1-22, 生存者は……
塀の外には池、そして滝。水路の横にある段差で水から上がる。
「はぁ、はぁ、はぁ」
息が上がっている。しかし私はキョロキョロと辺りの警戒を怠らない。もしかしたらやつが追ってきているかもしれない。とりあえず近くに誰もいないことを確認すると同時に、目の前に水と血が垂れた跡があることに気づく。これは、イサのものかな? などと考え、辿ることにする。
跡をたどりながら今日一日に起きたことを思い返してみる。初めての国にきて、投獄され、脱獄して、大勢が死んで、あの人に出会った。私の知り合い三人が生き残る、と私の運命に記されている、と、あの人は言った。初めから、履歴書交換から仕組まれていたらしい。
水と血の跡は点々と街から離れていく。どうやら一人じゃなさそうだ。スミさんとの半年間がなければこの跡をたどることはできなかっただろう。時間もたっているし、うっかりすると見落としてしまいそう。しばらくたどっていると、小屋があった。森のそばの小さな小屋。私は音を立てないようにそちらに向かう。昔に比べて歩行技術の向上した私は、音を消せるようになっている。
小屋に近づくと、大きな声が聞こえる。喚き声、泣き声、叫ぶ声……。二人の女性が喧嘩している? 近くにいくと声が大きくなる。
「だから泣き止めっていっているだろ?」この声はイサだ。「敵に見つかったらどうするんだ」
敵のことを考えるならイサ自身もいろいろ気を付けたほうがいい。
もう一人の泣き声は……、誰だろう?
ガンッ、ガンッガン。
私のノックは思った以上に音が響いてしまう。突然の音にイサの叫び声はやむ。すすり泣きの方はまだ続いている。
「誰だ?」
中からイサの声がする。
「フェニカ」
私が名乗ると中から扉が開く。ほとんど裸のイサが顔を出してくる。スタイルのいい身体が目に悪い。
「ひとまず入れよ。攻撃はするな」
中にいたのは……、スイレンさん? 違う、このぺったんこの胸は、スイセン女王か。なぜ女王がこんなところに? スイセン女王の顔は涙で濡れている。
「スイセン女王? あなたが三人目?」
つい正直に三人目と聞いてしまった。先程のグライスターの話、私の知り合いで生き残るのは三人という話。なぜ、この人が?
「三人目? その話は後で聞くから、まずは入れ。そしてスイセン、泣き止め」
私がするりと中に入ると、イサが内側から扉に鍵を掛ける。
「服は脱いで乾かしとけ。表向きは女3人、服を脱いでもまあ、問題ないだろ」
「表向き?」
「あとで話すさ、気にするな」
三人がゆったりくつろぐのがギリギリ、そういう大きさの小部屋だ。中にはランプ一つしかない。イサとスイセンの服が地べたにほしてある。ボロ布同然のイサの服と同じくらい、スイセンのものと思われる服も質素だ。
私が一段落つくと「こうして三人生き残ったわけだ」イサが口を開く。
「情報を交換しよう」
イサが私とスイセンに目配せする。
「大事だろ? 情報? あまりに多くのことが起きすぎた。大勢死んだ。生き残るためには情報が必要だ。スイセンの話はまだまだ問い詰めたいし、フェニカ」イサがこちらを向いて「お前の話もアレだけってこたぁないよな? 絶対に何か黙ってる」
疑り深いんだか感がいいのだかわからないが、図星を突かれる。
「俺の話からするから、ちょっと聞いてくれ」




