戦闘1
戦闘では行動ゲージが溜まり次第攻撃可能となる。これは敏捷値によるが、今の僕たちは5秒ほどだ。しかし、白椿さん達のゲージはこちらの1.5倍程の速さで溜まっていく。でもそれは当然のことだ。だからこっちも策を用意したのだ。(このゲームには戦闘で使用可能なアイテムがある。回復系やダメージを与える系、特殊効果付与系などと種類は様々だ。)それがみんなで一生懸命集めた[ラピッド・ラビットの血]だ。アイテム枠から選択する。使用するとキャラネームの下に回避マークが追加された。これでみんな一度だけ攻撃を回避することが可能だ。一人だけ集中的に攻撃されればやられてしまうが、全滅はしない。その後はこちらの反撃だ。しかし、相手は僕たちをそう簡単には勝たせるわけがない。白椿さんが発言する。
「私達がその可能性を考えていなかったとでも?strengthさん、お願いします。」
「了解した。」
strebgthはただそれだけしか言わなかった。しかし、strengthの武器に変化が現れる。斧全体を黄色の光が包み始める。すると、只でさえ巨大な斧がさらに一回り巨大化した。しかも握る部分が鎖に変わっていた。そしてそれを投げつけてきたのだ。その巨大化した斧が僕らを順になぎ払う。
!!!!!!
嘘だろ・・・。ダメージは回避したので受けなかったが問題はそこではない。全員の回避マークが消滅する。ファイターは全体攻撃を使うことはできない。なのにstrengthは確かに使った。
「zero、今のなんだよ!」
想定外だった。全体攻撃を使用できるのは今回は白椿さんだけではなかったのか。
「あれは武器スキルだ。まさか使用してくるとは思わなかった。」
あとで知ったことだが、武器スキルとは強化段階が最高値に到達した武器だけが覚えることができるものらしい。但し、レアリテイの高い武器に限るそうだ。
「そんなの聞いてないよ!なんだよ」
作戦が一瞬で崩壊した。すると白椿さんが冷淡に言う。
「そういうことよ。所詮は初心者の悪知恵、覚悟することね。」
そう言い終わると、次はcuteが発言する。
「では、プリーストは私が」
cuteに変化は見られない。だが、人帝の足元に緑の魔方陣が展開される。すると、急激に人帝のHPが吸収されていく。プリーストは回復専門の職業ではなかったのか。なぜ人帝のHPが減っていく。相手の攻撃は5秒ほどで終わった。
「たわしっ--!!!」
僕の叫びも虚しく人帝のHPは0になり地面に倒れる。それきり動かなくなった人帝を横に、我らのリーダーであるカロリーzeroに話かけるが反応はない。
敵の人数は3人、こちらの人数は残り4人。数だけならこちらの方が有利にみえるがあまりにもレベルが違いすぎた。
どうすればいい!? この窮地を乗り越え、逆転できる策は?
いくら考えても時間だけが過ぎていく。そこに追い打ちをかけるように白椿さんが攻撃を始める。次は、SIRIASUの足元に先程と同じ様に魔方陣が現れた。しかし、次は水色だ。魔方陣から氷の柱が出現する。花の蕾だろうか、とても美しい。そして蕾は開花した。SIRIASUを巻き込んで美しい氷の花が咲く。そしてSIRIASUのHPは0になる。続けて氷の花も消滅した。開始一分で二人がやられてしまう。
もう勝負にすらならない。勝とうなんて考えは幻想にしかすぎなかったのだ。レベルが、プレイ時間が、努力が勝利への絶対的な壁として立ちはだかる。僕の頭の中を敗北という二文字が埋めていくのであった。