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『鎖の英雄と影の女王』……の次回作  作者: 朝来終夜
第1巻 『鎖の英雄と影の女王』、完結。そして……【2025年3月7日完結】
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第27話 ラスト・ショット

 誠に勝手ではございますが、今後も隔週での投稿を目標に執筆させていただきます。本当に申し訳ございません。

 今後ともどうぞ、よろしくお願いいたします。

 その大きさは、エミルが従える岩人形(アダム)にも匹敵した。いや、琉那があえて、同じ大きさになるよう顕現させたのかもしれない。

 いずれにせよ、その牛人の召喚獣……牛頭の獣人(ミノタウロス)が相撲の取り組みよろしく、無機物の塊である岩人形(アダム)へと突撃していく。

「『消―(ステ―)』、っ!?」

「させませんっ!」

 車の助手席から、マーセリットが9㎜口径自動拳銃(Cz75)を構え、容赦なく引き金を引いた。本人には『とにかく身体の中心を狙え』と伝えてある。的が大きくなる分、当たりやすいと考えてのことだ。

 無論、致命傷になるかは正直賭けだが……当たりさえすれば、後は健一達がどうにかできる。だからマーセリットも気にすることなく、エミルに向けて連射していた。

 そして……あの老科学者が自ら従えている岩人形(アダム)ごと、琉那の召喚獣を消し去らないようマーセリットが牽制している間に、健一とシルヴィアはルーフから飛び降りて駆け出した。

「『影束拘具(コンストレンジェイ)』!」

「っ! ……『消去(ステルジェ)』っ!」

 防いでいるとはいえ、やはり指揮しているのがエミルだけでは、選択肢が限られてくるのだろう。いや、この場合は『連続的に対応する余裕がない』と言うべきか。

 いずれにせよ、多対一の状況の内にできることは積極的にするべきだ。

 シルヴィアの『影』の帯とマーセリットの援護射撃に隠れつつ、健一は今もなお、岩人形(アダム)と競り合っている牛頭の獣人(ミノタウロス)の背後へと回った。


「『鎖操芝居(マリオネタ)』……『(ミザ)境界()(ホタ)』っ!」


 牛頭の獣人(ミノタウロス)細工(・・)した後、健一は組み合っていた岩人形(アダム)の足に向けて放った鎖の杭が届く直前に軽く操作し、その両足へと器用に絡ませていく。




(あやつめ……今、何かしたように見えたが……)

 両足に鎖を絡ませ、縺れた隙をついた牛頭の獣人(ミノタウロス)が、岩人形(アダム)を押し倒したのはまだいい。ただ、あの『鎖の英雄』が『鎖』のついた杭を放つ前に、牛頭の獣人(ミノタウロス)の背後で何かをしているように見えたのが、どうしても気になってしまう。


「『鎖状成形(トルナーレ)』っ!」

「『影状成形(トルナーレ)』っ!」


 しかし、同時に放たれた『鎖』と『影』により生成された武装の方に、エミルの意識は逸れてしまった。

(魔力の素を介している以上、『消去(ステルジェ)』を使われれば意味がないことは、奴等も理解しているはず。つまり、それらが『Adam(アダム)』対策ならば……)

「……狙いは儂かっ!?」

 健一達は答えることなく、未だに瑠奈が駆っている自動車のルーフへと飛び乗っていく。牛頭の獣人(ミノタウロス)に『鎖』帷子と甲冑を模した『影』を纏わせ、自分達は牽制しつつ『消去(ステルジェ)』を防ぐ算段だと、エミルは内心で結論付けた。

(召喚者らしき女は、自動車の運転もしている。単純な命令しかできぬのならば、牛頭の獣人(ミノタウロス)は力任せに突進するのが精々……いや、『鎖の英雄』めっ!)

 健一の思惑を察知したエミルは、自身が乗る岩人形(アダム)を除く、残り全てを武装した牛頭の獣人(ミノタウロス)へと差し向けた。そしてすぐに、健一達の乗る自動車へと転身する。

 相手と同様に、直接攻撃の狙いもあるが……本命は健一だった。

(あの召喚者の代わり(・・・)に、召喚獣を操るつもりか。しかし……)

 旧式の『Adam(アダム)』が壊された理由は、厳密に言えば、体内に打ち込まれた『鎖』を強引に操作された結果に過ぎない。つまり、『鎖操芝居(マリオネタ)』本来の用途であの牛頭の獣人(ミノタウロス)を操り、少しでも数の優位性を崩そうとしているのだ。

(……種が分かれば、簡単じゃな。さすがにあそこまで、高性能の拳銃を持ち出されるとは思わなかったが……『Adam(アダム)』で防げる程度であれば、問題なかろう)

 未だにマーセリットから銃撃を受けているが、銃弾がエミルに届く気配はない。むしろ、背後から迂回して飛んでくる『鎖』を防ぐ方が厄介だった。唯一の救いは『影』が来ないことだが、それも時間の問題だろう。

(とはいえ、これ以上数を減らすのは愚策か……さて、さて)

 そして、埒が明かないとでも思ったのだろう。とうとう、『影の女王』自らが『影』を纏いつつ、前進してきた。

「『影龍転身(トランスフォルマーレ)』っ!」

 巨大な黒龍が、牛頭の獣人(ミノタウロス)と共に前進してくる。次々と、薙ぎ払われこそするものの……どちらも、岩人形(アダム)を破壊できる程の威力を持ち合わせてはいない。

「無駄なことを……」

 大方、痺れを切らして戦力を並べ出したのだろうが、未だにエミルの方が有利だ。

 その証拠に、相手の駆る車がとうとう、その動力を止めてしまっている。

「降りろっ!」

 健一の声を合図に、車に乗っていた二人もまた飛び降りると、車から離れていく。その間も攻撃が途切れることはないが、あくまで牽制にしか成り得ていない。


「『鎖榴散球(スキージェ)』っ!」

「――――ッ!」


 ただ、変わったことがあるとすれば……牛頭の獣人(ミノタウロス)の行動パターンが、二種類に分かれたことだろうか。とはいえ、健一が攻撃を繰り出している時点で、今は誰が操っているのかなど、考えるまでもない。

(あの召喚者が操っとるのか……浅いわ)

 考えられるのは、片方が意識を向けられない間は、もう一人が牛頭の獣人(ミノタウロス)の操作を担っているということだ。けれども、エミルから見れば完全に悪手である。

 迷うことなく、飛んできた『鎖榴散球(スキージェ)』を防いだ後、岩人形(アダム)達を運転手の女へと向かわせた。ただし、エミルを乗せた個体だけは、一定の距離を保っていた健一へと向けて、一息に詰めさせていく。

「『(ミザ)()』……っ!?」

 また逃げ出される前にと、放とうとしていた鎖を岩人形(アダム)の剛腕を伸ばさせて、力任せに断ち切らせる。しかし健一は、腰に帯びた聖剣『エスファンダ』を抜きつつ、あえてエミルの傍へと駆け寄ろうとしていた。

(近付けば、魔力の素を消さないとでも思ったか……)

「…………馬鹿めっ!」

 たしかに、『消去(ステルジェ)』を使えば自身も魔法を使えないどころか、今乗っている岩人形(アダム)すら消え去ってしまうだろう。


「『鎖榴散球(スキージェ)』っ!」

「『消去(ステルジェ)』っ!」


 だからと言って、使わない道理はない。

 一瞬無防備にはなるが、『影の女王』や牛頭の獣人(ミノタウロス)、そして、他の女達には『消去(ステルジェ)』の影響範囲外にいる岩人形(アダム)が固まって押し寄せることで、動きを制限させている。その上、先程まで飛んできた銃弾の射線を潰してしまえば、もうエミルを止める手段はない。

「儂を、ただの科学者だと見縊ったのが敗因じゃな……」

 単発式で、しかも作りが雑。それでも、銃器と呼べる物位は持ち合わせていた。エミルは冷静に、相手が魔力の素を使った瞬間を狙って放った『消去(ステルジェ)』の中、一時的に魔法が使えなくなっている健一へと、取り出した拳銃の銃口を向けた。

「これで、決まりじゃな……」

 そして引き金は、静かに絞られていく。


「ああ…………お前がな(・・・・)


 健一の言葉の次に、銃声が鳴り響いた。しかし……銃弾を吐き出したのは、エミルの持つ単発式の粗悪銃ではない。

「がっ!?」




「…………はぁ、疲れた」

 最初から(・・・・)召喚獣の操作を放棄し、喚び出しただけ(・・)牛頭の獣人(ミノタウロス)を操っていなかった琉那が放った銃弾は真っ直ぐに、老科学者の肩を撃ち抜いていた。

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