第三話 お母さんのためのウェルネスプログラム
頭痛がする。
じわじわと、締め付けられるような。
頭痛薬を飲む。
毎日、8時間ごと。
スマホに、通知。
「お母さんのためのウェルネスプログラム、始めませんか」
ウェルネス――よりよく生きるための、なにか。
母親の健康も、こどものために大事。
きっと、他のみんなも参加するだろう。
あおいは、『参加』ボタンを押した。
タスクの下に、『ウェルネスプログラム』が追加された。
健康的な食事、大丈夫。
適度な運動、大丈夫。
メンタルの評価、大丈夫。
全部、緑。
大丈夫。
土曜日、午後。
アプリで、面談の時間。
画面の向こうで。
担当者が、穏やかに笑っている。
「お困りのことはありませんか」
最近、少し、疲れている、かも。
頭痛とか。
でも、――話したら、長くなりそう。
あおいは、笑顔を浮かべた。
「大丈夫です」
担当者が、笑顔で頷いた。
大丈夫。
これで、評価は、ふつう。
帰り道、スーパーに寄る。
カートを押しながら、残りのタスクを考えた。
お昼、面談をしたから『交流』が未達成だ。
早く帰って、終わらせないと。
なのに、献立が決まらない。
目についた、ネギトロを手に取った。
夕食の時間、夫が不思議そうに呟いた。
「あれ…またネギトロ?」
「割引で、つい、買っちゃった…ごめん」
曖昧に笑うと、夫は「好物だから、大丈夫」と笑った。
「疲れてる時は、無理しないでね」
「…ありがとう」
夜。
できていなかった『交流』を行う。
いつもと、違う人たちがいた。
手を、口から離した。
今日も、全部、緑になった。
画面を消して、目を閉じた。




