。

海斗は今日も今日とて自室で書類整理を行っていた。

ボールペンを書類の上で滑らせ、次々に必要なものを書いてゆくーーーー

その行動はもはや慣れたもの。

最初こそ手こずっていたが、今となっては少ない時間で多くの書類を読み上げることができるようになっていた。


そんなスキルが目に見えてくることに感動しつつ書類を読み進めていく海斗に、バルが入室し、声をかけた。

なにやら彼女は十枚程度の書類を持っているようであった。


「……情報一覧? なにそれ。 聞いたことないんだけど。 新手の仕事?」


「仕事といえば仕事です。 なんせ魔界やら他の世界の情報が書き記された書類なんですからね。 国を担う魔王様にはちゃんと読んでいてもらわないといけないんです。 二、三ヶ月に一回は出されるものなんで、これからも宜しくお願いしますー」


「今になってそんな重要なの持ってくんの? なんで今?」


魔界や他世界の情報が記される書類。

しかもそれは二、三ヶ月に一度発行されるという。

確かに、一国を担う王なら読まなくてはならないものだ。


しかし、それならばもっと前に渡されるべきではないだろうか?

まだこの国に来てまだ一年経っていないとはいえ、少なくとも十ヶ月は経っている……一枚や二枚、渡されていてもいいと思うのだが……


「じゃあ魔王様は自分が紙一面にでかでかと反乱者の如く書かれている様を見たいんですか?」


「いやいいです。 すいませんでした」


彼女が海斗に見せなかった理由が、明確に存在していた。

それは海斗がその書類に書かれていた時期があり、それを見に入れさせたくないというものであった。

彼は魔界の魔王と戦ったーーーー契約を破らせるために。

故に彼を、魔界は反乱者として捉えたのだ。


魔王になってから、魔王らしくない立ち振る舞いを続ける海斗だが…………それでもこの国の住民にとって彼は英雄だ。

中でもバルにとっては自分を救ってくれた恩人ーーーーだから見せたくなかったのだという。


それならば、彼女の気遣いに感謝をしなければならない。


「でも大丈夫ですよ。 この書類は魔界が魔界限定に配っているものですから。 他世界にはそこまで広げられてないですよ〜」


「そうか……それは良かった。 国のイメージに関わりかねないからな」


「まぁ天界くらいには広まってるでしょうけど」


「一番知られちゃいけねェとこに知られていやがったァッ!!」


天界が一番ダメ。

神に反乱者と捉えられたら何をされるか分かったものではない。

今後の人生に一抹の不安を覚えた海斗であった。


「……」


胸中にそれが重い浮かび上がっても尚読み進めていく海斗。

国に関わることならばいち早く頭に入れておかねばならない。

そんな不安が、読まないという行為に繋がることはない。


……ただ、読み進めていくにつれ、様々な事が書かれていることに気付く。


特に 『犯罪』 に関して。


経済面での潤いや物流関係、同盟国の関係良し悪しなどについても書かれているのだが……特に犯罪に関してはとても多かった。

書類の約七割といったところか。

やはり国だけではなく、世界にも悪影響を及ぼしかねない事象だからだろうか。

その事に関しては多く書かれていた。


「…………この……これはなんだ? やけにこの四つの名が大きく書かれているが……」


「え?......あぁ。 それはあれですね。 より一層の警戒をしておいた方がいい犯罪者達の名前ですね」


すると海斗は一枚の書類に目を止まらせた。

いや、目を止まらせるしかなかった。


そこには大きな字で、四つの言葉が書かれていたからだ。


『羅刹』  『暴君』


『女王』  『角龍』


それらは四角の頂点に位置する形で書かれていた。

そしてその下には 『首を取れ』 との字が。

どうやらこれらの首を取って見せたものには懸賞金が送られるらしい。


「その情報の書類に書かれてあるものって、大体一回か二回書かれたらもう書かれなくなるんですよ、当たり前ですけどね? 世界の状況は流れるのが早いので。 でも、その名前だけずっと書かれてるんですよ」


「いつから」


「えと、確か…………二年ちょっと前からですかね? その時からずっと書かれてるんですよ」


二年前からーーーーずっと。

その言葉に、ますます海斗はこれに興味を持った。


「彼らは 『最強の犯罪者』 と言われています。 彼らが動けば、それは天変地異と何ら変わらず、億の兵をぶつけても崩すことができない集団……と謳われています。 これだけは、他世界にも広く知られてると思いますよ」


「億って……四人で億を倒せるのか?」


「いえ、四人だけじゃなかったはずです。 それぞれ四人の下についている人もいたはずです。 えと……『闇医者』 とか 『狂気』 とか……あぁ、あと 『炎魔』 とか聞いたことありますね。 その人たちを合わせれば、約十何人いたはずですよ。で、その四人はそれらを統率する四天王という事です」


バルは自分が持っている知識を全て出してくれた。

なるほど、最強の犯罪者ーーーー

彼らは世界に嫌悪され、恐れられ、また、捕らえられようとしている。


「最強の犯罪者ねぇ……そんなん来たらこの国も終わりだね。 終わり終わり。 成す術なしだ。 来ない事を祈るしかねェな」


「そんな〜。 戦ってくださいよ〜。 魔王様もすごい実力者じゃないですか。 大丈夫ですよ。 その際に戦って生贄になってくれれば」


「お前を生贄にして逃げるわ。 そもそもそんな奴らに俺が敵うわけねェだろ? もっと違う犯罪者ならまだいけるかもしれねェけどさ」


「そうですか〜? でも確かに魔界の犯罪者とか変なの多いですからね〜。 ほら、このブラジャー泥棒とか、さっきのと雲泥の差ですよこんなの。 恥ずかしいと思わないんですかね?」


海斗が持っている書類の一枚を取り、そこに書かれてある文章を指差すバル。

そこには彼女が言った通り 『ブラジャー泥棒 中央街に現る』 と書かれていた。

確かに変だ、最強の犯罪者とは比べものにならないだろう。

こんな奴が来ればまだ対処の仕方はあるだろう、そう海斗は感じた。


「そうだな。 そんな奴ならまだ戦えそうだ」


そして海斗は全てを読み終わったのか、パサリ、と書類を机に軽く投げ置いた。

紙は一枚ずつずれて着地し、短い川のように形を成した。

それにバルは手をつけず、海斗の方に目を当てていた。


「でね? 魔王様〜。 私小腹が空きましたので、中央街に行きません? なんかおごってくださいよ〜」


仕事の休憩だと思って〜、と続け、彼女は机を伝い、海斗に近づいていった。


「行かねェよ……お前の小腹は普通の空腹と変わらないだろうがよ! つられて俺も買っちまうし、行かない! 無駄な出費が増えるだけだ!」


「行きましょーよ! 大丈夫! 先っちょだけだから! 食べるの先っちょだけだから!」


「なんの先っちょだよ! 行かねェって……! ちょ、絡みついてくんな鬱陶しい!」


いいじゃないですかいいじゃないですか、と彼女は連呼し、海斗に絡みついてゆくーーーー

蛇のように、時を重ね続けて家を飲み込むツタのように、的確に絡みついて離そうとしない。

彼が力を込めて引き離そうとしてもーーーー動かない。

完全に彼女に飲まれてしまっている。


「ク……ッソォッ! なんでお前は……ァッ! ダァァァッ! 分かった! 分かったから! 夜に行くぞ夜に! そしたらエレイナの負担も減るし! 夜に行くぞ! 分かったな!?」


「やったぁ! 魔王様イケメン大好きー!」


晩御飯は中央街で食べることとなった。

今行くよりも、夜行った方が、調理斑を受け持つエレイナの負担も減ると考えたからだ。

その言葉を聞き、自分の意見が通ったと分かったバルは嬉嬉として、より一層絡める手足の力を強めた。


「いだッ! いだだだだ!! 離せやお前……ッ! もういいだろうがァッ!!」


そして二人は、夜、中央街へ向かうことになったーーーー

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