のんびり異世界生活を満喫
異世界でのんびり住み始めて数週間が過ぎました。自宅でのんびーりくつろぐ生活は、俺のストレスを消してくれます。
元の世界での社畜生活、朝は通勤ラッシュでぎゅうぎゅう詰めの車内で揉まれて、帰りは終電でガラガラの車内で寝ながら帰る日々。
仕事のできない上司は、ガミガミと怒ることだけが仕事でした。スケジュール管理もできないから、社員はみんな無理な締め切りにいつも追われていました。気が付けば隣の席の奴が居なくなり、次の日には、また新しく入った奴がそこに座っている。そんな入れ替わりの激しい会社でした。
安アパートに帰ると風呂に入って寝るだけ。夜中の1時に寝たと思ったら、すぐに目覚ましがけたたましい音を発して飛び起きる。朝の起床は午前5時でした。
そんな生活を高校を出てから26才まで続けていた。こちらに飛ばされてきたのは、正直ありがたかったです。今の生活からはもう離れられないでしょう。
家は、2階建ての一戸建て。周りの森はすべて俺んちの庭です。仕事はドラゴンの鱗を剥がすのが仕事です。1鱗500万ゴールド。それだけで、節約すれば2年は暮らせます。
一日中家に引きこもっている。そんな幸せな日々を過ごしていました。
しかし、ひとつだけ不満があります。この世界には娯楽がないのです。ここにはテレビは当然ないし、インターネットもパソコンもない。ゲーム機もなければ、車やバイクももちろんない。移動手段は魔法で空を飛ぶか、馬車か、馬です。打ち出の小槌に車やバイクを願ってみたが、出てくることはありませんでした。出現させるには、何か条件があるのかもしれません。
つまり何が言いたいかというと、暇なのです。
うん、贅沢な悩みだとは思います。
そうだ、旅に出よう。
俺は、そう決心するのでした。異世界をいろいろと旅してまわる。ちょっと考えただけで、楽しそうでワクワクします。
思い立ったら吉日、すぐに行動に出ます。まず、家を持って行けないか試してみます。大黒天の大袋に家を収納しようと念じます。すると、二階建ての家が一瞬で消え去りました。どうやら成功です。
そのまま、エミュさんの家にテレポートしました。ドアをコンコンとノックします。
「はーい。」
エミュさんが元気良く出てきました。
「こんにちは、しばらく旅に出ることにしまして。その前に、お世話になった人に挨拶しておこうかと。」
「えええー、急にどうして・・・。」
「簡単に説明すると、暇なんです。」
「それは、激しく同意します。。」
エミュさんも思い当たることが多々ある様ですね。
「それに長く引きこもっていると、神から何か怒られそうな気がして。」
「そうですね、確か、ゆうじさんの行動を分析しているんでしたよね。」
「はい、あまり変化がなさすぎても、まずいかと思いまして。」
エミュさんも納得してもらえた様ですが、少し考える素振りをすると、
「では、私もお供します!」
「えええええー!?」
エミュさんがとんでもないことを言いだしました。
「いやいや、危険な旅になるかもしれませんよ?」
「いや、ゆうじさんの側が1番安全だと思いますよ。それに、ゆうじさんにはかないませんけど、ドラゴンより強い魔物はそうそういませんよ?」
正論ですね。。
「しかし、男と女なので毎回宿を二部屋借りるのは、お金も2倍かかりますし。」
「そんなの、一緒の部屋でいいですよ?」
「いやいや、そういう訳にもいかないでしょう。。」
「えーと、200年以上も生きているので、私経験豊富ですよ。それにドラゴンと人族じゃ子供はできませんし。」
そうでした。。外見だけ見ると10代ですから忘れがちですけど、エミュさん200歳超えてるんだった。。
困りました。俺は実は前の世界でも女の経験って無いんですよね。。ヘタレだってバレてしまうかもしれません。。ここは強気にいきましょう。。
「そうですか、お手柔らかにお願いします。」
駄目でした。
「でも、ちゃんとご両親の許可は取ってくださいね?」
そう言うと、エミュさんは家の中に向かって叫んだ。
「父さん、母さん、ゆうじさんが旅に出るって言ってるんだけど、ついて行ってもいい?」
「いいぞー。」
「いいわよ、でも100年に1度くらいは帰ってきなさいよ?」
「父さんも母さんもいいって。」
エミュさんが可愛く微笑んで言った。
100年に1度って、ドラゴンの時間感覚おかしいって。
こうして、俺とエミュさんは旅に出ることになりました。
「じゃあ、旅の支度しないと! ちょっと待ってて。」
エミュさんは部屋の中に走って行きました。30分くらい待ってるとエミュさんが戻ってきた。手ぶらに見えるけど?
すると、エミュさんが何も無いところから金貨や金塊が入った箱を出した。ああ、アイテムボックスか。腰に付けている小物入れが、アイテムボックスになっているそうです。
「これ、私が今まで集めてた金目の物だよ。ゆうじさんにあげる!」
「いやいや、お金なんて俺も沢山持ってるから大丈夫だよ?」
「結納金ということで!」
「冗談はやめてください!」
「ちぇっ、半分本気だったんだけどな。ま、いいや。」
そう言うと、エミュさんはまた微笑んだ。やばい、可愛いぞ。
早速、俺たちは目的地について相談を始めます。
「では、まず人族の国に行きたいと思うんだけど、どうかな?」
「私はゆうじさんの行きたい所ならどこでも良いですよ。」
「じゃ、1番近くの人族の国は何処かな?」
「えーと、ここから東に行ったところに、アルシュタイン王国があります。」
「よし、まずはそこかな。」
目的地が決まりました。まずはアルシュタイン王国に向かうことにします。
「では、父さん、母さん、行ってきます!」
「娘さんは責任をもって守りますので、行ってきます。」
「ゆうじさんがいるのだから、危険なんてありえないですよ。安心して送り出せるというものです。」
「ゆうじさんに迷惑をかけるんじゃないわよ!」
そして両親が声をそろえて言った。
「「いってらっしゃい!」」
その後、まとめ役のドミニクさんと、ラウル商会のラウルさんに挨拶してまわりました。
ラウルさんからは、アルシュタイン王国にあるラウル商会の支店長宛に紹介状を書いてもらいました。
あと、アルシュタインでは必ず防壁の手前で地上に降りて、入国の手続きをするように言われました。当然ですね。
また、入国の際には冒険者ギルドの冒険者プレートか、商人ギルドの身分証があれば入国税が割引きされるので、持っていて損はないそうです。無くても入国はできるそうですが、税金が高いらしいです。
ラウルさんには色々と情報をもらい助かりました。チップとして銀貨一枚を渡します。これもラウルさんからの知恵の1つです。
ラウルさんにお礼を言って別れたあと、俺たちは冒険者ギルドのドラゴニア出張所にやってきました。冒険者プレートがあると色々と便利らしいので、作りにきたのです。
ギルドに入ると、中に人は誰もいないようです。ここは人が少ないですもんね。
俺たちは受付に声をかけます。
「すみません、冒険者プレートを作りたいのですが。」
「はい、冒険者ギルドに登録でよろしいですね?」
登録するとおそらくプレートを貰えるのでしょう。俺は肯定します。。
「では、こちらの魔道具に手を置いてください。犯罪歴や現在のステータスを読み取ります。」
あ、これはまずい。ステータス見られると神の使徒であることや、レベルが無限大なのがバレてしまう。
そう思った瞬間、頭の中にいつもの音声が響き渡る。
『スキルなんでもありが発動しました。
ステータス隠蔽、ステータス偽装スキルを獲得しました。』
ナイスタイミングです。俺は、急いでスキルを実行する。そして、魔道具に両手を乗せる。
魔道具には、
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名前、ゆうじ
年齢、16歳
種族、ヒューマン
職業、火魔法術士
レベル、3
HP、120
MP、207
力、8
体力、9
知力、12
素早さ、3
精神力、4
運、3
スキル
魔力操作、魔力感知
火魔法
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以上のように表示されました。
ふー、焦りました。なんとかなりました。エミュさんは首を傾げていますが、いらん事言わないでくださいよ・・。
次はエミュさんです。彼女が魔道具に手を置こうとすると
「あ、エミュ様は結構です。ドラゴンは計測できませんから。」
「えー、私も調べて欲しいのに・・・。それにゆうじさんがレベル3って絶対におか・・・・モガモガ」
慌ててエミュさんの口をふさぎます。
「どうかしましたか?」
「いえ、なんでもないですよ。それで彼女のプレートはどうなるのでしょうか?」
「はい、種族にドラゴンとなるだけで、後は表示無しになります。あ、名前はもちろん表示されます。」
前例があるようですね、安心しました。
数分後、プレートが支給されました。俺は冒険者ランクEからのスタートです。エミュさんはいきなりランクAです。
何故Aランク?と聞くと、「ドラゴンだから」の一言で返されました。うん・・・、納得です。
納得してないのはエミュさんで、
「えー、私もゆうじさんと同じランクEがいいー!」
なんて言うものですから、無理矢理ギルドから連れて帰りました。全く、空気読んでくださいよ。。
ランクは1番上はSランクで、ABCDEと下がっていきます。1番下が俺のEランクですね。エミュさんがSではない理由は、勇者などがドラゴンも倒すので、勇者のランクをSにしているのだそうです。
さあ、やっと出発できますね。フライの魔法を頭の中で唱えます。ゆっくりと体が浮かんでいき上昇して行きます。エミュさんも人の姿のまま飛んでいます。人の姿でも飛べるんですね。
「ゆうじさんの前だと、できるだけ人の姿でいたいんです。」
やっぱり可愛いです。