第百六十二話 自然の力を舐めたらアカン
六話構成ーーーー二話目
「被告人は、些細なことで喧嘩し、周囲をめちゃくちゃにした上に、超巨大雪玉を直径10センチにした。 挙句それはコテージを爆発させるまでに至らしめた…………何か言う事は」
「「ありません…………」」
美しい白銀の世界に、一箇所にだけ赤黒く燃え盛っていた。
それはもくもくと煙を立ち昇らせ、寒さ溢るる空間に熱を伝わらせる。
その燃やす材料となっているのは、コテージ。
海斗達がこの旅行で泊まるはずだった建物である。
しかしもはや原型はなく、ただ炎を生み出す装置とかしていた。
「どうしてくれんだ? これ。 泊まるところねェよ。 キャンプファイヤーしかできねェよ」
「あ、あの……海斗、これはだな……大掛かりなピタゴラスイッチだと考えて欲しいんだ。 それの収録だったんだ、しょうがなかったんだ」
「全くギャラが発生してないんだけど、むしろマイナスなんだけど。 ほら見ろー? シウニーちゃん泣いてるぞー? 雪だるまが壊れちゃったって泣いてるぞー?」
「うぅ……私の 『高倉健EX』 が……」
「ほら名前までつけてかわいがってたんだぞー? それが不器用に大きくなって不器用に転がって不器用にコテージ爆発させちゃったんぞー? どうすんだー?」
「ゆ、雪で家を作ろう海斗! 大丈夫! 幼馴染パワーでいける!」
「お前どんだけ幼馴染設定に命綱託してんだよ!! 今となっては効力ゼロだよ!!」
海斗はコテージ爆発の元凶となったアイナ、花音の二人を正座させている。
彼女達は自分の罪の重さにたじろぎつつも、なんとか免れようと、次の進展に向かうための一手を模索していた。
しかしその努力もむなしく、現実は高く彼女達の前に立ち塞がったのだ。
海斗もそれにうんざりする。
ここは、国から離れた土地。
バル達の翼があっても半日はかかる。
それに飲み物も食べ物もほとんどコテージの中だった……途中で空腹に襲われてしまえば……そう考えるだけで恐ろしい。
しかもこの寒さにさらされているのだ、身体も普段と違って思うようには動けないだろう。
「ったく……何か使える魔術とかないのか、バル」
そこで彼はバルに望みを託した。
ここまで来てしまうと人間の力ではどうにもできない。
かといって悪魔の騎士団長アイナにも、天使の騎士花音にも、この通りポンコツなので頼むことはできない。
シウニーも雪だるまを失った喪失感と、まな板であるという観点から見て何もできない。
ラーファとエリメも悪魔ではあるが、それ以前に子供であるーーーー無茶はさせられない。
シェイラもエウニスもツワモノであるのは間違いないが、海斗と同じく人間であるために期待は薄い。
ならば、国の頂点に君臨しているバルバロッサーーーー彼女に託すしかない、という結論に至った。
彼女は海斗の後ろに立っていた。
「ほうでふねぇ〜。 まぶは、このお餅でふね〜」
「ほう、餅を使って起死回生を狙う、と。 流石バルよ。 よく周りを見ている」
「えへへ〜。 褒められましたよ二人とも〜」
「ふごーい」
「ふごいふごい。 誰も真似でひなひ」
「餅も姫の座も没収っていうことで」
「ごめんなさひ」
ーーーーー
そうして、全員、新たなかまくらを作り、その中に身を置いた。
温度はさほど変わらないとはいえ、風にさらされるよりかはマシだ。
その中で、なんとかできないものか、と全員で考える。
考え、考え続けるーーーーしかし、出てくるのは何かがないとできないものばかり。
海斗の持つ、人間界と魔界を一本の通路で繋ぐ鍵を使う……のも、鍵本体が城に置いているのでできない。
コテージをもう一つ作る……というのも、材料がないのでできない。
木はたくさんあるのだが、そもそもどうやって建てるのかわからない。
しかもこのメンツだ、何が起こるか分からないし、仮に奇跡的に建てられたとしてもその時はもう既に日にちが変わっていることだろう。
「誰か木遁の術とか身につけてないの……?」
「そんな神みたいな能力なんてないですよ……次元超越して初代様に頼み込んできてください」
「はぁ……何が寂しくて、旅行でサバイバルしなくちゃいけねェんだよ……」
沈みきってしまっている。
打開策を探さなくてはならないのに、脳がそこまで機能しようとしていない。
全てがマイナスに動いてしまうのだ。
「そんなにクヨクヨしてはならないぞ海斗。 姫騎士的に言えば、ここが見せ場。 何かを進展させようと皆で協力し、打ち勝っていくというのが本物の騎士であり、生物である。 ねぇ? 姫様。 貴女はいつもそう言っておりましたよね?」
ここでアノミアが口を開く。
それを聞いてもあまり心は動かないが……彼女の言う通りであるのは確かである。
いつまでもコテージ爆発に尾を引かれてはならない。
それを指し示すために、彼女は声を大にしたーーーーそして、彼女は自分が最も尊敬する女性、シェイラに目を向けた。
「いやそうでもないぞアノミア……たまには諦めが必要なこともある……そう。 飛行機が墜落するとき、手で飛行機を支えることはできんわけだ……それと同じだ」
「急にネガティブになってるんだけどォッ!! アノミアが信頼する姫像皆無なんだけどォッ!!」
「いや、だからな? 海斗……世界は私達がいようがいまいが回っていくんだ……万の木が集まる森からたった一、二本の木がなくなったとしても、誰も困らないだろう?......そういうことだ。 このクソッタレな世界は私達を奇跡で産み落としていながら、当然のように捨てていくんだ……! そして世界はこれに顔を振り向けようともしない! 世界はひたすら無視を決め込むんだよォッ! あははははははははは!!!!!」
「とんでもねェ闇を生み出してるんだけどォッ! ちょッ! こいつを抑え込めェッ……!」
このような状況に慣れていないのか、シェイラは少し狂いだす。
いつも覇気を纏っている彼女には珍しい姿だ。
海斗が押さえると、若干マシになり、おとなしくなったが……
「……! な、なん……なんの音だ……?」
そこで海斗は何かに気付く。
それは身体に襲いかかる何かの鼓動、息遣いーーーー
何か、何かがこの状況に変化をもたらそうとしている音。
「……なんでしょう……」
次にバルが疑問を浮かべ、そして次々に全員がこの変化に気付きだす。
……ゴゴゴゴゴゴゴゴゴ…………という何かの 『もの』 が変動しているような音だ。
決して生き物が出している音ではない。
しかも、その音は時間が経つにつれ、大きく、巨きくなってゆくーーーー
その音の正体を確認するために、海斗達はかまくらの外に出た。
「……んんッ!? こ、こりゃあ……」
「……あらま〜……これは……絶体絶命ですね……」
その音の正体はーーーー雪崩であった。
ここは山の中腹地点、まだなだらかな場所に建てられた宿泊施設だったのだ。
中腹地点となれば、当然ここより高い頂上地点があるわけでありーーーーその場所に積もった雪が、今、彼らを飲み込まんとしていた。
原因は恐らく、先ほどの爆発。
それが少しずつ、少しずつ影響を与え、時間をおいて雪崩を引き起こしたのだ。
だが雪崩なので、飛べば回避できるーーーーと言えばそうなのだが……今は状況が違っていた。
なんせ 『目の前』 にまで迫っていたのだ。
「かい、ひ……クソッ!」
なんとか動こうとするーーーーが、足場の雪も動こうとしているのか、足を引っ張るのだ。
これでは直撃、命の保証は完全になくなる。
「子供を庇えェ!! できるだけ俺の後ろに来いィィィッ!!!」
その刹那に放たれた海斗の言葉ーーーー
その言葉に従い、バルは子供二人を抱きとめ、雪崩に背を向けーーーー
シェイラはそれを覆った。
そしてその三人の従者達と天使は彼女らを庇うために、彼女らと海斗の間に入った。
距離が近かったためにできた行為だが……その瞬間。
雪崩は彼らを飲み込んだーーーー
二話目終わりーーーー三話目に続くーーーー




