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もしも人間が魔王になったら  作者: キバごん
中央街騒擾編
175/293

第百六十六話 雪山に行く際は食料を余分に持っていけ

六話構成ーーーー六話目

時間が経つにつれ、降雪は激しさを増してゆく。

これまでも白の世界であったのに、ますます白さが足されていくのだ。

その上灰色が重なり、天候の崩れを表している。

こんな地に長くいたくはないーーーーできるだけ早く帰りたい、そう全員が思っていた。


その思いは届き、救いの手が舞い降りた。

アスモデウスがそうだ。

彼女は救助隊の一人として構成され、こうしてシウニーの危機も取り払った。

これで帰ることができるーーーー誰もがそう思った。


……だが。


「やっぱりかまくらっていいですね〜。 風情があって」


「洞穴とか気味悪くていけませんからね。 姫が感じるように、こうしてちゃんと手で作った住居がいいのかもしれません」


「……」


「そうですね。 そこだけは貴女と同じ意見です。 こうして……ね、海斗と……うん」


「お腹すきました。 お餅ないですか?」


「右に同じく」


帰っていない。

帰っていないどころか、一箇所で声を反響させている。

この吹雪いている世界で、賑やかそうな声を響かせている。

その声が生み出されている場所は、かまくらの中ーーーー

全員が窮屈さを感じないように、少し大きめに作ったそれの中で、皆、思い思いに言葉を発しているのだ。


「いやあの……俺帰りたいんですが」


そこで海斗が声を上げる。

他の者達と違い、少しうんざりしているようであった。


「はい。 帰りたいですね」


「帰りたいですねじゃねェよ! なんでまだ帰れてねェんだ! もういいよ! 寒いのはもうこりごりなんだよ!!」


「そんなこと言ったって……アスモも迷ったんですからしょうがないですよ、ね〜」


「あはは……ごめんなさい魔王様……」


アスモも迷ってしまっていた。

救助隊に組み込まれていた彼女も迷い、また、迷っていた彼らに加わっただけだった。

帰っていない理由は、それであった。


「なんでお前も迷ってるんだよォッ! バルとかならまだありうるけどお前が何故ェッ!?」


「風評被害です!」


「すいません……数分前には一つの隊として魔王様達を捜索していたのですが……遠くから微かに悲鳴が聞こえたもので、いてもたってもいられず……で、勢いよく飛び出して、はぐれてしまったんです」


国の方向へと飛び立とうにもコンパスがないので……と、付け足した。

彼女が聞いた悲鳴は、熊から逃げる際にあげられたものであったーーーーその悲鳴を頼りに飛んで来て合流できたのだ。

……しかし、その出来事が発端に、彼女は土地の方向感覚を失ってしまった。

慌てたことにより、頭に入っていた位置情報を全て捨ててしまったのだ。


「……助けてきてくれたのは……嬉しいけど……」


「まぁいいじゃないか海斗。 アスモ殿は良心的にこちらへと来てくれたのだ。 そして良心的に迷い、良心的に我らと同じ境遇に立ち、終いには良心的に救助することを放棄したのだからな」


「感謝してる感一切ないんだけどォッ! 俺よりも根に持ってるんだけどこの従者!」


「とても情の厚い方だと感じました。 まさかご自分も迷ってみせるとは」


「遠回りに非難してるけど!」


「でも魔王様は人生に迷ってますからね。 大丈夫です、道に迷っていてもその上がいるので」


「そうだよ! 俺は迷ってるよ! ここで俺が犠牲にならなきゃアスモが責任で押しつぶされそうだから底辺に回るよ!」


数人がアスモのフォローに回ったが、その仕方が一切フォローになっていなかった。

これ以上フォローすればアスモの心にヒビが入ると感じた海斗は、状況を少しでも進展させる言葉を放った。


「一番重要なのは、もうここから動かず、救助隊を待つことだ。 しかし、見つかるまでに長い時間がかかるという可能性は十二分にある。 そこで、何か暇つぶしをしようと思うんだが……誰かいい案持ってないか?」


海斗があげた話題はこれだ。

どうやってこの極寒の地で、救助されるまでの間、どうやって耐えるか、だ。

それがあるか無いかで気の持ちようは随分と変わってくるだろう。

何もしなければ、体力だけではなく、気力も失ってしまう。

彼はそれを回避しようと考えたのだ。


「あ、では私、いいか?」


ここでアイナが手を挙げた。

海斗の問いかけに彼女あり。

フォローの仕方はどうかと思うが、こういう時はしっかりと率先して考えてくれるのだーーーーそう海斗は胸中で感嘆の意を生んだ。


「普段話せないような事を話す……というのはどうだ?」


「あ〜。 それいいな。 じゃあ今から地位はあまり関係無しで、いいな?」


アイナは、話の種は問わない話をしようという案を出した。

それはいい、こういう時こそ、そういった普段の生活には無いものを持ってこようと、海斗はそれに賛同した。

他の者達も海斗と同じく、頷き、賛成した。


「じゃあまずは提案者の私で…………」










「皆、どんなパンツを履いているのだ?」


「クソしょうもねェ話題だったァッ!!!」


開幕の話題ーーーー履くパンツの種類。


「いやだって気にならないか? もしかしたら自分が履いているパンツは世間と違っているのかもしれないのだぞ? 乙女なら気にする」


「お前はパンツの種類はいいけど吐き方問題あるから! 別に紐パンはいいから!」


アイナのパンツは 『紐パン』。

おそらく黒。

いや、絶対的に黒。

何故彼女が履いているパンツが紐パンなのか、そして何故色まで分かっているのかーーーーそれは普段の彼女の格好を見ればよく分かる。

彼女の服は、両腰部分が空いているデザインとなっているのだ。

そこからくくっている紐が顔を出してしまっている……しかも彼女はそれを恥ずかしいとも思っていない。


「わ、私はくまさんのパンツ履いてます」


「私はうさぎさん……」


続けてラーファとエリメが口を開ける。

そこから出てきたのは、なんとも女の子らしい言葉だった。

国には優秀な裁縫師がいるのだ。

彼女は様々な衣服を縫い上げるーーーー海斗の魔王服も一例だ、しかもそれをたった数時間で完成させたのだ。

しかも彼女は、国の子供達の衣服も作っている。

そのパンツも彼女が塗ったものであり、その上市販で売っているような動物の刺繍が一点に施されたものではない……しっかりと風景までも縫い上げているのだ。


「うんうん。 二人は可愛い感じだな。 だからアイナにはあんまり参考にならないんじゃ……?」


「あ、私最近くまさんパンツ履きましたよ〜」


「履いたのォッ!? お前がァッ!?」


二人に続いてバルも同じ言葉を出した。

衝撃的だった。

子供ならまだしも大人のバルが履くなんて……しかも役職は姫。


「あれ結構はき心地いいんですよ〜。 楽ですし」


「えぇ……それでも、なぁ……」


「なんですか? 何か文句でも? 全く……男性の方は姫という女に期待を求めすぎなんですよ。 いつも完璧だと思ったら大間違いです」


「そ、そうですか……じゃ、じゃあシウニーは?」


海斗の頭の中に、うまいこと返す言葉が浮かんでこなかった。

故にあやふやな返しとなり、他の言葉を出すように促した。


「私ですか? わ、私は……女性が履くごく普通のパンツしか履きませんよ……でも、そうですね……色は赤とか、白とか……今は白を履いてますね……」


「おぉ。 まな板キャラと被せて白か。 すごいな」


「ここで服を脱いだらまな板の白さと相まって全裸に見えるんじゃないですか?」


「見えませんねェッ! 私まな板そのものじゃないんで!」


シウニーは赤か白ーーーーそして今は白。

キャラ性としては最高のものだ。

彼女がそこまで考えてるいるとは……圧巻の一言である。


「海斗、私はピンクだぞ。 いつでも行為に走れるように毎日勝負下着だぞ海斗襲って」


「二人はどうなんだ?」


「あぁ無視! しかし華麗にスルーを行う海斗の顔、私は嫌いじゃない……!」


花音はスルー。

絶対的スルー。

スルーした後に、海斗は姫騎士二人に話をふった。


「私達か……? フッ。 聞いて驚け。 私達は今、ノーパンだ」


「ノーパン!? 雪山に来たのにノーパン!? いいのそれ!?」


「我らは姫騎士だぞ……? どんな時でも 『くっ、殺せ!』 状態になれるように準備万端状態。 もう誰が言おうと最強最かわ決定だな」


シェイラは、履いていないと言った。

その理由の真意はわからないが、とにかくノーパン。

騎士ならばノーパン。

それ以外ありないよノーパン。

彼女はそれがさも当然であるかのように、強く語った。








「私、履いてますよ」


「ーーーー」


ここで彼女の従者、アノミアが口を挟んだ。

私、履いてる。

姫騎士だけど履いてる。

くっ、殺せ状態になるかもしれないけど履いてる。

そう言った。


「あ、履いてるんだ」


「履いてますよ。 履かなくてどうするんですか。 やはり下着は履くものですよ」


アノミアは、そう言い切った。

仕えるべき人の明言をバッサリ切ったのだ。


「…………もう誰も信じない」


結果シェイラはふてくされた。


「いや大丈夫だって! ノーパン良いって! めちゃめちゃ良いって! な!? アノミア!」


「は、はい! とても良いです! いやーやはり姫は先のことまで考えてるなすごいなー!!」


「やめろォォッ! 恥ずかしくなってきたんだ! ノーパンの私を見るなァッ!」


シェイラは恥ずかしさから暴れ出す。

抑えようにも鍛え上げられた彼女を容易くは止められない。


「だからーーーーあ、そうだ! アスモ! お前ノーパンだよな? 色欲ってやっぱりノーパンだよな?」


そこで海斗はアスモに助けを求めた。

気付けばアスモだけ下着の事を聞いていなかった。

たとえ彼女が何を履いていたとしても、空気を読んで 『自分もノーパンです』 宣言をしてくれれば、仲間が増える。

その仲間意識を持たせることが狙いであった。

それさえあれば暴走も止めてくれる……彼はそう思ったのだ。


「いえ、私は黒のTバックですよ」


「アァァァァァァァァッ!!! やっぱり私だけなんだァッ! ノーパンは私だけなんだァッ!!!!」


「ガァァァァ! 誰かこいつを止めてくれェッ!!」


残念。

アスモはTバックだった。

色欲を司る悪魔ーーーー流石と言えば流石であるが、そこはノーパンにして欲しかった、というのが彼の本音。

結果、暴走の歯車を早めてしまった。


さて、そこで、こんな恥ずかしいことが、意中の男性の前でばれてしまった女性がとる行動とは?

答えは簡単。

いたって普通。


「お、お前だけはーーーー!!!」


「ーーーーえ?」


ヒョイ、と海斗は彼女に持ち上げられる。

彼女は出入り口がある方に向いている。


「忘れてくれェェェェェェッ!!!」


ボッ! という音を発し、海斗は空中に投げられた。

ロケットのように、ミサイルのように。

彼はとてつもない勢いで飛んで行ったーーーー


そうだ。

彼女がとった行動は、海斗をこの場からどこかにやることだった。



ーーーーー


ーーーーー



「ぅ……アスモ様はどこに行ったんだ……!?」


「アスモ様ーーッ!」


同時刻、救助隊は海斗達と突然消えたアスモを探していた。

諦めることなく、彼らを探していたのだ。

リーダー的存在であったアスモが消えたのにも関わらず、彼女達は心を折ることなく捜索を続けていたのだ。


しかし、探すと言ってもどうすればいい。

位置情報が送られてきた場所に行っても姿は見えず、あるのは雪に刻まれた薄い足跡だけ。

捜索は困難を極めた。


「くそ……ッ。 諦めてはならん! もっと奥に進むぞ!」


アスモがいなくなった今、前に出て隊をまとめ上げる悪魔がいた。

彼女は隊全体を鼓舞し、捜索を続けようとしていたーーーーその時。


空から何かが飛来してくる。

突然。

雪山にはないと思われる物体が飛んできているのだ。

しかし彼女達はそれに気付くことなく、歩こうとするーーーーそして。


ズボォッ!

という音を上げて、彼女達の目の前に積もった雪に突き刺さったのだ。


「な、なんだ!?」


その突き刺さった物体は全体的に黒い衣服を身につけており、黒と赤のシューズを履いている。

突き出しているのは二本の棒ーーーー力無く、天を向いていた。


「なんでしょうかこれ……」


「謎ですね……」


皆それを見て口々に疑問の声を発した。

それは当然である。

急に目の前に何かが降ってくればそう思うもの。


「何だろうか…………あれ?…………っていうかこれ……」


しかし、先頭に立つ悪魔はそれを見て、何かを頭に浮かばせる。









「……魔王様……?」


それは海斗だった。

この事象から、飛んできた方向、考えられる飛距離などを考察し、彼らは救助されたーーーー

終わり

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