4.濡れ衣
すごく遅れて新しい話投稿します。遅れてすいませんと言うほど誰も観てないので、僕は謝らない。謝ってたまるか。
みてみんで絵を投稿し始めたので、今後は「セーブザドラゴンズ」に挿絵も入れていこうと思います。って宣伝するほど誰も観てないので。やっぱり宣伝しない。宣伝してたまるか。
今回はちょっと急展開です。バトルシーンではないですが、キャラクターがちょっと居酒屋で暴れます。嫌ですね。
皆さんはそういう時はすぐ警察を呼びましょう。
革細工屋のムジカの書いた地図をたどり、おおよその目的地であろう小路にたどり着いた2人。
飲み屋の連なる「社交街」と呼ばれる通りから少し外れた薄暗い通りに、小さなカラオケ喫茶とその隣に白身魚の塩焼きの香りが排気口から流れる小さな店があった。
「ここかぁー!」
ブーナは口を開けたら大型犬のように大量の唾液をこぼしてしまいそうだった。店の前で生唾を飲む。
アサは隣のカラオケ喫茶の親父の陽気な歌声に耳を傾ける。
「何か聴いたことあるわー。何て歌だったかしら。」
歌なんてどうでもいいんだよ!とブーナ。
「早く入ろうアサ!町長の酒も開けてほしがってるぞ!」
ブーナが先に硬くて思い木製のドアを開ける。
ドアを手前に引くとドアベルが鳴り、中から男の甲高い声でいらっしゃいと挨拶が飛んでくる。
通りの良い声だが、うるさくもなく静かでもない丁度良いその声量は、薄暗い暖色の灯りに包まれた店内の穏やかな雰囲気を壊さず2人を迎え入れる。
店内に入ると、入り口正面にはにはコの字の木製のカウンターがあり、カウンターを囲むように背の高い椅子が6席、壁伝いに4名掛けのテーブル席も6箇所散らばっていた。
コの字のカウンターの中には2つ蛇口のついたビールサーバーがあり、最初に挨拶を発した声の主と思しき小柄で薄毛のマスターと黒髪をなびかせる美しい女性が交互にビールを注いでは、注文された席まで運んで行く。
「なんか良い感じだな」
「上手く言えないけど、ホント良い感じね」
ブーナは折角だからカウンター席に座って、町の話しとか聴かせて貰おうよとアサに促す。
コの字カウンター席のまん中に2人が座ると、斜め向かいには知った顔が座っていた。
灰色で水気のあるぬるりとした素肌の男は。昼間の緑色のパーカーとは違って、ピンク色でノースリーブのジャケットを羽織り、ミルクで割った蒸留酒を細い舌先でチビチビ舐めていた。
「あ!」
声が聞こえ、顔を上げた男は2人とばっちり目が合う。
「げぇっ!」
関所の番をしていたリザードマンである。
「シネ…!じゃなかった!ディネ!お前サボりかー!?」
慌ててディネはタンブラーを倒してしまい、すぐに立て直すが、酒が少しカウンターに溢れる。
「あっはは!ダッセーダッセー!」
数人の客がブーナを睨みつけているのを感じ取り、アサが慌ててブーナに注意する。
「ちょっとブーナ。ムジカさんも言ってたでしょ。落ち着いた雰囲気のお店なんだから。すこしボリューム下げて。」
相方さんの言うとおりだぞとディネもブーナを睨みつける。美人の店員が、心配そうにディネにおしぼりを渡す。
「お、おう。悪ぃ…その、静かにだよな、静かに。」
ブーナは恥ずかしそうに耳を赤くしながら。美人店員に謝る。
「で。」
ほくそ笑んではディネにまた絡もうとする。
「やっぱサボりなの?」
ディネは新しいおしぼりで溢した酒を拭きながら、不機嫌そうに応える。ブーナを睨みつけていたが、いざ向こうに見つめられると、何故か目をそらしてしまう純情なリザードマン。
「何で俺が24時間関所にいなくちゃなんねーんだよ。この時間は門は閉まってんの。お前みたいな変なヤツを入れないためにな。」
「嬉しークセにー」
ディネは馬鹿にするなよと頑張ってブーナに目を合わせてにらみ返すが、ブーナはわかりやすいディネの反応を楽しもうと上目づかいの甘えた表情をディネに向ける。口に含んだばかりの酒を吹き出すディネ。
アサはブーナと2人分のビールをマスターに注文する。
美人店員がアサとブーナにビールを出すと、和やかに間に入る。
「どうしたです?お前らさん。もしかしてお友達かよですか?」
たどたどしい話し方。美人店員なのにカタコトな話し方のギャップにアサは思わず微笑んでしまう。
「わー、お姉さん可愛い。」
「私、可愛い?ヤメテ、恥ずかしいヨ。からかうなヨー目玉えぐられたいかあ?」
店員は顔を真っ赤にしながら嬉しそうにだったが、彼女の発するワードはとても残忍。
「あ、ご。ごめん。」
ディネは怯えるアサに気にするなという。
「あんた、アサちゃんってゆーんだっけ?気にするなよアサちゃん。こいつは育ちが悪ぃだけで。良い奴だよ」
マスターもアサに謝る。
「悪いねお嬢さん。この子は…フェイはつい最近、ウチに来た外国人の子でね。言葉は勉強中なんだ。」
「そう。フェイは言葉勉強中。一回で言うこと聞けお前ら。」
どうやって勉強したらこうなるんだろうと思うアサだった。
そして、ブーナは良いことを思いついた。とフェイに耳を貸してと言う。
ブーナがディネに指を指しながらフェイに何かを伝えていた。
「なんなんだよコイツは」
アサに訴えかけるディネ。
「本当にごめんなさい。乾杯したら私が大人しくするよう伝えますので。」
ブーナがフェイに伝言すると。フェイがカウンターを挟んでディネの前に来る。
「あんたってドーテーかよ?」
「ブーナて、てめえ!」
ギャハハ!と笑いのけぞるブーナ!カウンターのイスから転げ落ちる。
「面白くねえ…!マスター!お勘定。俺、帰るよ。不愉快だ!」
カウンター席から立ち上がるディネ。
その時だった。
ドンッッ!
お店の正面のドアを大男が蹴破って入る。
「おっと失礼…いつも力加減が苦手でね…」
浅黒い肌に岩のような頭と、同じく岩のように筋肉隆々のその男は、離席しようとしていたディネと目が合う。
「おや?ディネじゃないか…。何を油売ってるんだ?」
ディネは大男を睨みつける。身長ではディネも大男に負けていないが、ディネには大男ほど気迫はない。
「は?何言ってんすか統括…。俺ぁ今日昼勤すよ?」
ディネが反論すると、間もなく”統括”と呼ばれた男はディネの腹をえぐるようなボディーブローを決める。
よほどの威力だったのか、ディネほどの大男が2メートル後ろのテーブル席の卓上まで飛ばされた。
「ぐ、ぐふ」
「口答えすんじゃねえよヤモリ野郎。てめーが昼間に通した女がジジイを殺してんだよクソ」
”昼間に通した女”と聞いて驚くアサとブーナ。私たちと同じくらいの時間に殺人鬼が町に入ってきたというのか。
卓上から起き上がって、なおディネは大男を睨みつける。
「何の話だ?確かに女を2人通したが、そんなことするようなやつらじゃねえぞ!」
「…2人」
”2人”という言葉に大男の眉が動く。
「……はっ」
うっかりディネは口を滑らせてしまった。昼間のブーナの絡みがうっとおしかったため、面倒でアサの名前は名簿に書いて無かったのである。
「名簿には昼間来た女の名前は1人だけだったぞ?」
確かに、コレは職務怠慢といえるが、ディネは負けじと反論する。
「連れだったんだよ…そいつの。きちんと名刺も貰った。あんたらだって、企業のお偉いさんが来たときにその護衛まで名前を貰ったりしねえだろ?」
「何だと?お前…いつもそうしてるのか?職務怠慢だぞ…」
大男は開き直ったディネに苛立ち、ディネを再び殴ろうと拳を振り上げたときだった。
話を聞いて、真っ先に自分たちが疑われてることに憤りを感じたブーナが男の前に飛び出す。
「ちょっと待てよ!」
大男は自分の前に飛び出した小さな女を見下げて、首をかしげる。
「なんだ?見ない顔だな。何者だ。」
「よそ者だ。アンタらがさっき話してた。ディネが通した女だよ!誰が殺人犯だぁ!?」
「ちょっとブーナ!やめなさいよ…。」
危ないと思い。見かねたアサがディネをカウンターに連れ戻そうとする。しかし、それは間違いだった。
「ブーナか。確かに名簿にあった名前だ…。で、そっちの黒いのが”侵入者”か?」
侵入者とは失礼な。とアサが睨みつける。アサはすかさず名刺を大男に渡す。
「黒いの?あなたの口の利き方ってレディーに対して失礼なんじゃないですか?名簿に名前を記入しなかったのは確かにディネさんの職務怠慢です。なので、改めて…私は竜種包括保護協会のアサよ!身元がハッキリすればいいんでしょ!?」
しかし男は違うなと言ってアサから貰った名刺を破り捨てる。
「どいつもこいつもなんなの?アタシの名刺を突っ返したり、破ったり、マナー講習受けた方がいいんじゃない!?」
「私が欲しいのは君の身元じゃない、ここに不正に町に入った女がいるという事実だ。…ビート。」
ガチャアアン!!
ビートという呼び声とともに、羽の生えた男。ハービー族の男が窓を割って入ってきた!
「こら!メーカーでも特別大っきい窓なんだぞお!お前、いくらすると思ってんだ!」
「窓割って入ってくんノ、格好イートオモッテンノカ!バード野郎!」
店の従業員が怒りに声を荒げる。
「ビート…だと?モルドンお前、何警察呼んでんだよ?」
モルドンとは大男の名だった。大男は笑う。
「お前、仮にこの女が殺人鬼だったらどうするんだ?お前では責任など取れないだろうが。上司の俺が率先して事件を解決してやってるんだ。ありがたく思え。」
ビートがすかさずアサの首筋を叩き、アサを気絶させる。
「なっ!てめえっ!」
ブーナはリュックから、藪をかき分ける用の山刀を取り出し、ビートに飛びかかる。
同時にディネも隣に座っていた老人の杖を奪い、ビートの喉笛めがけて、突くように飛び出す。
しかし、間に合わなかった。
ほんの一瞬だった。
ビートは気絶したアサを抱え込み。瞬時に蹴破った窓から空へと飛び立った。
そして、ブーナの山刀もディネの杖も空を切り、次の瞬間にはビートの後ろにいたモルドンの両手が、2人の腹部にめり込んでいた。
ズッガンッッ!!
ドワーフの女とリザードマンは店の奥の壁に叩きつけられる。
「ガハハッ。ディネよかったな。仲良く女と添い寝できてよ」
ディネに意識はない。仰向けのままブーナに寄り添い。泡を吹いている。
「クソ…デカブツ…。アサを、アサを返せよぉ…!」
薄れゆく意識の中、ブーナは声を絞り出す。
しかし、強力な一撃過ぎた。ドワーフといえど、ブーナの身体は全く動かなかった。
目の前から大男が去って行くと。何も聞こえなくなり、何も見えなくなった。
アサは何処かへと連れ去られ、2人はその場で力尽きた。
「えへへ…何だかついてるわね私。」
「そうね。思ったより早く抜けられそうね私。」
一部始終をテーブル席で見ていた2人の少女が笑っていた。