表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
13/29

ITN.7 昼下がりの奥さんと◯◯◯◯

pt.5 自立できないハーフエルフ -Separation anxiety- ②

以降のお話です。

「しぇりー、えほんよんでー」

 ロフェがセリのところへ絵本を持ってくる。

「あ、いいよ。なんの絵本?」

「オオカミとしちしきのコヤギ!

 オオカミのでるとこはホンキだしてねしぇり!

 コヤギたちのあびきょーかんのようすをりんじょーかんあふれるえんぎりょくでひょーげんしてね!」

「はいはい、わかったわかった。じゃあ、本気で読むから泣かないでよね」

 顔を輝かせながらセリの横を陣取るロフェと、顔を見合わせながら緊張の面持ちでそっと近くに座るレキサとクロム。

 男女それぞれの表情の違いに苦笑しながら、セリは絵本を読み始めた。


 お母さんヤギが外出し、コヤギを狙って狼がファーストコンタクトを取ろうとするその瞬間――、絶妙のタイミングで玄関の呼び鈴がなった。


 ぎくーん! とあからさまに怯えて、レキサとクロムがお互いに身を寄せる。

「すごーい! ホントにオオカミしゃんがきたよー!!」

 顔を輝かせてロフェがはしゃぐ。セリはいったん絵本を置くと、立ち上がって玄関へ向かう。


「あははは。それは絵本の中でのお話だよロフェ。

 はーい、どちらさまですかー?」

「お届け物でーす」

「はーい、ありがとうござ…………なにしてんのボルター」

 玄関を開けたセリの目の前に立っていたのは、さっきまで椅子に座ってコーヒーを飲んでいたはずのボルターだ。

 外に出る気配が全く分からなかったのでセリは少し驚いた。

 瞬間移動でもしたのだろうか。


「奥さん……あなたは本当に悪い女性(ひと)だ。

 またご主人の留守に俺のこと誘ったりして……。本当に、いけない人だ……」

 何故かボルターはキメ顔キメ声モードである。


「は? どうしたのボルター。気持ち悪いんだけど」

「そんな他人行儀な真似はよそうぜ奥さん。もう俺たち他人じゃないだろ?

 ああ、もう我慢できねえ、奥さん! 奥さんっっ!!」

 言うが早いかボルターはセリのことをひょいと担ぎ上げる。

「え? ちょっとどういうこと!? 意味分かんないんだけど!」


 暴れるセリを担いだまま、ボルターが不敵に微笑み、子供たちへと説明する。


「いいかロフェ。あと一応レキサとクロムも聞いとけよ。

 こうやってセリみたいに無用心に玄関を開けるとな、悪い狼に上がり込まれて、あーんなことやこーんなことをされちまって、もう狼なしじゃ生きていけないダメでいやらしい体に開発されちまうんだかんな!

 よ~~く覚えとけよ!

 つーワケでセリ、お前はこれから俺の部屋でたっぷり可愛がってやる。俺なしじゃ生きていけない体にしてやるから覚悟しとけ」


「ちょっと待った!! いま絵本読んでる途中なんだってば!! 邪魔しないでくれる!?

 そうでしょロフェ!! こっからがいいところでしょ!?」

 ロフェを味方につければこの状況から脱出できるはず。セリは期待を込めてロフェに助けを求めた。しかし――。


「だってしぇり、オオカミさんなのにカクニンしないであけちゃったからダメなのよ。オオカミさんをなかにいれたらたべられてもしかたないのよ!」

 すかさずロフェに便乗するボルター。

「そうそう! ロフェの言うとおりだ! 狼さんの狼を中に挿れられて、おいしく食べられちまえ!」

「こら! 意味わかんないこと言ってないで離しなさい!! ねえ離して!!

 ちょっと! ねえ誰か助けてよ!」


 若干うんざりとした顔のレキサ、元気いっぱいに手を振るロフェ、期待に満ちあふれた目をするクロムの三者三様の顔に助けを求めるが、誰も動く気配はない。


 セリはそのままボルターの部屋へと連行され、勢いよくベッドに転がされる。

「ちょっと! 投げ飛ばさないでよね、毎回毎回!」

「いや、あんまり毎度きれいに受け身とるから面白くてよ。

 ま……そんなことより奥さん。ご主人が帰ってくる前にたっぷり楽しもうぜ?」

 満面の笑みを浮かべてボルターがセリにのしかかろうとする。


「だからさっきからナニ!? ナニごっこ中なのコレは!?」

「ナニごっこ、か。ナニごっこと言えばナニごっこだが、しいて言えば『妻が宅配業者にNTRれちゃいました。~仕事から帰ったときにはもう遅い。妻の◯は別の男の◯にされたあとでした~』ごっこ?」

「それホントに大丈夫なの!? 文字で残して大丈夫なやつなの!?」

「お! 意味がわかるか? さすが人妻モードを習得したセリは一味も二味も違うな! 一応伏せ字に直しといたから大丈夫だろ」

「意味はわかんないけどヤバイことだけは分かるの!! もう! ふざけないで! BANされても知らないんだから!!」


 なんとかボルターの腕から脱出したセリが、勢いよくドアを開けると、聞き耳を立てた姿勢で固まるクロムがいた。

「え? なんだよ。続きしないのかよ。あーんなことやこーんなことを始めるんだろ?」

「……クロム。なんであんたはそんなに目をキラキラさせてんのよ……」


 ベッドに腰を下ろしたままのボルターが笑いながら声をかける。

「しょうがねえだろセリ。ガキのころなんざ、あーんなことやこーんなことを想像して楽しむのが関の山なんだよ。大目に見てやれ。

 大人になりゃあ、こんなこそこそ聞き耳立てなくても、堂々と好きな女にアプローチしてパコパコできんのになあ。残念だったなクロム。悔しかったらさっさと大人になれよ?」

「ぱ、パコパコ!?」

 クロムの目の輝きがさらに増し、髪の色がほんのりピンク色に変わる。一方セリは聞き捨てならない擬音に悲鳴を上げた。

「ちょっとナニ!? なんなのその不愉快な擬音は!?」


「パコパコはパコパコだ。それ以外でもそれ以下でもない。

 まあ、大人になったからといって努力もなしに誰でも簡単にパコれるわけじゃないぞ。

 見た目、金、テクのどれかひとつでも極めてみろ。

 勇者クロムの性交確率は格段に上がるであろう」

 荘厳な表情でお告げを下すボルターへ、セリが横槍を入れる。


「ボルターそれ誤字。成功確率でしょ。間違った使い方をクロムに教えないで」

「いや、問題ない。ジャストフィットだ。最高の相性の組み合わせだ。

 わかったな、クロム。俺のように三つ全てをそろえた男になれば、どんな女もパコり放題だ!

 どうだ!! 羨ましいだろう!! お前も俺のようになりたいだろう!!」

「すっげえ!! マジか!! 選び放題なのか!? パコパコし放題なのか!?」

「アンタお金ないでしょーが!! 借金大魔王のくせに。

 もう! うちのクロムに変なこと教えないで!!」


「うちの子ってお前が言うならそれは俺の子も同然だ。

 もう俺たち、他人じゃないだろ奥さん。

 てゆうか奥さん、俺の見た目とテクの方は認めてくれてるってことだよな、奥さん。

 ああ……っ、もう我慢できねえ、奥さん!! っ奥さんっっ!!」


 いつの間にかセリの背後に忍び寄ってきたボルターが、セリを抱え込むと再びベッドへと投げ飛ばした。

「ちょ……っ!? またぁ!? いい加減にしてよ!! しかもクロムがめっちゃキラキラして見てるから!!」

「見られると興奮するよね、奥さん。ああ、いい表情(かお)してるね奥さん。もっと恥ずかしがってる顔見せて奥さん。奥さっっ……げふっ!!」


 ボルターは沈黙し、バッタリと倒れて動かない。

 しばしの静寂の後、クロムがおそるおそる冷めた目でボルターを見下ろしているセリへ声をかけた。


「……セリ、もしかして…………殺った?」


「まさか。うるさいから沈めただけだよ。

 てゆーか、ホントにうるさいから石詰めて井戸に落としちゃおっか。

 クロム、この変態狼が目を覚ます前にハサミと針と糸をお母さんに持ってきてちょうだい」


 クロムはこれから起きるかもしれない阿鼻叫喚の臨場感あふれる切腹シーンを想像し、真っ青な顔と髪をしながら慌てて部屋を飛び出したのであった。



ボルターのセリフ内の〇には同じ漢字が一字が入ります。

答えが分かった方は感想欄にご回答を……え? ダメ?

大丈夫、変な文字じゃないから。それだけで見てもいかがわしい文字じゃないから!!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ