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第九十三話 タイトルの考えすぎも良くない気がする

「と、いうわけで一つタイトルが決まったな」


「決まってないですよ! なに私の秘密をタイトルにねじこもうとしてるんですか!」


「いやでも彼は気に入ってるようだぞ」


「やめてェェェ! 死にたくなるから!」



サタンからの提案がとんでもないシウニーの暴露話だった。

シウニー以外は楽しめる内容だったが、彼女にとっては爆弾が直上から降ってきたようなものーーーー是非ともタイトルに組み込むのはやめてほしいところだが、例の意味不明なホワイトボードは納得したらしく、自らペンを取り言われた通りの文字を書いていた。


『シウニー、お前もうスケスケのパンツに挑戦したか?』 と。


やばい、これはまともなタイトル決めにはならない……そう感じた。



「他には何かないか?」


「はーい!」



またしてもバルが手を挙げた。

いつもと同じよう、元気いっぱいだ。

だが今ではそれが不吉に思えるシウニーだった。



「よく見かけるんですけど…… 『「なんとか」と「なんとか」の「横文字」』 みたいなタイトルはどうでしょうか」


「なるほど……かっこいい路線も含めたほうがいいと……確かに一理あるな。 俺もよく目にしたことがある。 たしか最後の 「横文字」 は熟語のルビとしていたよな……よし、その意見もとっていこう」


「では 『赤髪と悲しみのシウニー』 でどうでしょう……」


「なんで私が横文字として登場するんですか!?」



バルはまともな発言をしたが、またもやおかしな方向へ持って行かれる。

海斗とベルフェは本当に決める気があるのかと思うほどだ。



「確かに赤髪というキャラは存分に出していった方がいいしな、それにどこか哀愁漂う部分もあっていい、採用だ」


「悲しすぎるでしょう! それ私のコンプレックスだもの! 絶壁に悩んでいるんだもの!!」

「ていうかいいんですか!? 案出されたタイトル二つとも私なんですけど! 元から読んでくださってる方しかわからないんですけど!」


「それほどお前は重要人物ということだ、頼むぞ胸なしツッコミ役」


「ほぼディスりなんですけど……ッ!!」



結局シウニーのあがきが通ることはなく、ホワイトボードに書き加えられる。

彼女は不満そうに頬を膨らませた。



「しかしもっと工夫を凝らした方がいいんじゃないか?」


「ですよね! よかったぁ、アイナさんはわかってくれて……」



するとアイナが声を上げた。

正座で腕組み、全てを見通すような目をしている彼女の姿はシウニーにとって救いの神にも思えられた。

やっとまともな意見が聞けるーーーーと安堵した。


「板よりサーフボードはどうだ」


「どこを工夫してるんですかァッ!!」


「いや、ただの板より精神状態が安定するだろう? 板だと悪口に聞こえてしまう場合がある」


「どっちもどっちですよ! しかも工夫を凝らしたタイトルじゃない! 工夫を凝らされた板ですからそれ!」



だが安堵は一驚に変わり、ふりだしへと戻ってしまった。

誰かタイトルらしいタイトルを持っている人はいないのか。



「なるほど、一言一言をグレードアップしてやればいいのか……なら 『淫乱と哀愁のまな板シウニー』 で」


「結局落ち着くところに落ち着いたよ……!!」



ーーーーー



「……! そうです! これからはラノベも小説も、小さい子供達から面白いと思われなくてはなりません! そうすれば、読解力や語彙力も自ずと上がっていくでしょう!? だから、その願いを込めて子供二人からも意見を聞きましょう!」


「それはあるな、何事も子供と女性からの支持をとれたら、それだけで強みとなる」


「でしょう!? なのでラーファちゃんとエリメちゃん! 何かないですか!?」



無理やりでもいい、なんとかして路線を元に戻さなくてはならない。

その意志を抱いたシウニーは、ラーファとエリメに振った。

子供は純粋な意見を持っているに違いないーーーーその希望を乗せて。



「私は……その、せっかくお姫様と魔王というものがあるので、それを利用すればと……はい」


「そうですよねぇ!? お姫様はいいと思いますよ! 女の子からも支持されると思いますし!」

「あと、異世界転移してるのに異世界の文字がないのは寂しいのでは!? よくタイトルに入ってますし!」



彼女の考えは当たった。

女の子らしいメルヘンチックな意見が飛び出してきた。

これでなんとか立て直してくれるといいのだが……


「そうか……そうだよな、光るところは入れていかないとな」


「そうですそうです! この小説のいい部分を探していきましょうよ! エリメちゃんは何かある?」



いい感じに進んで行っている!

このままの勢いを保ち続けなくては。

次に期待をエリメに託した。

するとーーーー



「……奴隷生活……」


「……え?」


「奴隷とか血みどろとか暴力とか……入れればいいなって……」



……?

ど、奴隷……?

黒いところ……?



「そ、それは……」


「やはりどの世界にも黒い部分はあると思うんですよ……そこから目をそらして無理やり明るい方へと走っていくのもどうかなって……私は黒い部分に触れていかないと心は優しく豊かになっていかないと感じているんです……眩しい日差ししか浴びない場所で育っているからいじめとか虐待とかが生まれるって思ってるんです……」



彼女は正面の空間を見ながら語り続けるーーー



「自分の事しか頭にないような人にはなってほしくない、他人の痛みがわかるような人になってほしい……それを遠くからでもいい……この小説から応援できれば御の字じゃないですか……何より黒いところがあるからこそ明るさが目立ってくるっていうか、だからそういうのをタイトルに入れてらいいんじゃないでしょうか……?」



やっと終わった。

ただ提案してくれただけなのに、やたらと部屋の空気が重くなる。

シウニーはとても苦い笑みを浮かべている。

そう反応するしかないのだ。


だが、彼女は暗くなているのに対し、海斗達は考えさせられると言わんばかりに納得しているようだった。



「そうだな……黒い部分も入れるかーーーーというわけで『大量虐殺の日々を生き続け、死と隣り合わせのランデブー』を加える」


「全く内容に触れてないし黒い部分の意味理解できてないし!」


「それでは黒い成分が足りてません……『大量虐殺の日々を生き、美しい人生で限りない喜びを覚える松崎し■る』にしましょう」


「そういう黒い意味でもありませんからァッ!!」



やはり不可思議な方向へと持って行く……

しかし今回はそれに助けられた。

シウニーが感じていた重い空気はどこかに行ったようだったからだ。


そしてまた提案は飛び交ってゆく。

今度もバルが口を出した。



「黒いテイストを加えた最後は、やはり『〜な件について』に触れていかなくてはいけませんね」


「確かに……それは含めなくてはいけないな」



これもよく見るタイトル。

小説の内容を手短にも長くもできる最適な形。

その上、内容までもをわかりやすく表現してくれる。

絶対に外してはならない。



「じゃあ 『騎士団の下着が汗まみれで興奮材料として私を刺激してくる件について』 でどうだ?」


「なにここで暴露してるんですかァ!」



それを聞いたアイナは、変態の思考に電源が入りかなりの発言をした。



「いやな?騎士全員が鍛錬を大事にし、日々勤しんでいるのだが……そのおかげで服が汗でびしょ濡れなのだ。 よく私は団長としての責務を果たすべく、洗濯を承っているのだが……やたらと良い匂いがしてな、女性を性的に見ない私も流石にやられてしまうんだ」


「やっぱりアイナさんは変態でした」


「元からじゃねえの?」



しかし海斗達は彼女の発言に驚くそぶりを見せず、むしろ平然としていた。

冷静にやり過ごしている。

シウニーには到底理解できないものだった。



「汗まみれってさ……なんかこう、違う勤しみをした後みたいな感じがするんだ。 その相手が海斗で……団員の皆は海斗と組んず解れつしているのに私はまだ……みたいな妄想が捗って、悔しい! でも感じちゃう! 的な感覚が襲ってきてーーーーー」


両腕を交差させ、肩を掴みくねくねと身体を蠢かせるアイナの姿にはどうすることもできないシウニー。

今まで騎士団を大きな背中で率いてきた彼女のそんな一面を見ると、今まで通りに接することができなくなってしまいそうだった。



「『アイナが壊れた件について』」


「『もう慣れた事に恐れる自分がいる件について』」


「『子供だからまだ純粋なふりができる件について』」


「『最早アイナの定番になりつつある件について』」


「皆さんタイトルで会話しないでくれます!?」




ーーーーーーーーーーー


ーーーーーーー


ーーー




タイトルを決めるだけで苦難の道を歩むこととなった8人ーーーー

案が出てきては新しい案がそれを超え、ぬりつぶす。

それが何回もあった。


必ずやいいタイトルに生まれ変わらせるーーーそんな思いで臨んだ今回の企画。

最初は乗り気じゃなかったシウニーも熱を帯び始めた。

控えめな子供達も自ら意見を出すようにもなった。


そして決定するまでに5時間を要したのだ。


そのタイトルは、翌日、国の中心に位置する噴水の前ーーーーそこにたてられている掲示板に張り出されていた。



ーーついに小説のタイトルが変更ーー



「ま『も』うしきった日々

はた『し』状をもらった俺は宮本武蔵

『も』う黒い下着なんて買わない 履かない もらわない

女騎士『に』エロを求めてる俺はきっと将来お金持ち 

そ『ん』『げ』『ん』なんてあってないようなもの 

結局は下着を取り付けること自体が機械的に作動してしまっているようなものなのでノーブラノーパンはむしろ好まれるべきである

大変なことに気づいてしまったが……それはまた10年後に言うわ

石の上にも三年……はぁ? そんだけ我慢したらあっという間に人生終わるだろォ『が』ァ!

『ま』りも 

『お』かんはいつも俺が白い服を着ている時だけカレーを作る

『う』『に』、蟹味噌、さんまの内臓……やっぱり同じものにしか見えないわ

愛と誠とま『な』板シウニーと無関係なお前の真実の光マイソード

俺から誠実取『っ』『た』ら何が残るんだよぉ〜……とか言ってる奴、何も残らねえよ

最後には皆、美しき人生と限りない喜びでえげつない味噌汁と奈『ら』漬けを完成させる松崎し■るになってしまう件について」


略してーーー


「もしも人間が魔王になったら」



掲示板の前にはシウニー。

ただ無心で書かれてある文字を読んでいた。



「……」

「………変わんないじゃん……」


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