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気合いヒール、炸裂
その日、教会の空気は少しざわついていた。
5歳の私はいつもの通り、治癒魔法の訓練として平民の人々を癒していたが、
ふと視線を感じて振り返ると――
そこにいたのは、旅人のような服装の美しい少年だった。
髪は乱れ、膝には浅い傷。
歩き方も少しぎこちない。
けれどその瞳は驚くほど澄んでいて、
胸の奥がどきっと揺れた。
(え、めちゃくちゃ綺麗……!)
その時、父ヒロージが少年の名を低く呼んだ。
「第二王子アイキム殿下」
まさかの家出中だったらしい。
すぐに父は信頼できる使者を呼び、
王宮へ早馬で知らせを送った。
私は深呼吸した。
詠唱・優しい心・気合い。
全部そろえる準備はできていた。
(気合い!気合い!!気合い!!!!!)
「……どうか、ヒールッッッ!」
光が大きく広がった。
傷だけでなく、顔色まで晴れていく。
周囲の人々が驚くほど、
古傷の跡まで完全に消えてしまった。
アイキムは静かに目を見開いて言った。
「……ありがとう」
その声を聞いた瞬間――
心臓が跳ねた。
「美少年に傷なんて世界にとって大損失ですからね!」
私は少しだけテンションがおかしくなっていた。
これが、
私と第二王子との最初の出会いだった。




