表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

短編小説どもの眠り場

隠れた名作ってやつを、見つけちゃった

作者: 那須茄子

 私はVTubeというお仕事をしている。

 名は「月影まどか」。月影という姓は、月の影のように儚く、まどかという名は円満を願ってママが命名した。だが、現実の私は儚さも円満さも持ち合わせてはいない。



 さて、昨夜の配信。

 私はリスナーに「次はどんなゲームが見たい?」と尋ねた。コメント欄は瞬く間に祭りのように賑わい、「ホラー!」「謎解き!」「泣けるやつ!」と、まるで文化祭の出し物を決める高校生のように盛り上がった。

 私はその熱気に当てられ、配信終了後、深夜のゲーム探索に乗り出したのである。


「リスナーのためならば、私はいかなる苦難も厭わぬ!」


 そう深夜テンションのノリで叫びながら、私はSteamの海を泳ぎ、Switchの森を彷徨い、PSストアの山を登った。

 どれもこれも既視感のあるタイトルばかり。私は焦った。焦りすぎて、冷蔵庫のプリンを三つも食べてしまった。


 そして、やっと、ちょっと変わったインディーゲームを見つけた。タイトルは『夢見町の郵便屋』。ジャンルは「配達型感情探索アドベンチャー」。なんだそれは。私はその不思議な言葉の並びに惹かれ、即座に購入した。


 早速やってみた。

 ゲームの操作自体は超簡単だったが、住人の感情の機微を読み取って正しい手紙を渡すというこのゲームならではのシステムに躓いてしまった。そこが肝心だったのに。私は何度も何度も間違え、住人に嫌われ、郵便屋としての信頼を失った。


「こんなはずでは……!」


 いつの間にか沼っている。一瞬このまま諦めて、新しいゲームを探した方がいいのかとも思った。だが、諦めるわけにはいかぬ。リスナーの「まどかちゃんの実況で泣いた!」というコメントを夢見て、私は再び立ち上がった。


 それから三日三晩の鬼修行の末、私は完璧な郵便屋となった。住人たちは私を信頼し、手紙は涙を誘った。まぁ私から出た涙は嬉し涙だったかもしれない。


 配信当日、私は満を持して『夢見町の郵便屋』を起動した。リスナーは最初こそ「地味そう」と言っていたが。物語が進むにつれ、コメント欄は静まり返り、やがて「泣いた」「心が洗われた」といった言葉が並び始めた。


「でしょ、皆? 隠れた名作ってやつを、見つけちゃった!」



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
郵便やさんが手紙を届けるなんて、小説に感想を贈る行為に似ていますね 相手と一致する文を手渡せば成功というゲーム、実在すれば良いですね
2025/08/23 05:01 甘口激辛カレーうどん
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ