1-15, 私の正体なんて唯の奴隷に過ぎない。それ以上でもそれ以下でもないはずだ
「私の目的……?」
「ああ、こんな国に来るって時点でおかしいだろ。お前の目的は何なんだ?」
覚悟を決めて身の上を話すか。
「私は帝国では奴隷の身分でした。記憶が続く限りずっと奴隷でした」
「お、おう」
唐突に重い話始まったなーみたいな反応。覚悟がなければ聞くな。
「逃亡した後、ウィリーの村というところに行き、スミさん、スオウ・スミと出会いました」
「ウィリーだと?」「先日全滅した?」と声が上がる。
「ウィリーで何があったか知っているのですか?」
「こんな強制労働施設にだって情報は入ってくるさ」
イサが、それはいいから話を続けろ、と促す。
「ウィリーに行き着いたのが去年の冬です。行き場のない私をスオウ・スミさんに拾ってもらいました。その後、いろいろなことを習い、先日の事件が会って」
ちょっとうるっとする。
「ふむ……。スオウ様がそう簡単に殺されるとは思えぬ。何があったのだ?」
先程の偉そうなおっさんが聞く。
「その日、私達二人は野草採取のために山の奥に向かっていました。そうしたら、突如として大きな吠える声が聞こえ、現場に駆けつけると、辺り一帯に黒い炎が舞っていました」
「ドラゴンか? 確かそんな情報もあったな」
イサが尋ねる。
「私達が目撃したのです。そして、村に戻る直前、異変に気づいたスミさんが私をベンジントンに向かわせてそのまま……」
「ということは、スオウお姉様が死ぬところは見ていないのですね?」
尋ねたのはスイレンだ。
「確かに私は直接見ていませんが、画像を……」
その画像を思い出すたび、私は涙をこぼす。今回も自然と泣いてしまう。後悔、無念、寂寥、そういったものがまざる。私はもっと強くならねば。
「そこまででいいだろう」
イサが止めると、私はハッとして「失礼しました」と言いながら涙を拭う。
「みんな、どう思う?」
皆の視線が一様に私に注がれる。なんだろう、キョロキョロしてしまう。周りの人々はそれぞれ視線を交わしている。
「おっと、これだけは聞いておかないとな。あんたの目で見て、上の、外の、街の様子はどうだった?」
街の様子? 私が見た限りは……。
「平和でした。私の身に起きた不幸とは無縁な平和な世界がそこには広がっていました」
くっくっくっ、とイサは笑うと、俺の方をしっかりとみすえる。
「お前を俺達の仲間としよう。脱獄の時間だ」