タヌキ・ムジナ事件とムササビ・モマ事件
狩りの季節。獲物を狙って猟銃と狩猟犬を従えて山に入る。
「昔はなぁ、獣を狩るのを禁じていたときに、ウサギをこれは飛ぶから獣じゃない。一羽ニ羽と数えて鳥の一種としてとっていた」
「ものは言いようっつうか、ほとんど言い訳っすね」
同行していた学生の初心者が言った。
「無理を通せば道理が引っ込む」
ははは…、と笑いがあがった。
「いやいや、明智くん、そうとばかりは言ってられないんだよ」
「?」
「裁判で有罪になったり無罪になったり、ときと場合によるんだ」
「どういうことっすか?」
「タヌキ・ムジナ事件とムササビ・モマ事件という有名な判例があってだね、両方とも同じ動物を違う呼び方をしてたから禁猟されてたのをとっちゃったんだけど、タヌキ〜の方は無罪でムササビ〜の方は有罪だったんだ」
「今回はイノシシが出るから来たんすよね?なら、大丈夫でしょう」
仕掛けを作って、テント張って交代で見張り番。
ピギー!!!
「出た!」
罠にかかっているのは小型獣。そのそばにイノシシが居たが、人に驚いて逃げてしまった。
「これはなんていう獣っすか?」
「ウリ坊」
「じゃあ、放してやりましょうか」
「何言ってんの!イノシシの子どもだよ」
「知ってますよ」
男たちはほんとかよ!と笑った。