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7月と言えばそろそろテスト期間である。私も雪夜君も勉強に励んでいる。特に雪夜君は1年分の記憶のブランクがあるから大変だ。雪夜君に「大丈夫なの?」と聞いたら「月姉が家庭教師してくれているから大丈夫だよ。」との答えが返ってきた。優秀な月絵先輩が家庭教師なら安心か。雪夜君は各種近接格闘の道場に通っているが、勉強の塾には通っていない。かと言って格闘技系の部活をしている訳でもないんだが。格闘技を身につけるのは自分の大切な人を守りたいからであって、仲間と交流したり大会で良い成績を収めたりするためではないんだって。大切な人って言うのが……桃花ちゃんなんだよねえ。小さい頃から変質者に狙われがちだった桃花ちゃんを守るために始めたのがきっかけだもの。桃花ちゃん、想われてるなあ。いいなあ。
とりあえず目標学年10位以内。全教科90以上を狙っていくぞ!私は寝る間も惜しんでがりがり勉強をしている。普段から真面目に勉強しているが、テスト期間は気合が入る。
「結衣ちゃん、また勉強してるの?よく続くねえ?」
机で単語帳を捲っていると里穂子ちゃんが扇子でで自分を扇ぎながら近付いてきた。因みにこの扇子が今年の里穂子ちゃんへの誕生日プレゼントでした。薄緑の地に薄紫の紫陽花が咲いている絵柄だ。私が使ってるやつは安物だけど、里穂子ちゃんにあげたやつはちゃんとしたやつだよ!
「今回こそ10位以内!」
「って言っていっつも11位とか12位なんだよね?」
「うう……」
どうしても上位に強敵がいるんだよねえ。でも頑張る。私運動全然できない子だし勉強ぐらいできなくちゃ取り柄が無い。
頑張った結果12位だった。物理と数学が90点以下だった。うう…敗北。あとちょっとなのに!!でも私より上位にいる子ってきっと塾行ったり家庭教師つけたりもっと勉強してるんだよね?そうに違いない。90点以下だったのだって私が勉強不足だったからだ…もっと頑張ろう。と思っていたら夕食時、雪夜君に「結衣、しばらく頑張りすぎるの禁止。」と言われてしまった。
「ええ?なんで!?」
「結衣、気付いてるよね?体重減ってるの。」
「私も思ってたの。朝比奈さんガリガリじゃない?」
月絵先輩にまで指摘されてしまった。
うう…実はテスト期間で3キロ減りました。
「テスト期間中は頑張ってる所に水差しちゃいけないと思って言わなかったけど、健康に悪いよ。ちゃんと食べてる?」
「その…忙しかったから…」
七瀬家で食べる水曜日はちゃんと食べてたけど。
「ダーメ!忙しくてもちゃんと食べてちゃんと寝る!健康が一番大切なんだよ?そういうのは失ってから気付いたって遅いんだからね?」
いつになく厳しい調子で叱られてしまった。
「それに美容にだって悪いわ。折角の可愛い朝比奈さんが…」
そんなに酷いだろうか。ガリガリ痩せてガイコツみたいな女って嫌だよね。絶世の美女の月絵先輩に指摘されると堪える。
「ごめんなさい…」
「うん。自分の事大切にしてね。」
「うん。」
こうやって叱ってくれるのも、私の事大切にしてくれてるからなんだよね?私はちょっとほっこりした。
「雪夜君は試験どうだったの?」
聞いてみる。6年生の一年間抜けてても大丈夫だったのだろうか?
「平均点98点くらいかな。学年順位は2位だった。漢字の書き間違いとか英語のスペルミスとかつまんないミスがあったから気をつけなきゃ。」
雪夜君は優秀だなあ。頑張ってたのは知ってるけど、ちゃんと頑張ってた分が身になってる。羨ましい限りだ。
「すごいねえ。」
「どうだろう?今は地区で学校が分かれてるから学業レベルが不揃いなメンツなんだよね。これから先、高校に行くと同じような学業レベルのやつらと一緒になるから平均点も上がるかもしれないし、順位は確実に下がると思うね。」
先のことまで考えてるなあ。進学したい学校を聞いたらいずれも名のある進学校だった。ハイレベル。格好良いなあ。私は夕食の最中なのに雪夜君にポ~っとなってしまって、七瀬家の家族に笑われてしまった。恥ずかしい。因みに桃花ちゃんはあんまり成績がよくなかったみたい。ちょっとどんよりしてた。
結衣ちゃんの「3キロ体重が減る」は確実に危険水域です。
月絵おねーさんは週一で小学生の家庭教師のアルバイトをしています。雪夜君に教える時とは違って、優しく教えてくれると評判です。
雪夜君の将来の夢はアクチュアリーの方に傾いています。がっつり進学校狙って行きます。




