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夜、ふらつく

作者: WAIai
掲載日:2026/08/09

ー1人じゃ、淋しい。

佐藤はポケットに手を突っ込んだまま、深夜、歩いていた。

まだ高校生なのだが、勉強がつまらないので、通っていなかった。

唯一の楽しみが、夜ぶらぶらすることだった。

誰も自分に干渉しないし、興味もない。

1人がただ歩いているのみ。

それじゃあ、人間じゃなくてロボットだと思いつつ、石を蹴飛ばす。

「痛っ!!」

え、と思い、顔を上げると、同い年くらいだろうか。

茶髪の少年が足を擦っている。

謝ったほうがいいのだろうかと迷ったが、自分には非はないと、無視しようとする、

「ちょっと待った!!」

少年が立ち上がり、佐藤の行く手を防ぐ。

身長は彼のほうが高く、佐藤はちっと悔しがる。

こんなところに座っているほうが悪いんだと少年のせいにし、睨みつける。

「何だよ?」

「謝れ。痛いだろうが」

「俺じゃない。じゃ」

去ろうとしたのだが、少年が尚も食らいついてくる。

「お前しかいないんだよ!! いいから謝れ」

「謝ったら何かなるのか?」

関わりたくなくて、冷めた声を出すと、少年は顔を覗き込んでくる。

「何だ、その反抗的な目は!! 俺と勝負しろ!!」

「勝負…? 何の?」

「相撲。倒れたほうが負け」

「はっ。馬鹿らしい」

佐藤は一蹴すると、無視して強引に行こうとする。

しかし、少年はしつこく、許してくれない。

「しつこいな。1人にしてくれ」

「嫌だ。俺と勝負。それか謝るか」

「どっちも嫌だ。じゃあな」

「わがままな奴。いいから選べ」

「この…!!」

少年が手を出してきたので、佐藤は避けようとして、後ろに転ぶ。

当然、少年も転ぶことになり、身体が重くなる、

「どけよ!! 重い!!」

「あ? 誰にものを言っているんだよ!?」

少年はまだ怒っているらしく、面倒くさそうに手を振る。

「俺は1人でいいんだよ。…そうやって生きてきたから」

ぼそりとこぼすと、身体を精一杯、押して、立ち上がろうとする。

すると少年が覆いかぶさったまま、言ってくる。

「俺も1人なんだよ。…家の中に居場所がないんだ」

「は…? いいから、どいてくれ」

少年が身体を動かすと、佐藤は手を払い、自嘲する。

「なんだ、お前も1人か。奇遇だな」

「うるせえ。いいじゃねえか。1人でも」

「誰も駄目とは言っていない。…別の人間なのに、群れられるほうが、おかしいんだ」

するりと口から出、まずいと思い、佐藤は立ち上がろうする。

しかし腕を引っ張られ、また座らされる。

「お前、ご飯は…?」

「食べてないよ。テーブルに何もないから」

「何もない…。俺と同じだ」

少年の目が佐藤の言葉で、変わっていく。

目の中に、少し輝く星を見つけたと思った途端、手を差し出される。

「何だ、これ?」

「握手。友達にならないか?」

「は? …あのな」

少年の身体をどかそうとするのだが、細身のくせに力が強く、無駄だった。

「俺、川上という。お前は?」

「…何で教えないといけないんだよ?」

「いいじゃねえか。相棒」

「相棒!? いつからそんなものになった!?」

驚いて大声を出したが、止める人間なんて、誰もいなかった。

聞いているとしたら、真っ暗な空のみで、2人の行く末を優雅に眺めているようだった。

「俺、帰る。じゃあな」

「待てよ、相棒」

「違うって言っているだろうが!!」

しかしいくら否定しても、少年ー川上は離れず、ついに佐藤のほうが折れる。

「ちっ。変なのに捕まった」

「違うよ。俺達が変なんじゃなくて、周りの人間が変なんだ」

「は…? よく分からない」

こめかみを押すと、佐藤は名前だけ告げることにした。

「佐藤だ。また会うか分からないが、覚えておけ」

「佐藤ね。LINE交換は?」

「はあ!? いい加減にしろ」

強く言葉を吐き捨てると、川上は素直にどき、佐藤は身体を起こす。

「じゃあな。1人で楽しめ」

「お前もな。…俺、いつもこの辺にいるから、淋しかったら来い」

「誰が淋しいものか!! ふざけるな!!」

佐藤は怒鳴ると、川上に背中を向ける。

人と喋ったのは、久しぶりだと気づき、顔を顰める。

「何であいつなんか…」

放っておけばいいのに、こんな深夜に1人でいるなんて、何だか不思議な感じだった。

ー自分と同じ匂いがする。

だからつるむのは嫌なんだが、逆に人と触れ合って安堵する自分もいるにはいた。

どうしようかと迷い、振り返る。

「明日、ここにいたら、LINE交換してやる」

「まじで!? やった!! 分かった、待っている」

何だか忠犬みたいだなと思いつつ、歩き出す。

風の冷たさに今頃、気づき、襟を合わせる。

川上のお陰で、忘れていたものを取り戻したような感じだった。

ー全く、俺もお人好しだな。

馬鹿だと思いつつ、足は軽く進んで行くのだった。

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