おまけ 1
寮に帰宅した二人のやりとり。
◆デキる契約獣の気遣い
「お土産も買ったし、荷造りもできたし。後は帰るだけ!
オセロ、明日は朝早く出発するから。そのつもりでね」
「へーい。ところでユディ、いい知らせと悪い知らせ、どっちから聞きてえ?」
「突然、なに? ええと、じゃあ……悪い知らせから」
「おまえの荷造りは全部ムダ」
「えっ!?」
「いい知らせは、俺って転移魔法使えるから馬車に乗ったり歩いたりしなくても、この部屋から家まで一瞬で移動できるってこと。
なんならこの部屋と実家を魔法で繋いで、扉開けたら実家ってのもできるから、荷造りの必要なし」
「あ、そっか!
オセロが時空系の魔法使えるの、頭から抜け落ちてたや。
そもそも使える人少ないから、選択肢に入れた行動なんて考えたことなかったし」
「なんかおまえ、すごい一生懸命準備してるからさ。
やる気削いだら悪いなって思って、今まで黙っといた」
「最後に私の努力をあざ笑うために?」
「おまえ楽しそうに荷造りしたり土産物買ったりしてるし、俺もそれ見て楽しいから、黙ってただけ。
おまえも俺も幸せなんだから、わざわざいうことないよなって」
「私、今、全部の準備がムダだって知って、不幸にどん底に突き落とされてるんだけど、それについては?」
「二人全体で考えればプラマイゼロだから無問題」
オセロに悪意はかけらも見当たらなかったが、ユディは納得できないものを感じた。
◆ひよっこ主人の願い
「オセロは本当にすごいね。
荷物は収納できちゃうし、転移できちゃうし。
馬いらずだね。感動する」
「もう一度いうけど、俺様に感動するポイント、他にもっとあったよな?
荷物持ちと足代わりの二点にだけ価値を見いだされたのは初めてだよ」
「でも家には自分の足で帰りたいな。
私、叶えたい長年の夢があって」
ユディは『月刊・召喚ライフ』の表紙を見せた。
召喚士は背負った荷物にちょこんとピクシーをのせている。
「召喚士っていったら、やっぱりこの姿だよね。
私も道中、肩や荷物に契約獣を載せて見せびらかしたい!」
「ミーハーめ」
「それで、できればオセロには明日、小竜の姿になっていて欲しくて」
「馬代わりの次はマスコット扱いかよ」
「これは全召喚士が一度は憧れるスタイルだから。お願いします!」
「おまえ、今まで俺を召喚してきた召喚士どもに一回ずつ刺されろ」
王獣なみの魔獣も単独討伐可能、神獣クラスの枷も破壊する契約獣は、主人の己の活用法について納得できないものを感じた。
◆逆転
主人の懇願を聞き入れて、オセロはヒト型から姿を変えた。
「わあっ、シロの黒バージョンだ!」
「明日、俺様、自分じゃ絶対歩かねえからな。おまえが運べよ」
「うん、全然いいよ。喜んで家まで運ばせてもらうよ。
外でオセロって呼ぶのはまずいから、シロ、いや、クロって呼ぶね。
そろそろごはんだね、クロ。何食べたい? おやつもあるよ?
食後はお休みタイムだよね。ベッドの用意しておくね」
「おまえヒト型のときと態度違いすぎだろ」
「だって、幻獣姿の方が好きなんだもん。
ずっと家族の幻獣のお世話してきたから、幻獣を見るとお世話しなくちゃって思っちゃうし。
はあ、黒色のウロコもすてきだね、クロ。黒いオニキスみたい。
でもちょっと曇っちゃってるね。
うろこ磨いて良い? その前に一緒にお風呂入ろっか」
「風呂はイヤ。おまえ昔、浴槽に俺を落とした前科があるからな」
「そんなことあったね。あの時はごめん。今度は落とさないから」
「ヒト型ならいいぜ」
「え? ヒト型はちょっと……ああっ、戻らないで! 脱がないで!」
「あ? 同じだろうが。幻獣の時は全裸だぞ」
「そうだけど、違うよ! だいぶ違うよ! 服着て、服!」
「……………ほおお?
おまえ、アレだな? 俺をペット扱いしてんな?」
「そ……そんなことは」
「ユディ、犬かネコかウサギ、どれがいい?」
「どれも好きだけど?」
「ウサギにしとくか。鳴かなくて静かだもんな。レッツ・チェンジ」
「へ? ―――――!!!?」
「おー、かわいいぞ、ご主人サマ。
どうだ、ユディ。ウサギになった感想は」
「(戻して!)」
「すこぶる快適? よかったよかった。
その姿なら、一緒に風呂入るのも抵抗ないだろ?
じゃ、行くか、ユディたん」
「(ユディたん!?)」
「そんなにくっついて。愛いやつ愛いやつ。
きれいに洗ってやろう」
「(バスタブの底に足がつかないから、しがみついてないと溺れそうで不安なんだってば!)」
「乾かしてブラッシングもして、完璧!
いい毛並みになったな。
腹毛とかイイ感じじゃん。無限お触りしたくなるな」
「(お腹の肉までつかむのはやめて!)」
「おい、暴れんなよ。
おまえだって俺様を好き勝手触りまくったろうが。
今度は俺の番だろ。
へー、匂いって体の部位ごとにちょっとずつ違うもんだな。おもしれー」
「(ひやああああああ!)」
「じゃ、次はメシの時間だな。
おら、食え、ユディたん。もっと食え。もっと太れ。
丸々してる方がおいしそう、じゃなくて、かわいいからな」
「(今、完全に肉食獣の目をしてた)」
「さ、食べたし。寝るぞ、ユディたん。こっち来い」
「(わあああん、これいつまで続くの?)」
「……ふーん、人の世話って意外と楽しいもんだな。
夏休み中、このままおまえを飼育してやろうかな」
「!?」
「ひひひっ、たまには立場逆転ってのもいいだろ?」
オセロはひたすら撫でたり鼻を寄せて匂いを嗅いできたりする。
ユディは調子に乗りすぎたことを深く反省した。




