プロローグ1 開拓者精神
開拓者精神
北海道 十勝技術特区 搬入ターミナル駅
ポータルが民間に解放されれば、釧路港や拡張された青函トンネルなどから毎日のように何万というコンテナが電車に積まれて運ばれてくることになる。
それに対応したのが急遽作られたのが技術特区前搬入ターミナル駅だ。
しかし、この日は大量のコンテナの代わりに大量の人間がいた。
政治家、軍人、記者、一般市民、巨大企業のCEO達そして共産主義者など多種多様を極めた。
その何千人もの人間は一人の男に注目していた。
急設された舞台の上に堂々と立っているスーツ姿の男に
その男は大衆が静かになると、マイクに近づき言葉を紡ぎ始めた。
私は第47第 日本国 総理大臣 大方 善人 です。
十勝技術特区組合会長、田中副総理大臣、山本衆議院議員、未来参議院議員、四菱建設の加藤社長、研究員の皆さん、ご来賓、ご列席の皆様、そしてテレビの前の世界中の人へ、おはようございます、こんにちは、或いはこんばんは
進歩の象徴として知られる技術特区そして、日本の開拓地として知られる北海道、ここで我々は
一同に介しています。
技術の進歩、フロンティア精神どちらも今我々が必要としているものです。
なぜなら13時間後から解放されるポータル、異世界への扉は人類の歴史において重要な転換点となり得るからです。
人類の歴史における転換点とは、その全てが未知への探求でした。
大航海時代の大洋しかり、ライト兄弟から始まった大空への冒険の時代、現在まで続く宇宙開発時代しかりです。
先人達の例に漏れず、これから未知への探求がはじまります。
これは目に見える海や土地、空に限った話ではありません。
科学の世界おいても、異次元、異世界への探求は全くの未知そのものです。
我々人類は、陸、海、空の大自然を手なづけ、ここにある世界を地球を愛しい我が家と呼べるものにするまで二十万年掛かりました。
この事実はもう一度人類が二十万年の歳月を新たな世界の制覇に費やすことを意味するものでしょうか?
答えは否です。
新たな世界の制覇は必ず遂行されます30年代が終わるまでに。
なぜなら、我々は二十万年前とは違うからです。
穴蔵で生活し獣の皮を体に巻きつけ、骨で出来た槍や剣でティラノサウルスと戦っていた時代とは違うのでのです。
二十一世紀の人類は高層ビルで生活し、化学繊維の服を体に纏い、これまでに培われた知識で未知と戦うのです。
私は日本国の総理大臣としてこの偉業に協力していることを誇りに思います。
中には、宇宙開発競争の最中になぜ異世界なのかと疑問を持つ人もいるでしょう。
しかしその質問の答えは1969年に既にでています。
人類初の月面着陸を決意したアメリカ大統領は、かの有名な登山家ジョージ マロリーの言葉を引用し、月があるからそこに行くと答えました。
まさに その通りです。
我々は異世界という月あるから我々は行きます。
そこには文字通り無限に広がる世界があります。
そして知識と平和への希望があります。
それ故に人類史上もっとも多くの危険をともなう、冒険的で偉大な壮途に日本国の総理大臣として彼らに神の祝福のあらんことを願います。
ご静聴ありがとうございました。
こう言い終えると
男が言い終わると万雷の拍手が鳴り響き、新聞記者がカメラのシャッターを切り、閃光電球が一斉に光った。