教会での初めての実戦経験
リディア5歳。今日は朝から少しだけ緊張していた。
父と一緒に、郊外の教会へ向かう日だからだ。
この教会では、病気や怪我の人が集まる。
そこで治癒魔法の実践経験を積むのが、
今の私の大切な修行になっている。
今日は人がいつもより多かった。
私は父の背中の影に隠れながら、
そっとここに集まっている人達の表情を見つめる。
痛そうな顔。疲れた目。
治りたいと願う気持ちは、空気そのものになっていた。
胸がむずむずして、心が熱くなる。
――よし。
気合い。大切やからね!
頭の中で何度も唱える。
“気合い入れます!気合い入れます!気合い入れます!”
精霊魔法は今回は使わない。
聖魔法だけ。
詠唱と、優しさと、気合いだけでやる。
私は腕に小さな傷を負った少年の前に立つ。
そっと小さな手を伸ばし、深呼吸。
少年の痛みを思い浮かべてから、
小さく詠唱した。
「どうか、痛みがやわらぎますように……ヒールッ!」
そして最後に、思い切り心の中で叫ぶ。
“治れえええ!!!”
ほんのりと光がにじみ、少年の腕に触れた。
目に見えるほどの回復ではなかったけれど、
少年は顔を上げて笑ってくれた。
その笑顔が、今までのどの訓練よりも力になった。
聖魔法は、相手の回復を気合い込めて願うことから始まる。
団長の言葉が、やっと胸の奥で光に変わった気がした。




