勇者の儀式
リルルの指示により王国の中心地である大広場にたくさんの国民が集められた。
今、俺は国王から貰った青色の勇者の衣を着ている。
学ランよりずっとカッコいい。
会場がざわめいている。
きっと勇者となる俺の登場を待ちわびてんだろうな。
「まぁまて国民達よ、勇者はここにいるぜっ。」
『優馬・・・かっこわるい。』
無意識のうちに声に出ていたようだ。
バッチリポーズを決める俺にリルルはドン引きというような表情を浮かべている。
「い、いや・・今のはちょっとな?」
急いで誤解を解くように否定する。
なんて会話をしていたら国王の準備が整ったようで召使いが合図を送ってきた。
GOサインだ。
『行くわよ、優馬。』
「えっお前も行くのかよ!?」
リルルはふてぶてしく言う。
『し、仕方ないでしょ?きまりなんだから。』
「おう・・ってか!なんも練習とかしてないけど大丈夫なのか!?」
なんだろう・・ものすごく不安になってきた。
『まぁ・・大丈夫じゃない?』
て、適当だなぁオイ。
「ここに、バラディック王国勇者として真田優馬を記す!!」
「「オオオオオ!!!」」
広場の高台へ俺とリルルと国王は並んだ。
色々と国王の話があった後、古い本に国王は魔法を唱えた。
俺にはなにを言ってるか最後の所しか聞き取れなかったけどきっとリルルやみんなにはわかるんだろうな。
すると白紙だった本に俺の名前が刻まれていった。
国民からは歓声が上がった。
国王は本を置き、召使いから赤い布に包まれた何かを受け取った。
布は国王の手で解かれ、その中からは紺碧の剣が出てきた。
「おぉ・・・。」
俺は感嘆の声を漏らす。
それは本物の勇者が持つような神秘的オーラを発していた。
「これは街一番の鍛冶屋が鍛えた最高級の剣だ。」
王の手から俺の手に渡された。
ずっしりと剣の重みがかかる。
「抜いてみよ。勇者優馬。」
王は真剣であり、温かな目で俺を見る。
俺は返事をする代わりにうなづくとゆっくり柄頭に振れた。
なんともいえない冷たさが全身に伝わる。
そのままゆっくりと剣を引きぬくと銀色の剣身が現れた。
「おおおおお!!!!」
俺は抜いた剣を空高く掲げる。
みろよみんな! 俺が勇者だ・・!!
国民は俺に拍手やヒューヒューと口笛を送る。
ははっ・・本当に夢みたいだぜ。
それと同時に俺の頭にはいつもの日常が駆け巡っていた。
毎日寝たかもわからない状態で学校へ向かい、帰ったらそのままパソコンへダッシュ。
掲示板にカキコしたり、アニメみたり・・。
でもこれからは違う!!
異国美少女とこの国の勇者となって、国を救うんだ。
なにもかも平凡だったあの頃とは変わるんだ!!
って・・おい待てよ。
こんな上手い話があるわけねぇよな・・?
今更になってこれは夢なんじゃないのかと思った。
『何ボケっとしてんのよ。』
「っあ!?」
俺を連れてきた張本人、リルルの声で現実に引き戻された。
『剣をしまいなさい。もう儀式は終わったわ。』
「あぁ・・。」
国民はだんだんと広場から立ち去っていくところだった。
これからどうなるんだろうか・・。
とっても心配だ。