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1-7, フェニカちゃんはモテモテなのですよ~。うらやましいのです~

 春が来た。


 ウィリーの村は今日も和やかだ。

「スミ、フェニカ、今日の仕事だ」

 ガンさんが仕事を割り振ってくれる。春になってから植物採取と狩りの仕事が増えた。ベンジントンの街に送って、この村の食い扶持にするのだそうだ。今日の仕事は山の奥に生えている野草の採取。植物についてもスミさんは詳しい。


 この村に来てから私は強くなった。スミさんはステータスなんて当てにならないというけれど、私はついつい確認してしまう。


----------

名前:フェニカ

種族:人間

職業:ウィーリー村の見習い剣士

状態:健康


力:17

丈夫さ:16

器用さ:14

素早さ:18

知力:13

魔力:15

運:0

魅力:39


スキル:

定められた運命:あなたの運命を思い出して?

魅了:私の魅力からは逃れられない

剣術:初心者程度に剣が使える

魔法:基礎の基礎

----------


 ステータスを見る限り、着々と強くなっている気がする。確か14くらいが平均と言っていたから、今の私は普通の人だ。気になるのは0から微動だにしない運と……


「よう、フェニカちゃん! 今日もかわいいね」

 酒場に入るなり声をかけられる。高すぎる魅力と魅了のせいで酒場の数人から口説かれていて大変なのだ。

「ギルさんありがとうございます」

 にっこりと返すが内心は全然笑っていない。めんどくさい……。


「あらあら~。フェニカちゃんはモテモテなのですよ~。うらやましいのです~」

「スミさん全くうらやましいと思ってませんよね……」

 スミさんに冷やかされる。この人もたくさんの人から言い寄られた経験がありそう。いや、推測なのだけど……。

「私に言い寄っている人全員が、スミさんの前だと大変おとなしいのですが……?」

「ふふふ~。フェニカちゃんもそれとない断り方と殺気の使い方をマスターしないといけませんね~」

 殺気? 言い寄ってくる人を振り払うのに殺気使うのか、スミさん? ギルさんが絶対スミさんと目を合わせないのは何かあったな……。


「今日のお仕事は、地図のこのあたりに生えている野草の採取です~。基本的には、薬草4種と食べる草が1種。本当は食べられる草がいっぱい生えているのですが、持ち切れないので薬草優先なのです~。いつもより危ない生き物がいっぱいいるので剣を離してはいけませんよ~」

「わかりました」

「準備できたら山の奥へ行きますよ~」


 私たち二人は山の中を歩いていく。スミさんが道案内、警戒、戦闘、その他もろもろをこなし、私が籠を背負う担当だ。私としては暢気なものだが、助手としての仕事少なすぎる……。

「これと同じものを探してくださいね~。ゼンゼンソウといいます~。籠に入れる前に私が見ますのでフェニカちゃんの判断では籠に入れないように!」

 私は、じっくりと探し回る。草なんてどれも同じに見えるよ~。これ、これかな?

「スミさん、これですか?」

「ざ~んねん。よく似てるけど違うのですよ~。その草はニセゼンゼンソウと言って軽い毒があります」

「ん~。どう違うの?これ」

 両手に持って見比べてもわからない。

「ふふふ~。そのうちわかるのですよ~」


 ぶおるぅぅぅぅぅ

 

「ん?何のお……」

 スミさんが私を手で制する。「黙れ、静かに」と手振りで指示を出す。私は指示通り身じろぎせずにピタッと制止する。


 ……。


「もういったか。二人で音の方を見に行く。声は出すな」

 スミさんのしゃべり方が本気だ。いうが早いがスミさんは早歩きで音のしたほうへ向かう。私も頑張ってついていくことにしたが、本気で歩くスミさんについていくのはなかなかつらい。一体何があったんだろう? こんなに深刻そうなスミさんは初めて見た。

 歩くにつれて、煙と焼け焦げたにおいがあたりに満ちる。ちょっと咳込みそう。静かにという指示なので極力息を整えながら速足で後をついていく。ちょっと、いや、だいぶつらい。ひーこら言いながら前へと進む。せき込みそうになったところで、スミさんは、止まった。なんだかこのあたり暖かい。肩を震わせながら息をしようとするが、空気が汚くてつらい。暑さで汗も出るしなんなんだろうと思ったら、目の前に真っ黒い広場があった。

「山火事ですか?」

 だ・ま・れ! とスミさんが手で指示を出した。ごめんなさい。

 広場を覗いてみると、あたり一面真っ黒で、ところどころ燃えていた。見たこともない黒い炎だ。なんだろう、これ?

 私があたりを観察していると、スミさんが再びジェスチャーした。引き返す、と。


 安全なところまできてやっとスミさんが口を開いた。

「ドラゴンだ」

「ドラゴン?」

「知らんのか?」

「む、知ってますよ。知らなかったのはスミさんがそんなしゃべり方をすることだけです」

 ちょっと強気に返すが、スミさんのしゃべり方がことの深刻さを物語っていた。表情もいつもに比べてはるかに真面目だ。スミさんはちょっと考え込むと私の方を見る。

「街に引き返します~。私のしゃべり方はみんなには秘密ですよ~」

 そして、わざとらしくいつもの雰囲気に戻る。


 街までは時間がかかるはずだが、体感ではあっという間だった。

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