妖精の森
完結しています。
今回も番外編です。
ここは妖精の森。
妖精が招いた者しか立ち入る事が出来ないとされている。
そこには現在妖精と悪魔が一触即発な雰囲気で睨み合っていた。
「さて、随分と面倒な事をしてくれましたね。貴方方が誘拐したのは魔王様の宝物ですよ?詫びを入れたくらいで許されるとは思わない事ですね」
「そうそう、俺達も全員無理矢理呼び出されてよー。本当にいい迷惑だわ」
「この際悪趣味なこの森も全部焼き払っちゃえばいいんじゃなーい?」
『魔王様の宝物?あんな子供が?それに悪魔とは真逆の性質だった!そんな訳ないだろう!』
『そうだよ!キラキラしててすごく綺麗だった!』
『魔王様はこわかった…』
『あのふわふわ頭にまたのりたい』
「黙りなさい。セツさんは神も狙っている天使候補ですが、魔王様はそれを取り返したんですよ。あんなに執着されて同情しますが、そんな人を貴方方は誘拐したんですよ。いい加減不味い立場だと理解しなさい」
「なあ、もう話は良くないか?全員ぶち殺せば魔王様も満足だろう?」
「そうよねぇ。最近暴れられる場所も限られててストレス溜まってたのよねー」
『ちょっと待ってよ!知らなかったんだって!もうしない!』
『ちょっとおしいけど、しないよ!』
『おとなしくしてる』
『いずみ もうちょっとだったねー』
「ほう。泉に入れて妖精に落とそうとしたんですか?はぁ…本当にセツさんは人ならざるものに好かれすぎですね。そんな事を魔王様が知ったらどうなるかお分かりですか?泉は一滴残らず蒸発させ、その後この辺り一帯は一切草木も生えない不毛の土地になるでしょうね。そして、貴方方は不死の魔法をかけられて永劫拷問にかけられるという感じでしょうか?」
『もう二度と手をださない!やくそくする!今回はみのがしてー』
『ひぇ…』
『うぇーん…』
『あくまこわい』
「先程貴方方も聞かれていた通り、私は魔王様にこの件を任されたのですよ。妖精が口約束で、もう手を出さないと言っていました。では私の信用に係わるのですよね。お分かりいただけますよね?」
『私たちを殺す気なの!?』
「そのつもりなら最初から無駄口を叩く暇を与えずに殺っていますよ」
『私たちに差し出せるものなんてない…どうするつもり?』
「あるじゃないですか。下らない事にしか使っていない魔法が。私達ならばもっと有意義な使用方法を考えられますよ?私達悪魔の魔法は少しばかり威力が強かったり、やり過ぎてしまう事が多いんですよ。殲滅するのには向いていますが、程々に手加減が必要な場合にはあまり向いていないのですよ」
『私たちの魔法を魔王様が必要な時に使えばいいの?』
「そうです。ですが、流石に首輪なしではいつ逃げられるか分かりませんので、契約をしていただきます。この契約に背かない限りは貴方方は安泰ですよ。今まで通りにこの森に住むのも自由です」
『はぁ。分かった。契約すれば今日の事はチャラって事だよね?』
「えぇ。契約内容は魔王様や私が呼び出した時には必ず応じる事。そしてその力を尽して命令に応じる事。どうせ毎日暇を持て余しているでしょうから罰にはならないかもしれないですね」
『私たちは自由を愛しているんだ!こうやって縛られるのはいやだ!…でも魔王様はこわいから契約する』
「そうですよ。何事も命あってのものです。これに懲りたら二度とセツさんには手を出さないで下さいね。魔王様は私のように優しくはありませんから。」
『ねえ、これ契約期間が書いてないんだけど?』
「私も忙しい身ですので、契約を結ぶ気ならお早くお願いしますね。という事ですのでジャック、ヴァンスご苦労様でした」
「へいへい。次はもっと面白い事で呼び出してくれると嬉しいぜ」
「もうっ!1匹くらい殺らせてくれてもいいのにー」
こうして無事に血が流れる事もなく平和に妖精を魔王様の勢力に引き込む事に成功した。
「…。という事になりました。妖精の魔法は眩惑に長けていますし、捜し物も得意ですのでセツさんの守りにも役立てると思われます」
「そうか、よくやった。俺があの場にいたら、そのまま全てを消し炭にしていた可能性が高いからな。ゴートに任せて正解だった」
「お褒めに預かり光栄です。ですがまさか妖精が出てくるとは想定外でした。他にも人外の種族の接触がまたあるやもしれません。セツさんには妖精を1匹付けておいてもいいかもしれませんね」
「妖精という種族の事はよく知らないが、セツに害はないんだろうな?」
「その辺りはこれから教育をいたしますのでご安心下さい。セツさんにも気取られないよう眩惑魔法で存在も隠して付かせますので。奴等は少々イタズラ好きですので、くれぐれもセツさんに危害を加えないように今から教育を始めます」
「ああ。もし無理そうなら呼んでくれ。セツに危害を加える事が如何に愚かな事なのかを俺が直々に教えてやる」
「承知致しました。その点も含めて妖精には言い聞かせて参ります」
「ご機嫌よう。今日も暇を持て余しているようで何よりです」
「はぁーい!わざわざ来てやったわよー」
『ちょっと!何で勝手に入って来てるんだよ!』
『ここってぼくたちが呼ばないとこれないんじゃないの?』
『うわぁ、悪魔がまたきた!』
『ふわふわ頭はー?』
「早速魔王様からご命令がありましたので心して聞くように」
『無視するなよー!君はきらいだ!』
『魔王様ってなにしてるの?』
『むずかしい事は分からないよー』
『いずみ入る?』
「只今よりヴァンスが貴方方の教育係になりました。ヴァンスの言葉は魔王様のお言葉として受け取るように。もし思うように貴方方の教育が進まない場合、魔王様が直々にご指導して下さるようです」
「ンフッ。そういう事。よろしくねー」
『チェンジで!』
『筋肉どうなってるの?』
『なんだか服がはち切れそうだよ…』
『んふっ!』
こうして妖精はセツ親衛隊になるべく徹底的にヴァンスによって教育をされていく事になった。
日々自由気ままに遊び歩いていた妖精は反発をしていたが、毎日ヴァンスに扱かれて次第に様相が変わっていった。
数ヶ月後にはヴァンスの言葉に忠実に従う軍隊のような妖精の姿があった。




