表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

2/52

第2話:「少々お待ちください」と、魔王様の動きを止める理

第2話をお読みいただきありがとうございます!

今回は勘違い爆発の魔王城編です。楽しんでいただけたら幸いです!

歴史は常に勝者の剣によって紡がれる……そして、この世界における『勝者』とは人間であった。


遥か昔、この異世界は多様な種族に満ち溢れていた。しかし、人間の強欲と憎悪はすべてを変えてしまった。


彼らは人間以外のあらゆる種族——高貴なるエルフ、平和を愛する獣人、オーク、ドワーフまでも——を『魔族』という一つの穢れとして一括りにしたのだ。


亜人たちは脅威として烙印を押され、人間の軍勢によって資源の乏しい荒涼とした辺境の地へと追いやられた。

そればかりか、人間たちは大軍を蓄え、人以外の血族をこの世から完全に根絶やしにしようと企んでいた。


そこで女神は、人間に恐怖を植え付けるため、自身の分身を使って『魔王』という存在を作り上げた。しかし、女神の分身スキルは自律行動ができず、念力で操作する必要があった(見た目は自由に設定可能だったが)。


そして、その絶望の地の中心……そこに聳え立つのが、魔王城である。


呼吸すら凍りつくような重苦しい緊張感。大殿には高位の魔族将軍たちが整然と居並び、全員の視線がただ一点……漆黒の玉座に座る新たなる魔王「リン」へと注がれていた。


その姿はあまりにも神聖で威厳に満ち、誰一人として直視することすらできない。


黒と金のラインが映えるピッタリとしたボディスーツは、彼女の妖艶でスタイル抜群な肢体を惜しげもなく強調している。頭部には重厚で美しい漆黒の竜角が対をなし、そして何より特徴的なのは、オッドアイ——「地獄の血のように赤く輝く紅蓮の瞳」と「神聖なる大海のように澄んだ碧の瞳」であった。


しかし……現実のリンは頬杖をつき、頭の中を空っぽにして呆然としていた。


(はぁ……超眠い。帰ってマンガ読みたいなぁ。ていうか、なんでこの服こんなにピチピチで苦しいわけ? あのバカ女神、胸のサイズ絶対盛ったでしょ……)


その時、静寂を打ち破るように一人の高位将軍が前へと進み出た。


「ガルカス」——全身を鋼の鎧に包んだ体長3メートルを超える鉄血の戦鬼。彼は地響きのような足音を立て、凄まじい殺気を放ちながら大歩で踏み出してきた。


「俺は認めんぞ! 新しい魔王がこんな面妖な格好をした人間の小娘だと!? この大斧でお前の体を真っ二つにし、俺が代わりに玉座へ就いてやるわ!!」


ガルカスは大殿に咆哮を轟かせ、漆黒の炎を纏った大斧を振り上げた。音速を超える速度で一瞬にしてリンへと肉薄し、一撃のもとに命を絶とうと襲いかかる!


——ッ!


他の魔族たちはゴクリと息をのんだ。だが、リンは微動だにせず、まばたきすらしない。

その瞬間、彼女の脳内で女神の自動防衛システムが爆音で警告を鳴らした!


【システム警告:敵意および敵対行動を検知しました】


【イベント順序制御システム(First Priority)を強制適用】


:対象を『少々お待ちください』状態にロックします。


【絶対領域:女神の領域(Absolute Domain)を強制展開】


:対象を女神の領域へ引き込みました。処理完了。


斧がリンの喉元に届く寸前、ガルカスの巨体が空中でピタリと静止した。まるで時間が止まったかのような、恐ろしい斬りかかりの姿勢のままで。


戦鬼の目が極限の恐怖に見開かれる。指一本動かそうとしても、声を絞り出そうとしても、体が1ミリたりとも反応しない。


そして彼の頭上には、黄色いシステム文字でポップアップが浮かび上がっていた。


『少々お待ちください』


(あ……フリーズしちゃった。ていうか、あの黄色い文字何? 「少々お待ちください」って……随分と図々しくて煽り性能の高いロックシステムですね)


リンは呆れ果てながら、目の前に浮かぶ黄色いウィンドウを邪魔そうに細い指でサッと払った。


しかし……戦闘特化型女神によってステータスが100%カンスト(上限突破)されたリンの肉体は、たとえ「絶対貫通攻撃」をオフにしていたとしても、純粋な物理スペックだけで神の領域に達していたのだ。


リンの軽い手振りによって生じた空中の空間衝撃波ショックウェーブが、猛烈な勢いでガルカスの鋼鉄の鎧へ激突する!


——ズドォォォォォンッ!!!!


体長3メートルの巨躯を誇る戦鬼ガルカスは、悲鳴をあげる暇すら与えられず、一瞬にして吹き飛ばされて沈黙した!


大殿に再び、静寂が訪れる……。


次の瞬間、すべての魔族将軍たちが目を見開き、大殿が揺れるほどの勢いで膝を折り、号泣しながらひれ伏した!


「おお……おおおっ! なんという神の領域の御力……!!」


水竜族の将軍が床を叩き、声を震わせて泣き叫ぶ。


「リン魔王様は魔法どころか、身じろぎ一つなさっていない! ただその神聖なる二色の瞳で射抜くだけで、ガルカスの周囲の時間と次元が即座に凍りついたのだ! 頭上に浮かんでいたあの神聖なる黄色の呪印……あれは古の神字で『神威の前に平伏し停滞せよ』と書かれていたのではないか!?」


別の亜人将軍も涙を流しながら激しく頷く。


「その通りだ! しかも、あれは無慈悲な殺戮ではない! 魔王様は溢れんばかりの慈悲をもって、ガルカスに『省察と祈りの時間(待機状態)』を与えられたのだ! その上で、一振りの指先だけで叛逆者を天空へと追放なさった……なんという美しく、気高く、万物に満ちたご慈悲……!!」


「オオォォォン! 慈悲深きリン魔王様! 時間を統べし理の覇者よ! 我らこの魂が砕け散るまで、貴方様に忠誠を誓いますぞ!!」


数千の魔族たちの讃美と歓喜の号泣が、魔王城全体を揺るがした。


玉座に座るリンはオッドアイをパチパチさせながら、心の中で盛大にため息をついた。


(……お兄さんたち、盛大に勘違いしすぎてます。でもまあ……説明するのも面倒くさいですし、このまま泣かせておきましょうか)


【通知】

『アップグレードバージョンのアップロードが完了しました。スキル【女神の分身】が使用可能です。女神の領域内に敵が侵入した場合、自動的に分身を生成して迎撃します。分身は本体と同等の能力とスキルを保持し、完全に自律行動が可能です。』

第2話をお読みいただきありがとうございました!

魔王様の圧倒的な(うっかり)力に、配下たちの勘違いが加速していきます(笑)

もし「面白かった!」「続きが気になる!」と思っていただけましたら、

ページ下部の【ブックマークに追加】や評価(★★★★★)で応援していただけると大変励みになります!


次回、いよいよ human 側の動きが……!? どうぞお楽しみに!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ