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ドラゴン族の町

 今、ドラゴン族のエミュと並んで空を飛んでいます。近くの町まで案内してもらうことになっているのです。上空から眺めてみても、この辺りは森しかありません。どこを向いても森、森、森。


 普通、町の近くに召喚されるのではないですか? こんな森の中でひとり残されて・・。もし魔法を覚える前に、襲われていたらと思うと恐ろしいです。


 しばらく飛んでいると、前方に小さな町が見えてきました。どうやら、目的地はあそこのようです。速度を落として町の中に降りていきます。ん? そのまま町の中に降りて行って大丈夫なのですか? 俺はともかく、ドラゴンのエミュが降りたら大変な騒ぎになるのでは・・・。


「えっと、ドラゴンのあなたが町に降りたらまずくないですか?」

【ああ、大丈夫ですよぉ。ここはドラゴン族の町ですから。】


 ドラゴン族の町ですか? 街を見下ろしても、ドラゴンなんて一匹も見当たりません。俺たちはゆっくりと地面に着地して、エミュは翼をバタバタと動かします。確かにおかしいです。ドラゴンが街中に降りたというのに、誰も慌てたり逃げたりしません。


 突然、隣にまぶしい光が立ち込める


「な、何?」


 光の方を向くと、エミュの体が光に包まれています。そのままドラゴンの姿が徐々に小さくなり、光が収まると、そこにはひとりの美少女が立っていました。


「ようこそ、ドラゴン族の町ドラゴニアへ!!」


 美少女の姿になったエミュは両手を大きく広げてそう言います。


「人に変身することができるのですか?」

「はい、ここに住んでいるドラゴンだけなんですけどね。大人になると、人に変身することができるようになります。」


 すごいですね、どこから見ても人間にしか見えません。


「すると、この町にいる人間はすべてドラゴンなのですか?」

「いえ、人間も普通に暮らしていますよ。」


 人間もいるらしい。うーん、見分けがつかないんですが。。


「えっと、人間とドラゴンはどうやって見分けているんですか?」

「ああ、それは魔力の質と言うか、波長と言うか・・・。なんとなくわかります。」


 答えになってません。


 その魔力の質とやらを見極めるためにエミュをじっと見つめ続けます。すると、頭の中に音声が響きました。


『スキルなんでもありが発動しました。

魔力感知、魔力視、魔眼を獲得しました。』


おお、なんかスキルを覚えました。改めてエミュを見ると、確かに魔力の質を感じることができます。エミュの魔力はかすかに赤みを帯びていて、魔力の量も膨大です。それどころか、周囲5キロくらいまでの魔力を感じることができます。おそらく魔力感知の能力でしょう。これは便利です。


 うーん、小説とかでよくあるマップスキルとかはないのでしょうか? そう考えると、すぐさま頭の中に音声がまた響く。


『スキル何でもありが発動しました。マップ、オートマッピングを獲得しました。』


おー、またスキルを覚えました。マップと心の中で呟くと、透明のディスプレイが俺の前に出現する。この辺り一帯の地図を表示してくれています。そこには、魔力感知で入手した情報も表示されているようです。これも便利です。


 ただ、このマップは今まで行ったことのある場所しか表示できない仕様らしいですね。


「あのー、何ひとりでブツブツ言ってるのです?」


 しまった、少しのめりこんでしまったようです。


「ああ、すみません。ここまで案内してくれてありがとう。」

「いいえ、帰り道でしたので。」

「お礼をしたいのですが、何か欲しいものはありますか?」

「いいえ、そんなものいらないですから。」


 打ち出の小槌をイメージすると右手に小槌が出現します。大黒様の三つの神具は出し入れ自由みたいです。


「うわっ、突然何か出てきました。なんですかそれ?」


 俺は、エミュにチップでも渡そうと思い、お金よでろっと打ち出の小槌を振ります。


 左手にコロンと落ちたのは10円玉。失敗しました、異世界で使えるわけがありません。。


「えーー、すごいです!! なんで銅貨が突然現れるんですか!! って、あれ? そんな銅貨見たことがないですね。ゆうじさんの世界のお金なんですか?」

「うう、間違えてしまいました。」


「わぁぁぁ、それほしいです。くれるんですか?」

「うん? これでいいのです?この世界では使えないお金ですよ?」


「はい、それがいいです!! ドラゴン族はどうも金貨などを集める習性がありまして、私もいろいろな国の通貨を集めているのです!!」


 10円くらいで喜ぶのですか。まぁ、エミュがこれがいいというのなら良いですが。10円をエミュに渡します。


「ありがとうございます!!」

「では、今日はありがとうございます。とりあえず宿でも探しますね。また、偶然会ったりしたらよろしくお願いします。」


「あ、はい。宿でしたらここをまっすぐ行ったところに安宿ですけどありますよー。」

「そうですか、ありがとう。それでは」

「はい!!」


 そういって俺たちは別れました。


 しばらく道なりに歩いていくと確かに宿があります。不思議と文字も読めるんですね。この宿の看板には、『安宿』と書いてあります。・・・本当に安宿と言う名前なんですね。。


 宿の中に入ると、受付にひとりの若者が座っていた。


「いらっしゃいませ。宿泊ですか?」

「はい、泊りでお願いします。」


「ありがとうございます。一泊で銀貨4枚、食事付きだと銀貨5枚です。」


 銀貨五枚か。当然持っていないので、俺は打ち出の小槌を受付のテーブルの上で振る。銀貨5枚銀貨5枚・・・・。


 フリフリ。


 ゴットン。


 金の延べ棒がどすんと落ちた。


「・・・」

「・・・」


 店主らしき若者が驚愕な顔をして固まっている。。


「え・・・、えーと、これで泊まれますか?」

「宿ごと買い取るつもりですか?」


 いや、すみません。。




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