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だいたいの男はタイトスカートも好き

イリアストラム第15話の後日談でした。

せっかくなので加筆修正しました。



 ボルターが酒場の奥の部屋で、町長宛の報告書をまとめていると、扉がノックされた。


「おう、なんだ?」


 ボルターが返事をすると、メフェナが無駄にエロいポーズをし、無駄にエロい声を出しながら部屋に入ってきた。


「ねえボルター……? コーヒー欲・し・い?

 あっついの、イれてあげよっかぁ?」


「ん? ああ、悪いな」


 ボルターは書類からまったく目を話さずに答えた。メフェナがエロいのは、別に今に始まったことではない。そして気にするようなことでもない。


 答えてから、少し考えてボルターは言い直した。


「あ、待て。ちょっと薄めに淹れてくれ」


「うふふ♡ う・す・う・す♡ が好きなのね? 了解~♡」


 あらためて書類に目を通していると、まもなくメフェナがコーヒーを淹れて部屋に入ってきた。


「お・待・た・せ♡」


「おう、置いといてくれ」


 テーブルに置かれたコーヒーに視線を移すと、ボルターの視界の端には、メフェナの見事な太腿が入り込んだ。


 体に密着するデザインのロングスカートの脇には、ざっくりと深く切れ目が入っており、そこから生足があらわになっていた。


「……お前、その服どこで買った?」


「え? 普通に市場の近くにある服屋だけど?」


 メフェナはわざと膝を持ち上げ、太腿を見せびらかす。どうやら新しいスカートを見てほしかったらしい。


「ふーん」


「あ〜♡ なになにぃ? もしかしてぇ、セリちゃんにこういうの着せたいわけぇ?

 あー、でもセリちゃんにはまだ早いかなぁ?

 やっぱりこういう服着てエロくなるのはぁ、ある程度大人の女の曲線が出るようになってからの方がいいと思うんだけどなぁ」


「別にそんなんじゃねえよ」


 ボルターはごまかすようにコーヒーに口をつけ、――顔をしかめた。


 メフェナの淹れるコーヒーは、薄く作らせてもエグかった。



・・・・・



 気がつくとボルターは服屋の前にいた。


 思わず勢いで3枚もエプロンを買う羽目になってしまったあの店の前に――。


「――はっ!? お、俺は……! 一体いつの間に!?」


 ギルドを出た記憶がない。

 そして服屋への道のりは、帰宅ルートとは完全に真逆の方向だった。


 そもそもまだ仕事が終わっていないのに、なぜ外出してしまったのだろうか。謎だ。

 

「あら、ボルターさん。また来たの?」


 またしてもおかみさんに見つかり、ボルターは居心地の悪い思いをする。


「いや……あの、えっと……オヤジさん……いますか?」


 ここまで来たら目的を果たすほかはない。ボルターは服屋の亭主を召喚することにした。


「はいはい、今呼びますよ。ちょっとアンター? ボルターさんが呼んでるわよ~!」


 前回同様、服屋の亭主はのそのそと店の奥から出てきた。


「ああ、あんたか。この間のエプロンはどうだった? なかなか良かっただろう?」


 おかみさんを気にして、お互いに声のトーンを落とす。


「ああ、悪くなかった。

 それよりオヤジさん、この店、タイトスカートってあるのか? できればミニの」


 亭主の目がキラリと光った。


「ああ~、あんた本当に好きだねえ。

 あの子を前の奥さん風に仕上げてくつもりかい? 悪い男だねぇ」


 ニヤニヤといやらしい笑みを浮かべながら、亭主はボルターを肘でつつく。


「んなことするわけねえだろ!!

 つーかあんた、俺の(元)かみさんがタイトのミニはいてるの見たことあんのかよ!?

 俺だって見たことねーわ!!」


 ボルターの非難を聞いているのかいないのか、亭主は手招きをしながらボルターを店の奥へ案内する。


「で、位置はどこがいいんだい?」


「位置?」


 意味が分からず聞き返すボルターに、服屋の亭主は呆れたように大きくため息をついた。

 そして腰に手を当てると、偉そうにふんぞり返った。


「なんだいなんだい、ボルターさんも大したことないな!

 てっきりすぐに分かってくれると思ったのに。スリットだよ。

『スリットのないタイトスカートはスカートに在らず!』って言うだろ?

 ……で? どこにスリットの入ってるやつがいいんだ?」


「見てから決める。とりあえず出してくれ」


 妙に男のプライドを踏みにじられた気がして、ボルターは相手に負けないよう、居丈高に言い放った。


 亭主はやれやれと愚痴りながら、もったいぶった動作で3着のタイトスカートを出してきた。もちろんミニ丈だ。


 ボルターは思わず固唾を飲んで、亭主の説明を待った。


「まずは後ろスリットだな。

 これのいいところはどんなに食い入るように、穴が開くほど見つめても、はいてる本人に気づかれないところだろう。

 どこまでも歩く後ろを追い続け、スリットからのぞく内腿と、その先の光景を想像しながら見守り続ける楽しみがある」


「ああ、なるほどな」

 

 気づかれないように尾行するスリルと、何かの拍子に屈んだり、階段を登ったりする――例えるなら神から与えられしお恵みへの期待が膨らむ。


 たしかに胸が熱くなるかもな。


 ボルターは亭主の説明を聞きながら、静かにうなづいた。


「次は横だな。残念ながら秘密の花園の入り口をチラ見することは不可能だが、これはかなり際どいところまでスリットが入っていても、足が長くきれいに見えるとか言うクチで女性側にも抵抗なく受け入れやすい。肉付きのいい女が着ると萌えるな」


 さっきのメフェナのやつがそれだな。


 ボルターは腕を組みながら、何度も深くうなづいた。


 たしかにセリは肉付きの点ではまだまだ物足りない。だがしかし、細いながらも筋肉がきれいについている。


 尻も好きだが、あの締まった太腿をもう少し上の方まで見てみたい。


「そして、前だ! セクシーさは一番だとわしは思う! わしは好きだ! 一押しだ!

 こちらに向かって歩いてくると、ああ! 見えそう! もう少し! あと少し! もっと足を開いてくれ!! と思わず悶え、懇願してしまいたくなる!

 もう屈んで下から見上げたくなる! いっそ踏みつけて欲しい!

 なんたっていいのは地べたに床座りする時だ! 本人もその切れ目を意識せざるを得ない! 恥じらいながらの横座りのその色っぽさは最高の一品だ!」


 熱く語る亭主の迫力に押されながら、ボルターは前スリットのミニスカートを手に取った。


 そこまで言うならちょっと再現してみるか。


 頭の中のセリにスカートをはかせてみて、まずは通常モードのセリで一回楽しんでみる。


 ……恥じらいながらの床座り……。


(ちょっとボルター! 変な目で見ないでよエッチ!)


 赤い顔でスリットを手で押さえながらセリが睨んでいる。


 うん、これはこれでいい。

 からかいながら徐々に攻略していくのが燃える。まあ、いつものパターンだが。


 そして、十分に堪能した後は、最近仕入れたばかりの脱力・ヘロヘロモードのセリで出力してみる。


(やだぁっ、ボルタぁ。そんな目で……っ、見ちゃ……いやぁ……っ。見ないでえ……!)


 これはいい! 見える! もう少しで見えるぞ!


「ああ、いいな……」


 思わず無意識に呟いてから、慌ててゆるんだ口元を隠した。


 このまま妄想を続けてしまうと、まくり上げて秘密の花園への進撃を開始してしまいそうだ。


 さすがに昼間だから、よしておこう。


 何はともあれ、前スリットだけでしばらくは、飯が三杯はイケることが分かった。


「さあ、どうする?」


「ふっ、聞くまでもねえだろ? オヤジ! 三枚とも買うぜ!」


 二人の男は固く手を握りあった。


「勇者ボルターの英断に敬意を評し、これを授けよう!

 さあ! その宝箱を開けるがよい!」


「なんで今回は王様風なんだよ」


 文句を言いながらも、なぜか突然現れた宝箱には、さした疑問も持たずふたを開けた。


 そしてボルターは言葉を失った。


「――お、王様!! これは……! このアイテムは!!!」


「お前には分かるだろう。最強の相性を誇る伝説の防具、網タイツだ!!」


「うおおおっっ! マジか!? いいのか!? くれんのか!?」


 これが………これがあれば……!!


「男の憧れ、パンスト破りからの着衣プレイも叶うな!」


「オヤジーーーー!!!」


 男たちは熱い抱擁を交わしあった。



・・・・



 ギルドで残した仕事を思い出し、その仕事を終えて帰宅する道中、タイトミニをはいた、実に自分好みの尻をした少女が前を速足で歩いていた。


 ボルターは瞬時に反応する。


 あの尻はセリだ! 間違いない!! しかもあれは前スリットのタイトミニだ!!!


 実はボルターは服屋からギルドに戻る前に、わざわざ遠回りをしてこっそりセリの部屋に忍び込んでいたのであった。



 先にタンスにしまっておいた甲斐があったってもんだぜ! 早速装備しやがったな、あいつぅ!



 ボルターは我ながら馬鹿みたいだが、思春期の少年の時のように胸が熱くなるのを感じた。


 口が緩みっぱなしのまま、ボルターはセリの名前を呼びながら駆け寄った。


「おい! セリ!!」


「あ、ボルター? 仕事終わり?」


 セリは顔をわずかだけ振り向かせた。しかし、立ち止まりもしない。

 故に距離が縮まらない。よって前側が見えない。つまりスリットと太腿が拝めない。


 体ごとこっちに向いて立ち止まれよ! と思うが、セリは急いでいるようだ。


「お前は? 一人で何してんだ?」


「調味料が切れてたから、ダッシュで買い足しに行ってたの。レキサとロフェは家で留守番してるよ」


 ……お前、その間に俺以外の男にそのスリットの先の光景を見せたんじゃないだろうな。


 というか、そのダッシュを真正面(下)から見たかった……。


 家に到着し、セリを見たボルターは愕然とした。


「セリ!! お前!? それ、どういうことだよ!!」


 ボルターの指差す先には、タイトスカートのスリットがある。

 ――――あった、というべきか。


「え? このスカート? いつの間にかタンスの中に入ってたの。

 誰かのお古なんだろうけど、裾が破れててね、でも捨てるのもったいないし、前に近所の奥さんからもらったハギレでつぎはぎしたんだ。

 あえて無地のスカートに柄生地をアクセントにするのが今風なんだって。

 古着リメイクっていうの? ほらすごいでしょ? かわいいでしょ?」


 無邪気に喜んでいるセリの表情は珍しいから、本来であれば許してやるのが男なのだろう。


 だがしかし……。


「お前……お前なあ、なんてことを!」


 そして、ボルターは見てしまった。


 壁に引っ掛けられている、変わり果てた網タイツの姿を――。


「お前ーー!!

 網タイツの中に野菜を入れるなーー!!

 なんでよりにもよって大根2本さしてんだよ!!

 めちゃくちゃ生々しいわ!!

 おかしいって気づけ――――っ!」


「え? あれ野菜ネットじゃなかったの?」


「お前なあ、お前……っ! 王様からたまわった大事なものを……! 熟成させてから使いたかったのに……!」


 がくりと膝をついてしまった父親の姿に、子供たちが心配して駆け寄ってきた。


「あれ? どうしたのお父さん? お腹いたいの?」


「おとーしゃん? だいじょーぶ? ないてるの?」


 ボルターを気遣う子供たちとは異なり、セリはボルターなど見えないかのように淡々と夕食をテーブルに並べていく。


「怒鳴りすぎて舌でも噛んだんじゃない? ほっといてご飯にしよう?」



 居候の少女はどこまでも変態家主に厳しかった。


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