1-20, 唐突な死
血しぶきを撒き散らしながら落ちた死体は、最後地面にぶつかってつぶれる。飛び散る血が私にもかかる。温かい。怖いほどに温か
私は棒立ちのまま戦いの行く末を眺めている。それだけが私に許されたこと。運命なのかそうでないのかはわからない。ただ、この戦いを最後まで見届けておきたい。
死体とほぼ同時に落下したグライスターとアルフォンスは、すでに戦闘に移っている。アルフォンスは、当たり前の用に地面に着地し、グライスターは下から飛んで来たドラゴンに捕まった。
主を失ったヴォイドのドラゴンは、ぶるぉぉぉぉぉぉぉぉ、と長い吠え声を炎とともに吐き出すと、上に乗っているカネチカを振り落としにかかる。アルフォンスとグライスターが切り結んでいる中、カネチカはドラゴンにしがみつく。ドラゴンは上に下に左右へと身体をゆすり、カネチカが振り落とされないと知るや、背中を下にして地上に落下する。ぐしゃっ。カネチカはドラゴンの重さに潰れ、ドラゴンは満足したのかどこかへと飛び立つ。
その間剣を交える二人は膠着していた。キン、キンと剣の踊り狂う音が聞こえる。グライスターはドラゴンを使ったアクロバティックな戦闘を好むようだ。重そうな鎧を着ているのにそれを感じさせない機敏な動きでアルフォンスを翻弄する。
ドラゴンから飛び降り、アルフォンスに切りかかる。アルフォンスがそれを受け止めると、くるりと回転して、逆からの剣、それを受け止めたところで、後ろに飛びのいて、回り込んでいたドラゴンを蹴って突き。
ゴスっと鎧の上からアルフォンスの右肩に剣が深く突き刺さる。
「ああああああああああぁぁぁぁ」
アルフォンスの叫びが宙に消えた。
「月島桜」
アルフォンスが呼びかける。その表情は子どもが泣きわめくようだ。
「なぜ俺を切る? なぜ皆を殺した? 俺達が何をした? 俺達の楽園をなぜ邪魔した?」
月島桜、グライスターの剣が止まる。アルフォンスの目は怖いほど大きく見開かれ、肩からは血がぽたぽたと滴る。隙だらけのアルフォンスは今のグライスターの敵ではないように見える。しかし、グライスターは丁寧に罪状を伝えることにしたようだ。
「国家転覆、密猟、殺人、強盗、強姦、暴動、騒乱、枚挙に暇がない。皇帝陛下の名の元に、グライスター・マルル・ガルバが引導を渡す。主なきこの国はすでに帝国に占拠され、帝国領であり、帝国法の下に貴様を裁く」
「なぜ? この世界の人間なんてゴミみたいなものだろう? プチプチしたら潰れる。デコピンしただけで死ぬ。そんな弱い人々に国を与えたのが俺達だ。感謝されこそすれ、殺される理由はない」
「死ね」
その言葉と主にドラゴンが口を開き、ぶるぉぉぉぉぉぉ、と炎を吐く。アルフォンスの表情を見る間もなく、何もかも燃え落ちる。
呆気ない死だ。
こうして三人の大罪人、三人の転生者は唐突な死を迎える。三人とも何が起きたか全くわからなかっただろう。




