1-13, 裁判のような何か
お城につくと、脇にある小さな建物へと通された。
兵士の一人が私を椅子に座らせる。木でできた建物はどっしりとして重々しい。中には机と椅子がたくさん。俺の記憶にある限りこの光景に一番近い建物は裁判所だ。
「フェニカ、ここで待て」
私は兵士に言われたとおりに、立ち止まる。所持品はあらかた取り上げられてしまったから不安感がある。兵士たちとはできるだけ目を合わせないようにしているが、兵士たちの視線を感じ、さらに怖くなる。
「きましたな……」
軋むように、ドアが開いて出てきたのは……スミさん? なんで?
声を出すのは我慢したが、私の様子が明らかに変わったのを兵士たちに見られている。しかし、見られていることを気にせず、私は扉から入ってきたスミさんを見る。頭の先からつま先まで見るとちょっとした違和感がある。
胸が小さい。小さいというか、ない。
スミさんは、毎度毎度胸の大きさで私を馬鹿にしてきた。つまりこの人は、別の誰か。
私はジロジロ見るのをやめ、ひと呼吸深く吸って吐いてすると切り出す。
「その方は、どなたですか?」
兵士がスミさんもどきの方に視線を送ると、スミさんもどきが自分で話す、と手で伝えた。
「私は、スイセン・スミ。スミ・ソーサラ国の女王にして、スオウ・スミの妹です」
スミさんの妹? スミさんは王族?
スイセンの他数人の人物が席につく。私も真ん中の席に座る。
「スオウ・スミの弟子と名乗る者フェニカ、あなたに判決を言い渡します」
判決? 弁解の時間もなしに? 私のことはどこまで女王に伝わっているのだろう?
「あなたが何者かは知りませんが、スオウ・スミと関係があるならこの地を闊歩させる理由はありません。地下迷宮にて労働の刑に処します」
スミさん、スミさんの言うようにこの国に来たら、私は捕まってしまったよ。奴隷再び。
「女王、しかし……」
高貴な身分と思われる一人が女王に何かを伝えようとする。
「口を慎みなさい」
しかし、即座に止められる。今この人が何を言おうとしたのか、そもそもなぜ私が唐突に刑罰を食らうことになるのか、気になる。
「女王陛下。私の処遇について質問がございます」
私はできうる限り丁寧に女王陛下に質問を投げようとする。
「あなたと話すことはありません。兵士長、目隠しをしてフェニカを地下迷宮の労働区画へ連れていきなさい」
「承知いたしました、陛下」
こうして私はまた奴隷となった。
一切の説明はなかった。