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予言

作者: 池野華龍

 仕事帰りに買ったビールを俺は冷蔵庫に入れた時、スマホの電話がなった。かけ主は不明。俺は一瞬不審に思ったが、仕方なく電話に出ると老人の声が聞こえた。

「私は未来のお前だ。」

「は?」

俺はその言葉を疑った。

「まあ信じないだろうけどな。」

「当たり前だろ。知らない人にいきない未来人、しかも未来の俺ってびっくりするに決まっているだろう?」

「なら予言しよう。お前はこれからビールを飲もうとしている。」

「メーカーは?」

「弁財」

見事にビールの銘柄も当ててきた。

「どうだ、これで私が未来のお前だってわかっただろう?」

「いや、まだ信じないね。」

「そうかそうか。じゃあこれから3日間、毎日お前の未来を当ててやろう。もしすべて当たったら俺が未来人だと信じてもらおう。」

「まあ、いいだろう。」

「それでは、さっそく予言だ。明日お前は仕事場でガムを踏む。」

「ふん。当たるといいな。」

俺はその言葉を気にせず、ビールの蓋を開けた。

 不思議な電話があった翌日、俺は上司に怒られていた。怒られたあと、フラフラと自分の机へ向かった。

「ぐっ。」

途端に足が上がらなくなったので足元を見ると、ガムを踏んでいた。その時俺は昨日の電話を思いだした。まさか偶然だろうと思いこんだが仕事中頭から離れることはできなかった。

「犬山先輩、大丈夫ですか。」

俺の名前を呼ぶのは後輩の、城井だった。

「おう。」

「本当ですか。なんか切羽詰まっているようですが。」

「少し上司に激怒されてな。」

「そうですか。」

城井はそう言って仕事に戻った。

 俺は家に帰って冷蔵庫を開けた頃、スマホが震えた。

「お前か。」

「未来の自分にお前呼ばわりか。随分偉そうだな。」

「・・・。」

「どうだ。ガムを踏んだだろう。」

「・・・、ああ。でもまだ信じないぞ。」

「そうか。じゃあ今日の予言だ。明日お前は、パソコンのデータが消える。しかもその後、上司が怒る時、今日こそ覚悟はできているだろうな。で始まる。」

「・・・。おい。」

俺は電話を切ったあとも、予言のことを考えていた。

 今日、1日中パソコンから離れずに作業していた。お昼休憩もパソコンから離れずに食事をしていた。しかし、家に帰ろうとした時、まさか俺が今日始めた企画のデータが消えた。会社の共通のファイルに入れたわけでもなく、自分のファイルに保存したため誰かが消したとは限らない。つまりこのパソコンの不動作ということだ。

「嘘だろ・・・。」

帰り際の上司を怒らせ、残業する羽目になった。そして恐ろしいことに上司は、今日こそ覚悟できているだろうな。という言葉で怒り始めた。

 家に帰ると早速電話がなった。

「お前の予言は当たっていたよ。」

「だろう。」

「・・・、だがまだ信じないぞ。」

「そうか、では明日お前が合う運命は・・・。」

「なんだ。」

「すんでのところで車に轢かれかけ、同僚の骨川に告白される。」

未来予言をしたすぐあとにやつは電話を切った。

 さて、壮大な予言を聞いた次の日、俺はタクシーで出勤した。そしてできる限り人と話さないように仕事をした。

「よっしゃ、あいつの予言は外れたぞ。」

俺は1日中あいつの予言どおりにならないように行動してきた。仕事帰り俺はそう呟いて会社から出た。タクシーの停留所へ向かおうとしたその時であった。目の前に車が来た。俺は死を覚悟したが、車は間一髪で停車した。そしてそのあと、俺のもとに駆けつけたのは同僚の骨川だった。

 骨川と付き合う事になった俺だが、俺はすぐに自宅に帰った。すぐあいつに電話をかけたかったがあいつの電話番号は知らなく、途方に暮れていると、あいつから電話がかかってきた。

「おい、お前。」

「落ち着け落ち着け。間一髪だっただろう。」

「ああ。」

「俺が未来のお前だって信じるか。」

「もちろん。あんなに未来が当たるのは未来人以外ありえない。」

「じゃあ、これから大切なアドバイスをするぜ。」

俺はそいつの言うことに息が詰まりそうなほど驚愕した。

 次の日、俺は骨川と別れ会社もやめて家に引きこもった。あいつはこのままだと俺は骨川に半殺しにされると言った。喧嘩をして彼女の沸点は一気に超えるらしい。そしてあいつは会社をやめて骨川と別れろと言った。昔の俺だったら信じなかったがこの3日のことで信じるのが賢明と考えた。



 犬山先輩は職場をやめた。犬山先輩は辞表を出す時の表情はまるで何かに迫られているような感じだった。私は「あること」を報告するために指定された場所に向かっていた。

「あ、城井さん。こっちこっち。」

「骨川先輩。」

「・・・、どうも。」

そこには上司の骨川さんと、今回の重要人物の原さんが先にいた。

「原さん、あいつは引きこもりました。もうしばらく家から出られないでしょう。」

「復讐は完了しました。」

「・・・、ありがとうございます。」

「では、料金をいただきます。」

 原さんは学生時代犬山さん付き合っていた。しかし犬山さんは原さんに暴力を振るっていた。そのことから、原さんはトラウマを抱えて生きることになってしまった。原さんは犬山さんに復讐を私達、「何でも屋 AE」に依頼をしてきた。それは見事に私が勤務している会社だった。上司にも協力してもらって犬山さんを追いやることに成功した。

 私達は、「彼は殺される」という嘘の情報から恐怖を抱いてもらおうと考えた。未来の犬山と偽ってボイスチェンジャーを使って彼の未来を予言した。といっても本当に予言したのではなくそう仕向けた。ガムやパソコンは少し準備すれば余裕でできたのだが、車のセッティングは大変だった。

「・・・、城井さん、骨川さんありがとうございました。」

彼女の顔は少し嬉しそうな、悲しそうな顔をしていた。

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