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Save the dragons(旧)  作者: シャケ飯
4/5

3.5.不穏な空気

 いつもよりちょっと短いです。思いついて、忘れたくなかったのでパパッと投稿しました。これで4話ってのは微妙なので、3話と4話の間のワンクッションって感じです。3話という名の骨と4話という名の骨に挟まれた「グルコサミン」的な感じで捉えて貰うとより分かりにくいかと。

 教会の屋根の上には、鐘を突く小さな小部屋があった。カマラマの町の教会はもう何年も前に機械化が進み、教会の鐘は時計と連動して自動的に機械に突かれるようになっている。

 なので屋根の上の小部屋は、神父が週末に掃除に来る時か或いは業者がメンテナンス作業に訪れる時くらいしか誰かが立ち寄ることはない。

 しかし、その夜の鐘突き部屋の前には怪しげな若者が立っていた。

 赤いたてがみのようなモヒカンに、真ん丸いフレームのサングラスをかけた色白の若い男は。自らの顎の先を撫でながら微笑み、町全体を見下ろしていた。

 「ちょっと邪魔が入ったみたいだけど、あちらの戦力ってほどでもなさそうね。」

 「見てくれはそうだがな…。」

 若い男の独り言に答えながら、奇妙な生き物が翼をはためかせながら教会の屋根に降りてくる。

 その生き物、見た目は人間の三歳児のようにも見える。素肌は薄桃色で額に小さな角を生やし、身体の倍の広さはある翼を竜のように広げ、トカゲのような瞳で若い男を見下ろしている。

 身体は一糸まとわぬ姿だが、哺乳類のような性器はなく、堅さのある長い尻尾と金色の髪が夜風と共に揺れていた。

 「なあに?邪魔しに来たのおじさま。」

 どうみても奇妙な生物の方が子供のように見えるが、男は生き物を「おじさま」と呼んだ。

 「なに、坊主には別のお使いを頼みたくてな…。これだけ入念に準備もして貰って悪いが、ここは私が代わろう。」

 「坊主」と呼ばれたモヒカン男は不服そうに頬を膨らませた。

 「本当。入念も入念。こんだけアタシが準備して、美味しいところはおじさまが持って行くワケ?」

 「……」

 ”おじさま”は返す言葉に悩みながら頭を掻く。

 「坊主はよくやった。本当ならば坊主にここの陥落を任せるつもりだったのだが、悪い条件が重なってな…。」

 「ここ、港町のくせに武器も兵器もなくて食い物ばっかりよ?おじさまが直々に出る必要があるのかしら。」

 ”おじさま”がトカゲのような目を細め、通りを歩く女2人を見つめた。

 「二つ厄介なことがある。一つはお前が新参者と侮っている者のうち1人は一度私に勝ったことがある。正確には私を退けた。と言うべきだが。」

 「嘘。おじさまを?」

 「実力があるわけではない。だが、私の襲撃から辛くも森を守った者だ。そして、もう一つ。隣にいる相方も知らぬが故に侮れん。あれで今は数少ない竜の巫女というではないか。」

 「竜の巫女?あの女を言っているの?あれは人でもエルフでもないのよ?」

 ”おじさま”はモヒカン男に顔を近づけて、言い聞かせるように話を続ける。

 「そしてもう一つ。お前に合わせたくない男がいてな、こいつが厄介だ。」

 おじさま「二つ」じゃなくて「三つ」いってるわよとモヒカン男が訂正しながら言う。

 「竜を飼い慣らしてるって男?えっと、ナキリだっけ?大したことないわよ。」

 「お前、会ったのか?」

 モヒカン男は首を横に振る。

 「別に、会ってないし顔も見てないけど。何か聞いたことある名前だわ。あたしに会わせたくないってどういうこと?」

 ”おじさま”はモヒカン男の肩をさすって言う。

 「「今」会わせたくないというだけだ、ここの用事が終わり次第話してやるし、ゆくゆくお前に会わせてやる。」

 どおして?とモヒカン男。

 「町を陥落させるついでで、その男も殺すんでしょ?」

 ”おじさま”は否定する。

 「町は陥落させるが、あの男だけは絶対に殺さん。あれは後々、大事な駒として使えるのだ。だから今回は「私が代わる」と言っているのだ。」

 モヒカン男はようやく腑に落ちたのか、納得したように頷いて答える。

 「あーそういう事ならおじさまナイス判断だと思うわ。私、ここをぺんぺん草も生えないくらいの焼け野原に変えるつもりだったから。好きなの「皆殺し」」

 「知っている。だからお前は面白い。」

 2人は小さく不気味に笑う。

 「本来は私が行くつもりだったところだが、今から坊主にはあちらの本部に行って少しいたずらをしてきて欲しい。私もあとで向かう。」

 わかったわ、おじさまも気をつけて。といってモヒカン男が隣の家の屋根へ飛び降りると、”おじさま”は思い出したように言う。

 「そうだ、私はまだ言ったことがなかったが…」

 モヒカン男が振り返ると”おじさま”は笑っていた。

 「私も大好きなんだ「皆殺し」」

 

 教会にほど近い民家の少女が母親に抱きついて怯えていた。夜の教会から不気味な笑い声が聞こえるのと。

 

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