ITN.4 グレイスメイア銘菓<ガランタ饅頭>紛糾秘話
【登場人物紹介】
■NSAIDs(アリール酢酸系):ジクロフェナクナトリウム(商品名:ボルタ〇ン)
■ラクタム(ペニシリン系):ベンジルペニシリン…狭域性
■PPI(プロトンポンプ阻害薬):ランソプラゾール…NSAIDs投与時SE予防適応15mgのみ
■BZD(ベンゾジアゼピン系):ジアゼパム…長時間型
■NQ(ニューキノロン系):ノルフロキサシン…広域・血中濃度やや低い
■グレイスメイア町長…一切セリフなく描写もないが会議同席中
※NQと併用禁忌のNSAIDsは主にプロピオン酸系NSAIDsです。痙攣報告あり。
この辺を参考にお進みください。
「では定刻となったため、第8回グレイスメイア観光事業会議を始める」
今回の議長であるラクタムのベンジルの合図で会議は始まった。
「本日の予定では観光客への物産主力候補であるガランタの水を使用した菓子についての最終決定を行う予定であったが、エヌセッズのボルターから再検討の提案があるそうだ。
修正案の可決については今会議中に決定したいので円滑な会議進行への協力を頼む。ではボルター報告してくれ」
ベンジルから主導を移され、ボルターは起立し資料を手に取った。
「エヌセッズのボルターだ。俺から報告する試作品の問題点は事前に配布した資料の通りだ。
水の使用量が多いことで、記憶が強烈かつ鮮明に戻りすぎてしまう事例が発生した。
俺の主観だが、濃度としては試作品ナンバー2(黄色)の濃度が最も刺激がなく、穏やかに作用するみたいだな。
ここで本場、極東での饅頭を知る人物の意見を参考にした結果、1個あたりのサイズを縮小することで、ガランタ水の使用量を抑えてはどうかとの意見があり、実際に作ってみたのがこれだ」
ボルターが箱を開けると、ひとつまみサイズに改良された饅頭が出てきた。
「色は単色でない方が見た目の華やかさが増して女性受けしやすい。現行の3色を残したまま、1色を5個ずつ、つまり1箱15個売り、もしくは倍の30個売りの商品で展開するってプランだ。意見はあるか?」
ピーピーアイのランソップが挙手で質問する。
「なるほどね。たしかにかわいいわな。で、色分けで濃度を変えてんのはデカいときと一緒?」
「いや、最初の黄色の濃度で統一した」
「なんか、つまんねえな。色で中身の具を変えちまうのは?」
ランソップとボルターのみで会話が進行するのを議長のベンジルが遮った。
「ランソップ、まずは大きさをこのサイズで決定するかどうか決めるのが先だ。中身の検討は次の議題に回せ」
ベンジルにたしなめられ、ランソップは肩をすくめた。
「へいへい、相変わらず安定の話題範囲の狭さだなー。もっとスペクトル広げて議題を同時展開すりゃ時短になんのになー」
「ひとつひとつを着実にが私のモットーだ。現に話題を広げたからと言って早く会議が終息した試しがないだろう。かえって内容が薄くなる」
「ベンジル、なんだ貴様。俺に嫌味を言ったか貴様」
ベンジルの言葉にエヌキューのルフロが低い声で反発する。
「なぜそうなる! 私は君のことなど言ってない! 脱線してるぞ! 議題へ戻れ!」
スペクトルは狭いが進行は速いベンジル議長主導のもと、サイズ、販売個数設定はボルターの提案を採用することとなった。この件に関しては難なくことが進む。
「で、ついでに商品名の提案もあるから聞いてくれ。これだ」
ボルターはイラスト入りの紙をみんなに見せた。
顔半分以上の面積を大きな瞳が占領している少女が三角座りをした状態で股に例の饅頭をクッションのように挟んでいる。
「ひとくちサイズのちいさい饅頭だから、【ちいさな◯ん子ちゃん】だ! このま◯子ちゃんを商品キャラクターとしてパッケージに載せたら絶対に売れる! そうは思わねえか!?」
一瞬で場が静まり返る。
沈黙を破ったのはピーピーアイのランソップだ。
「ぶっは! くくっ、やっべえ、すっげえ! ボルター、そのセンスは攻めすぎだろ!」
「だろ? だろ?」
「却下だ。貴様こんなものを大々的に売り出せば、触発されて未成年者略取の手合が増加するぞ。貴様のような変態を増産する気か」
エヌキューのルフロが険しい表情でボルターを睨む。
「じゃあ、他にいい案あんのかよ」
「依存になる味、やめられない止まらない……」
ビーゼットディのジアゼンがぶつぶつと独り言のように呟いているのをボルターが聞き咎めた。
「お前が依存っていうな! シャレになんねーだろ! しかも最後のは別の菓子のパクリだろーが!!
だいたいお前んとこのエチゾウがガランタ依存レベルが問題だっつって文句言うから、別の観光事業を考える羽目になったんじゃねえか! 依存を蒸し返すな」
「貴様らじゃ話にならん。売れ線のテンプレをなぞればいいだろう。
『小さすぎてパーティーから追放された俺が、映えスキルが覚醒してしまい、最強売れチートで菓子業界の王に君臨する。~今さら戻ってくれと言われてももう遅い。貴様らでかい饅頭など俺が消し去ってくれる~」
エヌキューのルフロの提案に、ラクタムのベンジル議長が微妙な表情を浮かべる。
「ルフロ、君の情報網の広さには感服するよ。しかし食べ物の名称にしては後味が良くない連想をさせてしまわないか?」
「長えし! 結局下じゃねえかよ! ナニが小さいからバカにされたけどテクで見返したって話だろ?」
ボルターの言葉に、ルフロが机を激しく叩いて激昂する。
「貴様はすべてを下に変換するな!! どういう耳と頭をしてるんだ貴様は!!
だから俺はエヌセッズが嫌いなんだよ!! 下品で粗暴で、そのくせ人気ばっかりあって……!!」
「あんまりエキサイトすっと痙攣起こすぜルフロ。
やっぱ俺のまん◯ちゃんだって! んで◯ん子ちゃんが『やさしくさわってね』って潤んだ目で見上げてくんだよ。男なら絶対に買うだろ!? んで色々妄想しながら摘まんだり突っついたり甘噛みしたり……」
「菓子相手にそんなこと考えるのは貴様だけだ!!」とエヌキューのルフロ。
「確信犯だ。引っ捕らえて裁きにかける」とビーゼットディのジアゼン。
「ああ、もう完全に作為的だな。その名称だけは断固としてこの会議で認めるわけにはいかない。私たちまで同罪は困る。ランソップ出番だ。ボルターを黙らせてくれ」と、ベンジル議長。
「くくくくっ、いやー腹いてえわ。あー笑った笑った。はいはい、了解ですよー。
なぁボルター、ふてくされんなって。考えても見てくれ。
もし、この饅頭がヒット商品になって何年も何年も売れ続けてみろ。ロフェちゃんが大人になって、この恥ずかしいお菓子を考えたのが自分の父親だなんてお前、自信もって名乗り出れるか?」
「だってよぉ、そんなこと言ったら、他にもっとすげえのあるじゃんかよ。
ほら、あの――おっ、お、お……っ」
照れて言いづらそうにするボルターへ、会場全員の目が釘付けになる。
「お、おっ、おっぱいプリンとかあんだろ!? くそ、恥ずかしいじゃねえかよ! こんなこと言わせんじゃねえよ!
あんなくそリアルなピンクの乳首したプリンが公然と売られてるのが良くて何で俺のま◯こちゃんがダメなんだよ!?」
真っ赤になった顔を両手で覆い、ボルターが悶えるのを、ルフロが得体のしれない生物を見るかのような顔で眺めている。
「貴様あれだけ卑猥な言葉を連発しておいて何故おっぱいごときで赤面する。理解できん」
ランソップは笑いながら、悶えるボルターの肩を叩く。
「いや、ボルター、あれは結構買うのに勇気がいるんだぞ?
俺さまもハニーと旅行中にそれ見つけて、ふざけ半分で手に取ったわけ。そしたらすっげえ寒気がするわけ。振り返ってハニーの眼を見た瞬間、俺さまは静かに商品を棚に戻したよな。
あれは限られた勇者か、真の愚者しか手にすることのできないアイテムだ。お前の饅頭もそれでいいのか? 万人が安心して手に取れて、気軽に土産に選んでくれて、老若男女に愛される商品を目指さなくていいのか?」
「ランソップ、でもよ、俺はもうまん◯ちゃんを自分の娘みたいに思ってるんだ。
このかわいい◯んこちゃんを世に送り出したいっていう俺の愛情も分かってくれ! 俺たち娘を持つ父親同盟だろ?」
「……っこの、バッカヤロウ!!!!」
BAKOOOOOOOOOOOOOOM!!!
ランソップの鉄拳が激しくボルターの左頬をえぐり、ボルターは宙を三回転半して首から床に叩きつけられた。
「ふざけんな!! 見損なったぞボルター!! お前それでも娘を持つ父親か!!
自分の娘がどこの馬の骨ともわからん男たちにつままれ、しゃぶられ、食われ続けるんだぞ!! そんなことを望む父親がどこにいる!! 目を覚ませ!! 覚ましてくれボルター!!」
ぐったりと床に倒れたボルターへ馬乗りになり、ランソップはボルターの胸ぐらをつかみ激しく揺さぶる。
「……ラ、ランソップ、俺は……悪い夢を見ていたようだ。
お前のおかげで目が覚めたぜ。そうだな。ま◯こちゃんは俺だけのまん◯ちゃんだ! 誰にも渡さない!! そういうことだな!」
「ああ! それでこそ真の父親だ! 悪かったな、殴っちまって」
「ふっ、いいってことよ!!」
二人の父親は会議室の真ん中で固く握手をした。
「……時間が超過した。今回の会議はこれにて終了する。次回は饅頭の中身、及び商品名について検討することとする。次回こそは速やかで円滑な会議となるよう協力していただきたい」
ベンジル議長の冷静な宣言により、第8回グレイスメイア観光事業会議は終結した。
ジアゼンは第1部のエチゾウ依存緩和のスイッチ役(薬?)として登場させようとずっと考えていましたが、どうせ登場させるなら名裁きもやりたい(大〇越前)と暴走しそうになり、本編収拾の難易度が上がるのでボツにした思い入れのあるキャラです。
いつかBZDメインの人情噺とか書きたいですわ。(自己満足)




