俺が勇者なのは秘密です
その後、俺とリルルはリビングに行き、家のメシを食った。
今日の晩飯はとんかつだったが味も忘れるくらい速攻で食った。
家族からは不審な目で見られたが「また始まったか・・コスプレ。」みたいな流れになって気にも止められなくなったのでまぁよかった。
実際は一度もコスプレなんてしたことないんだけどな!?
リルルはこちらの世界にいる時は腹が減らないとかで俺が食うのをただ見ていた。
飯を食い終わった俺はベッドでゴロゴロしていた。
「これからどうするかなぁ・・。」
『何がよ?』
俺を見つめてリルルは言った。
「いや、だってさこの服脱いだら死ぬんだろ?風呂とか入れねーじゃん。トイレは!?困るだろーが!」
起きあがって訴える俺をリルルは呆れたように見下した。
『アンタが勇者やってもいいって言ったから悪いんでしょう?私の知ったことじゃないわ。』
「な、なんだと・・!?」
『だからーっ!文句なら私じゃなくて国王に言いなさいよ!』
「あぁいいよ言ってやる! はやくあっちに連れて行ってくれよ!」
『一度着た以上は脱げないの!い、いい加減わかりなさいよね!』
一瞬リルルの顔に焦りが見えた気がした。
「わかんねーよ!そんな理屈で納得できるかっつーの!」
『じゃあ何よ!?アンタゲームやってるとき主人公がお風呂に入るわけ!? 入らないでしょ!?』
「ま、まぁそうだけどさぁ・・。」
いきなり強気にでたリルル。
そんなこと言われちゃ返す言葉がない。
『とにかく!そーいうのは平気なようにできてんだから気にしないでいいの!!』
どうやらこの服はそーいうのは平気らしい。
そして触れてはいけない理屈だったようだ。
まぁこの話はここまでにしよう。
明日からどうすっかなぁ・・。
なんてことを考えていたらいつの間にか眠りについていた。
次の日・・。
俺は起きると勇者の服の上に学校指定の制服を羽織った。
朝メシのトーストをくわえて走る。
家から学校まではそう遠くは無い。
一応リルルも一緒に登校している。
いつもの曲がり角を曲がるともう学校だ・・ドンッ
「「うわぁっ!!?」」
誰かとぶつかった。
顔を上げれば見覚えのある顔。
「あ!優馬くんも学校来たんだね。」
「あぁ・・。」
武内あかりだ。
隣にはフレイヤさんもいる。
『昨日ぶりだな、リルルに優馬。』
『フレイヤ~♪』
「ども。」
ぶつけた頭をさすりながら起きあがると学校のチャイムが鳴った。
「「やべっ!/遅れちゃう!」」
再び走り出す俺らだった。
その日の授業はまたく耳に入って来なかった。
俺はずっと異世界のことを考えていたのだからな。
そんな4時限目の昼休み時間。
2年C組の戸が開いて二人の女子生徒が俺の名前を呼んだ。
「「真田優馬ぁぁぁ~!!!」」
「うげっ!?」
クラスメイトの視線が俺に集まる。
やべぇ・・またもや目立っちまった。
一人は武内あかりでもう一人は・・?
少し茶色のかかった長めの髪をひとつに結っている。
『行ってきてあげれば?』
リルルに促されたのもあるが、とにかくこのままでは色々と困るので一旦教室の外へと出た。
「んで・・何か用?」
俺が聞くとあかりは「この人だよ~。」とか言ってる。
なんなんだよほんとに・・。
「アンタ・・勇者よね?」
若干の茶髪女が俺に聞いてきた。
「だったらなんだよ・・?」
ここはもう開き直るしかないと思った俺は少し強気に出てみる。
その瞬間女の肩ががっくりと下がった。
「えぇぇぇ~・・?あかりが勇者っていうからもっと男らしいガテン系の人かと思ったのに・・なにこのヒョロヒョロ男。」
「んなっ!?」
さすがの俺でもこれは頭にきた。
いきなり初対面でこんな失礼なこと言うか?普通。
「おい、お前・・いきなりなんなんだよ。」
俺が軽く睨むと女は「あたし?」と聞いてきた。
そうだよ、そうにきまってんじゃんよ。
「教えてほしい~??」
「いいから早くしろよ。」
半ば呆れ気味に言うと女はニコニコしながら言った。
「あたしはあかりと同じ2年A組の”鈴木舞姫”(すずきまいひめ)で~す! あかりが勇者になったとか頭のおかしなこといってて証拠見せろや(#゜Д゜)ゴルァ!! ・・って言ったら優馬さんにあってみればわかるって言うから~・・。」
ハァ・・。なに自分が勇者になったって言いふらしてんだこの女。
「あのなぁ、あかり。あんまそういうの言いふらさない方がいいぞ?」
「大丈夫だよ~!舞姫は親友だしっ♪」
いや、そーいう問題じゃねえからな?
その後、俺は午後の授業を終えてリルルとともに異世界へ行った。