第四話 未完了のタスク
薬を飲んで、出勤する。
机の上に、書類が溜まっている。
落ち着いて、ゆっくり処理するつもりで。
手を、付けられていない。
そろそろ。
今日こそ。
そう思っているのに。
毎日、紙が、増えていく。
「佐倉さん、電話です」
「…あ、…はい」
転送された電話に、出た。
他部署の人。
「今日、10時からのお約束だったと思うんですが…」
PCの日付を見る――2月18日。
モニター横の、付箋。
『2/18 10:00 会議室4』
時計は――10:10を指している。
「……すみません、すぐ伺います…!」
「よろしくお願いします」
会議室まで、速足で歩く。
予定は分かっていた、はずなのに。
今日が、何日か、分かっていなかった。
会議室の扉を開け、頭を下げた。
終業時間。
今日も、手つかずの書類。
「…明日こそ、やろう」
今日も増えた紙をそのままに、デスクを離れた。
帰宅後、夕食の準備をする。
食器棚を開けたとき。
朝の、残ったおかずが出てきた。
「…なんで、食器棚にあるんだろう」
冷蔵庫に入れたはずだった。
一日放置したから、もう食べられない。
生ごみとして、処理した。
夕食を終えて。
リビングのテーブルにつく。
『交流』をしなくては。
お昼休みに、アプリを開いたのに。
文字が打ち込めなかった。
さぁ、「こんばんは!」って、打たなくちゃ。
「――あおい?」
夫の声に、振り返る。
何に、驚いているんだろう。
「寝てないのか?」
「これが、終わったら、寝ようと思ってるよ」
夫の表情が、強張った。
「FPOのアプリ……?」
「うん。タスク、毎日、ぜんぶ緑にしなきゃ。…あれ?」
終わったはずのタスクが、黒にもどっている。
ぜんぶ、黒。
「おかしいな? ちゃんとしたのに」
やったのは、夢だったんだろうか。
だったら、今からやらなきゃ。
「…朝ごはん、作らなきゃ」
立ち上がって、キッチンへ行こうとして。
そっと、抱きしめられた。
「…あおい。……気付かなくてごめん……」
どうしたんだろう。
そんなに、泣きそうな顔をして。
困って、視線を泳がせた。
窓の外が、明るい――朝がきている。
朝ごはんの、準備をしないと。
『お子様の準備』を、緑にしないと。




