序説
てん‐し【天使】――
1 天界にあり、神の使者として人間に神意を伝えたり、人間を守護したりすると信じられるもの。ユダヤ教・キリスト教・イスラム教などにみられる。エンゼル。
2 心の清らかな、やさしい人のたとえ。「白衣の―」
3 天子の使者。勅使。
<承学館 大辞泉 第六版>
――擬天使 [an・gel・ic](俗称) 侵略型有害生物種――
<概要>
天使擬き。
特徴として複数の有翼を生やし、形態が天使に酷似していることから名付けられた有害指定生物種である。
遺伝子形成の変質、生殖能力の剥奪、生命体の判断能力および知的活動の低下を促す。特に人間の精神に干渉し、宗教的体験を見せるなどの幻覚症状を誘発する。
擬天使の精神干渉を受けた人間は、変成意識状態に陥り、宗教的体験や幻覚症状、場合によっては暴力衝動の昂進、潜在記憶の喚起、一時的に錯乱状態に陥るケースが多い。
また擬天使との接触者は、接触後、信仰や宗教に強い関心を見せるようになり、擬天使を崇拝対象とみなす傾向が高くなるとの報告もある。
擬天使の出現場所は多岐に渡るが、地球環境再生機構が進めるプロジェクト・エオン関連施設であるバイオマス環境での発見や出現が、多く確認されている。
擬天使は、出現した地域に棲息生育する全ての動植物に対し、侵略、影響を及ぼし、絶滅の危険性を齎す。
在来種を捕食したり、融合を果たりし、移動先で分布拡大したときに、在来種の絶滅につながるおそれがあるなど、特に生態系や人間の生活に大きな影響を及ぼす。
病原菌や寄生虫、バクテリアなどを作り出し、環境を自らが住みやすい場所へリフォームする。
農作物や家畜への影響も大きく、結果、棲息した環境を汚染、悪化させ、さらに生態系のバランスを崩壊させ、二次的被害を齎す。(A1M3型ウイルスに関しての資料は別項)
擬天使が自然環境化での動植物と交雑もしくは融合する事例が報告されている。在来種の遺伝子が変容させ、遺伝子汚染や遺伝子流出をまねくという深刻な事態が予想される(日本沖縄で、擬天使が蛇が交雑した結果、従来よりも強力な毒性を持つ雑種が誕生している例が目撃されている)。
自然環境下の動植物で遺伝子の攪乱が広がった場合、攪乱前の状態に戻すことはできず、交雑種が新たな害を及ぼしたり、生態系全体のバランスに大きな影響を与える。
擬天使の勢力が広範囲に拡散すれば、人間の遺伝子プール(その個体群が共有する一定の変異幅をもつ遺伝子の総体)に強い影響を及ぼし、遺伝子の状態を回復することは、事実上不可能となる。
人為的条件での適応、すなわち人間にとって優れた特性の獲得が、交配により達成され、原種と大きく異なった形態の品種が生み出されることが多い。このような例を踏まえて、遺伝子の攪乱は種としては新たな適応の機会であり、悪い事ではないという意見も見受けられる(研究機関ネフィリムは「遺伝的多様性が増す」と見解を発表している)。
現在確認されている天使の形態は、アブラクサス型(半蛇半身)、セラフィム型(複頭部型)、サンダルフォン型(巨大種)、そしてマスターテリオン型とある。
マスターテリオン型と称される種類は、現在一例のみである。(マスターテリオン型は他に前例のない、未曾有のバイオハザードを引き起こしている。以降、出現していない。休眠状態に陥り、潜伏している疑いがある)
擬天使を発見次第、早期的駆除、根絶、殲滅が求められる。
<調査機関 ネフィリム 関係者用資料より抜粋>