はじめてお金を入手しました。
家を焼かれてしまったので、のんびりと森の中を町に向かって歩いています。
さて、魔力感知には多くの魔物たちが引っかかっていますが、魔力を垂れ流しているので襲ってきたりはしないようです。むしろ、逃げまどっています。。この世界では、魔力が多いほど強いって事なのでしょうか?
もう少しで町に到着しそうです。そろそろ、魔力を抑えた方が良いみたいです。俺は、魔力を体外に出ないように閉じ込めます。そういえば、夜中だというのにはっきりと周りが見えます。これも魔力視の能力なんでしょうか?
もう、これって人間やめてますよね。。ハイヒューマンと言うことですが、俺が帽子から入手した知識の中ではそんな種族は存在しませんでした。あえて、神から秘密にされているのかもしれません。
ドラコンの町に着きました。ゆっくりと歩いてきたので、もうだいぶ空は明るくなっています。
門のところには、やっぱり警備の人は見当たりません。まぁ、ドラゴンは最強の種族ですからね。。守る必要もないのかもしれませんが。
この町の町長さんとかいないのでしょうか。一番偉い人のお家はどれでしょう?お城など大きな建物は見当たりません。
しばらく、町の中をうろうろしていると町の中央辺りにある井戸から水をくんでいる少女がいます。おや、あの女の子は・・・
「エミュさんではないですか?」
「あれー、ゆうじさんではないですか。おはようございます。」
おお、なんとゆう偶然。これは助かりました。。さっそく昨夜のことをお伝えしました。
「え!? 盗賊ですか?」
「森の中で寝たんですか?」
「え!? 家を建てた?」
エミュさん、驚きすぎです。俺はとりあえず、証拠としてリーダーの遺体を袋から出した。
ドスン
「えええええ!? どっから出したんですかぁって、えええええーーー! このドラゴン、有名な盗賊の頭領をしてる・・・、たしか、えーと・・・、サビエルカエル・・・?」
「サンビカエルです。」
「そう、それです。」
どうやら、ドラゴン族の中でも有名な盗賊だったらしいです。ドラゴンの中でも、かなり強く、この町でも恐れられていたようです。
「それで、この盗賊たちに懸賞金がかかっていたら俺も無一文から脱却できると思いまして・・・。」
「そ・・・、そうだったのですね。すみません、お金を持っていないとは思いませんでした。」
「いえいえ、大丈夫ですよ。それで、この町には衛兵さんはいないのでしょうか?」
「いませんよ。この町が攻められるような事が無いもので。」
うん、そうですよね。
普通は、ドラゴンの町に攻め込んでくるような国は無いよね・・・。
「この町のまとめ役のドラゴンならいますよ。案内しましょうか?」
「すみません、よろしいですかね?」
こんな流れで、俺はこの町のまとめ役であるドラゴンに面会することになりました。
その前に、エミュさんの水くみを手伝ってあげましょう。しかし、ドラゴンなら魔法で水くらいだせないのでしょうか?そんなことを聞いてみると、どうやら炎しか出せないらしいです。あと、飛翔の魔法と防御の障壁を張る魔法が使えるらしいです。
俺たちは、ドラゴン族のまとめ役が住む屋敷まで来ました。まとめ役なだけあって、周りの家よりはひと回り大きいです。エミュさんがドアをドンドンと叩く。すると、メイド服を着た人族の女の子が出てきた。
「あら、エミュ様。朝早くからどうなさいましたか?」
「おはようございます。朝早くから申し訳ありません。実は、こちらの方が盗賊を討伐しまして、その件で参りました。」
しばらくすると、俺達はある部屋に通された。部屋で少し待っていると、ドアが開いて年配の男が入ってきた。
「おはよう、エミュ。盗賊を退治したと聞いたが?」
「はい、こちらのゆうじさんが、あのザビエルエルを倒したんですよぉ」
「サンビカエルです。」
「それはまことか?ああ、申し遅れたな。わしはドミニクじゃ。」
「ゆうじです。森の中で襲われまして、仕方なく倒しました。」
「しかし、見たところ人族に見えるが・・・、本当にドラゴン族の盗賊を倒したのか?」
うん、普通は信じられないよね。人がドラゴンを倒すなんて、勇者とかじゃないと無理だ。しかし、強さを証明するために、ここで魔力を開放するわけにもいかない。この前開放したら、盗賊の二人は魔力だけで失神したもんな。。
「証拠のドラゴンの遺体を出したいのですが、ここでは狭すぎて家を壊してしまいます。」
「見たところ手ぶらのようじゃが・・、ああ、アイテムボックスか。」
俺たちは中庭にでた。そして、大黒天の大袋から盗賊のリーダーの遺体を出した。
ドスン。
あと、仲間の遺体も4体並べていく。
「な・・・、なんと。全部で5人もひとりで倒したのか?」
「はい。」
仲間の4体は、人族の形をしていたが、死んでから少し経つとドラゴンの形に戻ったのだ。
「それで、こいつらを引き渡したら懸賞金とかもらえますか?」
「すまんがドラゴン族には通貨という概念はないのじゃ。だから、わしが懸賞金という形でお金を渡すことはできん。」
そうですよねぇ。ドラゴンは魔物になるわけだから、普通はお金の概念なんか持ってないよね。
「同族なので、どうにか改心させたかったのじゃが。しかし、こいつらはわしらの町でも女をさらって行ったり旅人を襲ったりで、流石に見逃せなくなってしもうた。近々、町の精鋭たちで討伐隊を出す予定だったのだ。正直、同族を殺す必要がなくなってよかったわい・・。」
続けてドミニクは言う。
「お金に換金したいのなら、この町にいる人族の商人に売却すればよいぞ。わしらも金が必要になると、古くなって自然に取れた鱗を商人に買い取ってもらったりするからな。」
そうか、その手があった。ドラゴンの鱗は人族にとっては超高級品だったはず。もしかしたら、ドラゴン5体でかなりの財産になるかも。
「商人に売却するつもりなら、紹介状を書いてあげよう。」
「ありがとうございます。」
俺は、まとめ役のドミニクさんから紹介状を受け取り、エミュさんと一緒に家を出ました。このまま商人さんのお店まで案内してくれるそうです。エミュさんには助けてもらってばかりですね。
商人さんのお店は、商業エリアと呼ばれる場所にありました。今までいた場所は、居住エリアと言うそうです。
お店の方に紹介状を渡すと、店主がやってきました。そして、店の奥へと案内してくれます。
商談するための部屋でしょうか。ふかふかのソファーがありました。
「初めまして、ラウル商会の代表ラウルです。」
「初めまして、ゆうじと申します。」
「紹介状に書かれておりましたが、ドラゴンを買い取ってほしいと?」
「そうなのです。可能でしょうか?」
本題に入ると、店主は少し暗い顔になります。
「大変申し訳ありません。ドミニクさまの紹介ですので、できる限りのことはさせていただきたいのですが、ドラゴンを丸々買い取るのは不可能でございます。買い取るだけの資金が我々にはありません・・・。」
予想外の返答でした。。
それほど高額になるのでしょうか。
「それでしたら、鱗だけなら可能でしょうか?」
「はい、現在の相場は鱗一枚につき約500万ゴールドです。今回、買い取り可能な枚数は5枚で、2500万ゴールドまでなら。。」
それがどのくらいの大金なのかはよくわかりません。でも、無一文の俺にはありがたい話です。
「それでは、5枚買取お願いできますか?」
「はい、ありがとうございます。」
「では、ドラゴンは何処に出せばいいですかね?」
「えっと、倉庫まで案内いたします。」
流石に、アイテムボックス持っていることくらいでは驚かれないようですね。
倉庫にやってくると、俺はリーダーの遺体を取り出します。
ドスン
「鱗を剥がさないとだめですね。。」
同族の鱗を剥がすところはエミュさんには見せたくありません。なので、今は席を外してもらっています。
俺は鱗に手を伸ばすと、べりべりと剥ぎ取ります。5枚剥がすと、床に置きます。結構軽いですね。それでいて防御力は非常に高いらしい。これで武具を作ると高級になるのがよくわかります。
振り返ってみると、店主が口をポカーンと開けて動かなくなっています。どうしたのでしょうか?
「ど・・・ドラゴンの鱗を素手で剥がす人、生まれて初めて見ました。。」
え? そうなんですか?簡単に剥がれましたけど。。
「鱗を剥がすには、ミスリル以上の高価な道具でないとかなり難しいはずなのですが・・・。通常なら、剥がすときに傷もつきますし、無傷の鱗を見たのも初めてですよ。。」
これは、まずいところを見せてしまったかもしれません。
「え、えーと。少し力が強いだけですよ。あはははは。」
駄目です、ますます店主の顔が青くなっていきます。
笑顔ですが、少しひきつっているのがわかります・・・。
無事に2500万ゴールド受け取りました。金貨で2500枚ありました。俺の前で、2500枚数えて見せてくれた店主はしっかりしているなぁと思いました。
と、言うことは、金貨一枚1万ゴールドなんですね。
帰りにエミュさんに金貨100枚くらい渡そうかと思ったのですが、金貨ではあまり喜んでくれませんでした。もう見慣れているそうです・・・。価値観が違いますね。仕方がないので、前の世界のお金、1円、10円、50円、100円、500円硬貨を10枚ずつ、打ち出の小槌で出して渡しました。
金貨100枚より、明らかに大喜びされました。
コレクションが増えて良かったですね。。
やっと、この世界のお金を入手しました。
(これで、宿屋にも泊まれますよね・・・。)