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港町での出会い
リディア6歳。父の視察に同行し、初めて港町へ足を踏み入れた。海の匂いが強くて、風もざらざらしている。教会とは違う雰囲気。賑やかな商人の声、行き交う馬車、普段見たことのない人種が行き交っていた。私は好奇心で目を輝かせていたが、途中で妙なざわつきを感じた。
人々の視線が一部だけ避けている場所がある。薄暗い路地。父が軽く眉をひそめた時、私は小さな声を聞いた。
『……助けて』
精霊の声ではなかった。泣き声でもなかった。けれど、確かに心に刺さるほど弱っていた。
路地の奥には、鉄の檻。中で少年が倒れていた。腕も足も痩せて、血もにじんでいる。奴隷商人が言った。
「こいつはもう使えん。処分する」
その言葉に、全身が熱くなった。
“今しかない。ここで届かなかったら、何のために魔法を学んできたのか。”
私は父を見上げた。父は無言で頷いた。
檻の前に立つ。少年の目は焦点を失っていた。私は膝をつき、そっと手を伸ばす。
詠唱。優しさ。気合い。
全部を心に乗せた。
「お願い……この子の痛みを、どうか癒して…!」
光がゆっくりと少年を包む。
震える指先が、少しだけ握り返してくれた。




