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無一文の神の使徒です

 路頭に迷うとはこのことでしょうか。

 結局宿には泊めてもらえませんでした。


 金の延べ棒を受け取り拒否されるとは思いませんでした。確かに、出どころの怪しい金塊は怖くて受け取れないかもしれません。俺も突然一億円をあげると言われても、信じられないと思います。


 しかし、おかしいですね。元の世界のお金はでてくるのに、ここの異世界のお金は何度振っても出てきません。何か条件があるのでしょうか。


 元の世界の一万円札はでてきましたが、ここではただの紙切れです。


 仕方がないので、俺は町から出て森に戻りました。ドラゴンの町には検問所のようなところはありません。空から飛んでくるので、あっても無意味ですもんね。


 生きていくには衣食住が必要です。

 衣は今着ているものでとりあえず十分です。

 食は水が無限ででてくるのですぐに死ぬことはありません。

 急ぐ必要があるのは、住むための住居でしょうね。


 俺は、住居を建てるために必要なスキルをくださいとお願いしました。いつものように、音声が頭の中で響き渡ります。


『スキルなんでもありが発動しました。

建築士、大工、木こり、製材スキルを獲得しました。』


 そして、右手に打ち出の小槌を出現させると、木こり用の斧よでろっと念じます。


ズンッ


 大きな斧が出現しました。木こり用の斧にしては、随分と大きいような気がしますが。とりあえず、それを持ち上げるととても軽かったです。その斧をじっと見ることによって詳細がわかります。神の力を宿した神具の斧と書いていますが、どうでもいいです。木が倒せられれば問題ありません。


 さっそく木の前に立って、斧を勢いよく振りかぶります。


ズドドドドーーーーーン


 一度斧を振りぬいただけなのに、俺の前方の木が15本ほど倒れました。


 これは危ないですね・・・、周囲に人がいないことを良く確認しないといけません。


 3回ほど斧を振ると、一軒家が建てられるほど広い土地ができました。地面にはまだ木の根っこの部分が残っています。これは、めんどくさいですが一本ずつ手で引っこ抜きます。両手で掴んでうんしょと引っこ抜けば簡単に抜けます。それだけ俺の力が強くなっているのでしょう。


 つぎに、打ち出の小槌で鉈を入手しました。こちらも、神具となっています。打ち出の小槌で出した道具は全部神具になるんでしょうか?俺は鉈で木の枝を落としていきます。製材スキルのせいでしょうか、鉈を一度振り落としただけで木材が勝手に製材されてバラバラバラっと地面に落ちました。製材された木材を持ってみると、見事に乾燥までされています。


あとは、木材を組み立てるだけです。


 建築と大工スキルに任せて木を組んでいきます。あっという間に平屋の一戸建てができてしまいました。


 あたりはすっかり暗くなってきました。

 俺は、早速家の中に入ります。


 部屋はリビング、キッチン、ダイニング、寝室、トイレ、風呂です。トイレは洋風の水洗トイレです。ちゃんと水も流れますが、何処に流れていくのでしょう?うーん、細かいことは気にしないようにしましょう。


 お風呂も、ちゃんと蛇口を開くとお湯が出ます。温度調節機能付きです。


 部屋の壁にはなにやらスイッチが付いてます。それを押すと、天井の照明がつきました。


 トイレも風呂も照明も、すべて打ち出の小槌から出したものです。おそらく、魔道具なのでしょう。


 同じように、寝室にベットと枕と布団をだします。そして、今日は疲れたのでそのまま眠ってしまいました。。



ドゴーーーーン



 ん?

 俺は、まだ寝ぼけた眼を擦りながら目が覚めました。

 なんでしょう、すごく大きな音がしました。


 辺りはまだ真っ暗です。まだ夜中みたいです。


 こんな時間に何でしょう。。玄関まで歩いていくと、玄関が壊されていました。。そこには、男が数人立っています。


 あー、防御の結界を張っておくのを忘れていました。。夜中に盗賊たちがやってきたようです。どうしましょう。


「昨日はなかったはずの家が、森の中に突然できてると思ったら、人間が住んでいたのか。」


 盗賊のリーダーさんがニヤニヤしています。


「おとなしく金を出せば、命までは取らないでやるぞ。」

「おらぁ、早く金を出せ!」


 メンバーさんが大きな声で脅してきます。困ったものです。お金は一円だって持っていませんよ。。


 盗賊の皆さんは、魔力から察するにドラゴン族の方のようですね。


「すみません、俺はいま無一文なんですよね。まぁ、お金持っていても譲るわけにはいきませんけど。。」


 そういうと、盗賊のリーダーさんが憤怒して言います。


「嘘ついてるんじゃねー、こんな立派な家を建てられるのに、金がないとは言わせねーぞ。」


 そういわれましても、この家は自分で作ったんですけど。。


 しかし、ドラゴン族のエミュは襲ってこなかったのにこの人たちは俺が怖くないのかなぁ。あ、そうか。魔力を抑えているのでこの人たちには俺がほとんど魔力を持たない普通の人間のように見えているのでしょう。


 争いは嫌なので、俺は抑えている魔力を開放することにした。これで、恐れて逃げ出してくれるかもしれません。イメージして、魔力を抑えている体表面の膜を一気に取り除きます。その瞬間、かなり強い風が俺の中から外に噴出した感じがしました。


ドサッ

バタッ


 魔力を開放した瞬間、盗賊のメンバー二人が倒れました。あれぇ、魔力開放しただけなんですけど。。


 リーダーさんが青い顔をして叫びます


「ひぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃ、な・・・なんなんだおまえわぁぁ」


 足がガクガクしていて、硬直しているようですね。


「そ・・・、その膨大な魔力・・・ありえない。人間のくせに・・・何者だぁ~」


「俺は、ただのハイヒューマンという種族ですよ。お金は本当に持っていないので、このまま立ち去りなさい。」


 俺の言葉を聞いて、リーダーは驚愕の顔をする。


「な・・なんだと。。あの絶滅したと言われている伝説のハイヒューマンの生き残りか?」


伝説? なんですかそれは。。


「そんなことは知りませんよ。出て行ってください。」


「くっ・・、この盗賊『ドラゴンの咆哮』のリーダー、サンビカエルが逃げ出したとあっては、どの道おしまいなんだよ!!」


 なんか、教会にいそうな名前ですね・・。その、サンビカエルは光に包まれると大きな竜の姿に変化していく。


 おいおい・・・、家を壊すなよ?


 そして、大きく息を吸い込み、その大きな口をガバッと開いた。

 その奥は真っ赤に染まっていく・・・。


 おいおい・・・、家を壊すなよ・・・?


 次の瞬間、目の前が真っ赤な炎に包まれた。これは、ドラゴンブレスと言う奴か? これはやばい、俺は慌てて正面に手を広げて防御魔法を展開しようとするが、すでに手遅れだった。。


 そのドラゴンブレスは、すこし暖かい風に感じた。どうやら、無事だったようだ。レベル無限大は例えドラゴンブレスであろうと、ただのそよ風に変えてしまうらしい。


 しかし、俺の後ろには何もなかった・・・。

 家は、綺麗に消滅していた。。


 この野郎。

 俺が一生懸命つくった家を・・・。

 どうしてくれよう。。


『スキルなんでもありが発動しました。

威圧、格闘、瞬歩をマスターしました。』


 頭の中で、スキルを覚えたアナウンスが響く。


 俺は、あえてニコニコして言った。


「盗賊さん~、よくも私が苦労して建てた家を壊してくれましたねぇ・・・。」


 勝手に威圧のスキルが上乗せされている。サンビカエルはモロに威圧を受けて動けなくなっている。もう声すら出せない、息もできないようだ。。


 俺は瞬歩を使って、サンビカエルに一瞬で近づいて心臓めがけて軽く一発パンチをぶち込んだ。彼の命を奪うには、一発で十分だった。


 同じように盗賊たちの命を刈り取った俺は、大黒天の大袋にドラゴンの遺体を収納していく。この大袋はアイテムボックスになっている。容量は無制限だし、時間経過もない。非常に便利なアイテムだ。


 この盗賊をドラゴン族の衛兵に引き渡したらもしかしたら、懸賞金をもらえるかもしれない。衛兵がいるのかはわからないけどね。。


 家を失ってしまったので仕方がない。俺は、夜の森を町に向かって歩き出した。


 明日は、お金が手に入るといいなぁ・・・。





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