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もしも人間が魔王になったら  作者: キバごん
中央街騒擾編
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第百五十九話 年賀状で結婚報告してくるヤツほど空気の読めない者はいない

二話構成ーーーー前編

元旦ーーーー年の初め。

人によるが、怠けたり、せわしなく動いたりする日である。

それは人間界だけではなく、魔界もまた同じ。

どちらかといえば、魔界では後者の方が顕著に出ているが……


特に海斗が治める国の民は、怠ける事などしていなかった。

元旦という日を特別視せず、朝早くに起き、いつも通りの生活を送り始めたのだ。

それに、前のツイル達との戦いの爪痕もあるーーーー今は、国の最優先事項として 『国の復旧工事』 が掲げられていた。

故に彼女達は、働き続けた。

しかも不満を言うものはおらず、皆国のために尽力を注いでいた。


なんという意識の高さ。

なんという健康的な暮らし。

なんという愛国心の表れーーーー王である海斗は鼻が高いであろう。


……その海斗は今、どうしているのかというとーーーー城内の自室で、炬燵に身を埋めていた。



ーーーーー



「はい魔王様。 年賀状ですよ」


「魔王様〜、書類でーす。 今日中に目を通していてくださいねー」


その部屋に入室するバルとシウニー。

そして入室と共に持ち込まれるものが二種類あった。

正月には付き物、新年のご挨拶。

次に、王などの立ち位置に就いている者にはほぼ毎日手渡される紙の束。


年賀状、書類で作られた二つの塔。

それらが今、彼の前に無慈悲に建てられた。


「……なにこれ」


「なにこれって、視界正常です? 年賀状と書類ですよ。 炬燵でぐうたらするなら、これを見ててください」


「いや、なんで今になって年賀状なんだよ。 この話投稿されてんの一月十一日だぞ?」


「しょうがないじゃないですか。 だって作者文章書くの遅いんですもん。 前にやった中央街騒擾編だって、年内中に終わるかなっていう予想立てていたのにこれですもん。 呪うなら、自分達が才能皆無の作者に生み出された事を呪うんですね」


もう諦めろ、とバルは海斗を見下ろす。

訪れている現実はもう覆い隠せないーーーーならば、やれ。

怠けたいのなら早く問題を解消させ、その後で怠ければいいと。


「ったくよ〜……折角戦いを乗り越え、ぐうたらを極められると思ったのに…………」


「だぁ〜」


それでも不満を漏らし、中々手を伸ばそうとしない海斗。

そんな彼の胸元から、小さな女の子の声が聞こえた。

金髪でくりりとしたおめめを持ち、身長は五十センチ程……小動物的な、果てはマスコットキャラ的な悪魔ーーーー通り名は 『蠅の王』。

七つの大罪、ベルゼブブだ。

彼女は、海斗が胡座をかいた足の上にちょこんと座り、炬燵の毛布に埋まっていた。


「ほら、ベルゼも言ってるじゃないですか。 『ちゃんと仕事してください』 って」


ちげェよ。 『黙れ銀髪淑女(笑)。私達は今、炬燵と儀式の途中なのだ。 そのような粗末な内容ならば去れ。 見苦しい』 と言っているんだ」


「『うるさいのはそっちだ。 貴様の命、その嘘にまみれた訳ごと消し去ってくれようぞ……』」


「『黙れ小娘! 貴様に理解ができようか……!』」


「そろそろやめません? ノリが小学生のそれなんですけど」


「だぁ〜?」


不毛な言い合いに終止符を打ったシウニー。

もっと無駄な時間が増えるだけだと、彼女はその意味を込めて言葉を発した。


「あのですね魔王様、皆国の壊れた場所を修復してるんですよ。 魔王様だけぐうたらとかダメですから。 でも修復とかはわからないと思うんで、これらを持ってきたわけですよ、分かりますか?」


「えー……でもよ、こいつも働いてねェじゃねェか」


シウニーの言葉に、海斗は疑念を生じさせた。

まるで海斗以外は全員働いているかのような言い方。

魔王しっかりしてくれよ、私達はもう全力でやってるんだよ、と言わんばかりの言い方。

しかし、何か違う。


その理由を示すために、彼は右前に指を小さく向けた。

その先にいたのはーーーー


「はぁ……蜜柑はサボりと同じく、甘酸っぱい味がしますねー……」


「……」


ベルフェゴールがいた。

彼女は海斗と同じく炬燵に下半身を埋めていた。

その上蜜柑。

蜜柑を一房一房食べているのだ。


「……いや、ベルフェさんはいいんですよ。 問題は魔王様ですよ。 魔王様」


「あれぇ? 何でベルフェには強く言わないのぉ? 何で俺には強く言えるのにベルフェに強く言わないのぉ?」


「だから……ベルフェさんは関係ないじゃないですか。 私は、魔王様に、言ってるんですから……」


「そうよ〜。 だって私 『怠惰』 を司る悪魔なんだもの〜、別に、というかこれが正常なのよ〜…………」


言葉につまりだすシウニー。

彼女の口が思うように動かなくなっている。

理由は明白。

自分よりも上司にあたる、しかも絶対不動の七つの大罪が目の前で堂々とサボっているからだ。

海斗も一応上司であるのだが、友達感覚の方が大きい故に同僚と話す時と同じになっているのだ。

しかも 『サボりは海斗みたいな馬鹿しかしない』 的な発言を強く言ってしまっているために、ベルフェゴールはサボっていい、とは言いづらい。

これらから彼女はたじたじ、目線は泳ぎまくっている。


そんな彼女を、ベルフェは無言で優しそうな目で見ていた。


「でも……何か言いたいことがあれば、言っていいのよ? シウニーちゃぁん……」


「……べ、ベルフェさんにも……きょ、協力をお願い、したいです……」


ベルフェの手の差し伸べにより、シウニーは勇気を出して口を開いた。

とても恐怖を感じている様であったーーーー証拠に身体が、微弱ではあるが震えていた。










「で、俺には?」


「働け」


「この差よ」

後編へ続くーーーー

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