ガラクタをもらって喜ぶ部下
私の部下に、少し変わっている子がいる。
周りから、“かなり変わっている”と評価される私からそう表現されるのは、彼は凄く不本意だろうけれど。
私は人から言わせれば『分別が出来ない、片付け下手な女』らしい。いわゆるズボラ女・干物女だと私は捉えている。多分そういわれてしまうのは、私が会社の行き帰りで捨てられているものを拾ってくるからだろう。
物を拾ってくる癖を、私は昔から人に注意される。私からしたら、使えそうなものを持ってきているつもりなのだが……それらは人に言わせればやはりゴミなのだそうだ。……そう言われる事が、私は少しだけ寂しい。
私の変わり者の部下の話に、話を戻そう。彼は名前を山下くんという。周りからは親しみをこめて山下くん、山下くんと呼ばれているため、“山下くん”という名字が愛称のように扱われている。
山下くんは、根はとても真面目だが変わっている。私の拾ってくる、周りからは“ガラクタ”と表現されるものたちを、小言を言いながらももらってくれるのだ。以前拾ってきたラジオは、家で使っているらしいし、リサイクルショップで安く購入したクッションも綺麗に手入れし直して、会社で使っている。そして何より変わっているのは、それらのものをもらう時に小言を言った後、少しだけ笑ってものを受け取ってくれるのだ。
その時の山下くんの「にへっ」というような、少し崩れた笑い方が、私は何か、どうしようもなく好きなのだ。
私は、私が拾ってきたじょうろを使い、会社の花へ水を上げる山下くんを見つめながら、軽くため息をついた。
彼は本当に変わっている。
はぁ、とついたため息は、山下くんが「いつものお礼です」とくれたマグカップへ淹れたコーヒーの湯気と共に、10月のオフィスへ溶けた。
-END-
上司に片思いする男部下が好きです。
さらに言うなら、その部下を気になりつつ事に気付き足した上司も好きです。
そんな気持ちだけで書きました。